記者の目 / 開発・分譲

2011/3/3

マンションの新しい価値づくりへ

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス」が始動

 今年1月2日、三菱地所(株)・三菱地所リアルエステートサービス(株)の住宅分譲事業部門と、藤和不動産(株)が住宅事業を統合。「三菱地所レジデンス(株)」として、新たなスタートを切った。マンション業界トップ10に名を連ねる両社の統合により、「供給戸数業界ナンバー1」のマンションディベロッパーとなった三菱地所レジデンス。多様化するユーザーニーズへの対応、環境問題、省エネ対策、コミュニティ強化など、マンションディベロッパーを取り巻く環境は厳しさを増すばかり。そうした環境下で、同社は、どのようなマンションを供給していくのだろうか?

新ブランド「ザ・パークハウス」ロゴマーク。5本の線はそれぞれ「人」「まち」「環境」「伝統」「未来」を意味し、それらをつなげることで、新たな価値観のマンションを創造することを意味している
新ブランド「ザ・パークハウス」ロゴマーク。5本の線はそれぞれ「人」「まち」「環境」「伝統」「未来」を意味し、それらをつなげることで、新たな価値観のマンションを創造することを意味している
「ザ・パークハウス」のウリの1つ「チェック・アイズ」フロー。三菱地所が築き上げてきた業界屈指のマンション品質管理・性能表示システムで、工事現場見学会の開催を増やすなど、さらにユーザーの信頼に応えていく
「ザ・パークハウス」のウリの1つ「チェック・アイズ」フロー。三菱地所が築き上げてきた業界屈指のマンション品質管理・性能表示システムで、工事現場見学会の開催を増やすなど、さらにユーザーの信頼に応えていく
「ライフ・アイズ」概念図。セキュリティ会社と連携した高度なセキュリティシステムを全物件に導入する
「ライフ・アイズ」概念図。セキュリティ会社と連携した高度なセキュリティシステムを全物件に導入する
エコへの対応も重要テーマ。「ザ・パークハウス」では、太陽光発電と一括高圧受電を組み合わせたエコシステム「soleco(ソレッコ)」の導入など、環境対応仕様を強化していく
エコへの対応も重要テーマ。「ザ・パークハウス」では、太陽光発電と一括高圧受電を組み合わせたエコシステム「soleco(ソレッコ)」の導入など、環境対応仕様を強化していく
「ザ・パークハウス」第1弾物件の1つ、「ザ・パークハウス大崎」完成予想図。「soleco」で各戸の電気代を約10%低減。セコムと共同開発した新マンションセキュリティシステム「ライフ・アイズ」として、全住戸の玄関扉と窓に防犯センサー設置。玄関扉には閉めるとオートロックにより鍵がかかる電気錠を採用している
「ザ・パークハウス」第1弾物件の1つ、「ザ・パークハウス大崎」完成予想図。「soleco」で各戸の電気代を約10%低減。セコムと共同開発した新マンションセキュリティシステム「ライフ・アイズ」として、全住戸の玄関扉と窓に防犯センサー設置。玄関扉には閉めるとオートロックにより鍵がかかる電気錠を採用している
「ザ・パークハウス南千里」完成予想図。24時間対応の総合監視システムを導入し、個々の住戸内までの安全性を監視。犯罪に遭いにくい構造、設備の基準を満たした「大阪府防犯モデルマンション」として登録される予定
「ザ・パークハウス南千里」完成予想図。24時間対応の総合監視システムを導入し、個々の住戸内までの安全性を監視。犯罪に遭いにくい構造、設備の基準を満たした「大阪府防犯モデルマンション」として登録される予定
「ザ・パークハウス光が丘公園」完成予想図。屋上には太陽光発電パネルを設置。敷地内に住民専用のプライベートガーデンを設けるなど「エコロジー&エコノミー」や「コミュニティ」を前面に出している
「ザ・パークハウス光が丘公園」完成予想図。屋上には太陽光発電パネルを設置。敷地内に住民専用のプライベートガーデンを設けるなど「エコロジー&エコノミー」や「コミュニティ」を前面に出している
「ザ・パークハウス光が丘公園」のプライベートガーデン完成予想図
「ザ・パークハウス光が丘公園」のプライベートガーデン完成予想図

「地所」「藤和」のDNAどう受け継ぐ?

