プロパスト「プラーサ・ヴェール」の場合
今年に入ってから、ますます売れ行きが悪化していると伝えられる郊外立地のマンション。もはや価格で勝負に出たところでユーザーは振り向いてはくれず、立地の良さに加え、優れた商品企画が求められている。そんななかで、好反響を得ている郊外マンションが、(株)プロパストが今春から販売を開始した「プラーサ・ヴェール」(千葉県四街道市)だ。同社の都会的なデザインセンスと商品づくりは、同業者の間ではすっかりおなじみだが、このマンションでもその力量が如何なく発揮されており、ユーザーの心をがっちり掴んだようだ。
生活機能のすべてを網羅する絶好の立地
同物件は、JR総武本線「四街道」駅徒歩7分に立地する、地上20階建て・総戸数524戸のマンション。施工は、前田建設工業(株)。
建設地は、企業の研究所跡地を中心とした総開発面積約11haの「四街道都市核北土地区画整理事業」の一角。同事業によって整備されるその立地は、抜群の利便性を持つ。
まず、同マンションの西側には、エリア最大の商業施設「イトーヨーカドー」がある。東側はテニスコートや市民プールを備えた「中央公園」、南側は国立の総合病院、北側は再開発によって教育・文化施設が整備され、これらの再開発施設にはペデストリアンデッキと「都市広場」を経て簡単にアクセスできる。また、半径200m以内に、保育園、小学校、図書館、休日診療所、信用金庫、消防署、市役所など、ありとあらゆる生活施設が揃っている。同社が「オールインワンシティ」と呼称するのも、当然だ。
駅から再開発エリアへのアクセスも、駅前の大通りを一直線に進むだけ。途中、山坂道もない。駅前と大通り沿いの商店に賑わいがないのが気になるが、自動車を持たない高齢者や子供たちでも、生活に不便することのない絶好の立地だ。
マンションの長い歴史のなかで、まず「外し」がないのが、商業施設隣接のマンションである。その意味で、この敷地を得た時点で、成功は8割方保証されたも同然である。
公園との融和図ったランドプラン 充実の共用施設
では、商品企画はどうか?
まず、ランドプランがいい。総合設計制度により建物高さを引き上げている分、大規模な公開空地ができた。その空地を、敷地東側の中央公園側に集中。既存樹であるサクラを保存すると同時に植栽を施し、ウッドデッキなども整備した「ステップガーデン」「シーズンアベニュー」とした。これにより、建物東側一帯を中央公園の緑と一体となった開放的な空間として演出している。
また、居住者が使うメイン・サブエントランスは、ともに南側に設置。敷地中央の駐車場への入口は北側とし、さらに再開発施設へはペデストリアンデッキを介する動線とし、歩車分離を実現している。
販売価格を抑えるしわ寄せから、ここにきてマンションの共用施設は貧弱になりつつあるが、同マンションはスケールメリットを生かし、共用施設を充実させている。
スパを備えた、まるで都心の高級ホテルのようなゲストルームが2室に、オープンテラスと一体となったライブラリーカフェ、キッズルーム、フィットネスルーム、キッチンスタジオ、シアタールーム、ミュージックスタジオなど。いずれも、アーバンリゾート風の落ち着いたデザインでまとめられている。
共用施設の運営、コンシェルジュカウンターを通じた居住者向けサービスの提供などは、高級リゾートのオペレーションで実績のある「二期リゾート」に委託。高いホスピタリティを実現するほか、マンション内イベントの開催など、居住者同士のコミュニティ形成についてもサポートを行なっていく。
事前反響だけで150戸を売り切る
建物外観は、日本独自の様式美である「市松模様」をアクセントとしているが、アクセントガラスの色彩を変えている。東側は中央公園との一体性を考えてグリーン、南側は陽光とのコントラストを考えブラウンに、商業施設と隣接する西側はピンクといった具合だ。
住戸は、1LDK~4LDK、専有面積75~110平方メートル。いわゆる「田の字プラン」がベースであり、70平方メートル台の住戸が6mスパンなのが気になるが、二重天井・二重床、天井高2550ミリ、ボイドスラブ280ミリと躯体の仕様は良い。
間取りについては特筆する点は少ないが、98戸用意された「ユニバーサルプラン」がいい。これは、居室やトイレ・浴室の入り口をすべて引き戸にしたプランで、廊下幅もメーターモジュールとなるほか、シューズクローゼットも引き戸になり使い勝手が向上している。高齢者だけでなく、若いファミリー世帯にもお勧めである。
住戸内のカラーコーディネイトは、さすがプロパスト、である。
全住戸で選べる建具類のカラープランは、ウォールナット、グレイ、ブラウン、ベージュの4色。いずれも、木目が映える独特の色合いだ。凄いのが、浴室のユニットバス天板まで、居室のカラーリングに合わせることができる点。また、グローエ社製の水栓・シャワーヘッド、浴室のダウンライト、松下工業との共同開発による洗面デザインボウル、全自動掃除トイレなど、設備仕様は標準以上。居室のダウンライトやスポットライトも標準で付く。
また、オプションとはなるが、キッチンのカップボードや食器洗い洗浄機も、居室と同様のカラー天板でコーディネイトされる。驚いたのが、カップボードとセットとなる冷蔵庫の化粧天板まで同じ木目で揃えられていること。ここまで、コーディネイトにこだわるのが、プロパストである。
プロパストのマンションを見慣れている記者にすれば、これらのこだわりは「当たり前」だが、千葉県の郊外マンションを見に来るユーザーにとっては、かなり衝撃的だったはずである。
「来場者は、(良い意味で)カルチャーショックを受けていたようです。千葉ニュータウンのマンションが、立地・価格的に競合といえば競合しますが、自信はあります」と話すのは、同マンションギャラリーの堀江章太郎氏。無理はない。ウェブを中心とした事前プロモーションだけで700組の反響を集め、会員優先枠150戸を完売してしまったのだから。
販売価格(最多価格帯2,900万円台、坪単価140万円)に値頃感があったのはもちろんだが、競合マンションとは個性のまったく違う商品企画も、おおいに訴求したに違いない。08年供給の郊外マンションでは、ぶっちぎりの「勝ち組」になりそうだ。(J)