 「三菱地所レジデンスがめざすマンションって、どんなマンションなのだろう」。ユーザーはもとより、業界関係者も気になる、素朴な疑問だ。そのヒントを得るためには、三菱地所と藤和不動産がこれまで手がけてきたマンションづくりを、振り返っていく必要がある。

 「三菱地所のマンション」と言えば、真っ先に思い浮かぶのは「都心」「高額」というキーワードだ。同社は、都心3区を中心とした超高級マンションの供給で、圧倒的なブランドイメージを築いてきた。また近年では、一大マンショントレンド地となった湾岸エリアや大規模再開発も得意分野としてきた。それらマンションのウリは「品質」。国の「住宅性能評価を上回る数の検査項目を行い、ユーザーに情報開示する「チェックアイズ」と呼ばれる独自のマンション性能表示制度を、いち早く導入。ユーザーの信頼に応えてきた。

 一方、「藤和不動産のマンション」のイメージは、「良品廉価」である。特別豪華でも、不必要に広くもないが、一般サラリーマンファミリーが望む広さと、時代が求める構造・設備を兼ね備えたマンションを、全国各地、それぞれの地域に見合った適正価格で販売する。いわば、マンションディベロッパーの「王道」を50年余にわたり突き進んできた。もう一つあげるとすれば「製販一体」。商品企画から販売、アフターに至るまで自社一貫で手掛けるから、ユーザーニーズがいち早く次期商品にフィードバックされるし、クレーム対応なども迅速だ。

 この、それぞれ個性のある「両親」のDNAを受け継いでいくのが、新マンションブランド「ザ・パークハウス」だ。

伝統と新しい価値観とを融合

 まず、そのブランドイメージを検証していくことにしよう。

 「ザ・パークハウス」のブランドスローガンは、「つながる想いの、まんなかに。」だ。「新ブランド構築にあたり、これからのマンションづくりの重要なキーワードとしてあげたのが、『人(家族)』、『まち(地域)』、『環境』、『未来』、『伝統(歴史)』です。こうした次代が求める価値をつなぎ合わせることで、マンションの新しい価値づくりの中心を目指すのが、ザ・パークハウスです。」――新ブランド構築を手掛けてきた、三菱地所レジデンスブランド・CS推進部ブランド推進グループ グループ長の小林京太氏は語る。

 このスローガンから、三菱地所や藤和不動産が培ってきたマンションづくりの「伝統」に、「未来」のマンションが求める「コミュニティ」や「環境」という新たな価値観を「つなげていく」という狙いが見えてくる。

 主力とするのは、販売価格が3,000万円台から6,000万円台という、競合ひしめくマンション市場の「ど真ん中」にカテゴライズされるファミリーマンション。もちろん、供給戸数ナンバー1のディベロッパーだから、超高額物件やDINKS向けコンパクト物件など幅広いバリエーションを手掛けていくが、それらは「ザ・パークハウス グラン」「ザ・パークハウス アーバンス」というサブブランドとして差別化。残り9割弱は「ザ・パークハウス」として、ブランドイメージを統一していくという。

環境やコミュニティなど5つのポイントで差別化

 では、もう少し、具体的な商品イメージを教えてもらおう。

 「ユーザーは、三菱地所と藤和不動産のマンションの、いったいどこを評価してくれていたのだろうか?。それを探るため、全国のマンションユーザー約3,000名にアンケート調査を実施しました。その結果を受け、構造躯体の基本性能など本質的な部分に加え、設備機器や仕様、ソフトサービスなど、マンションライフを構成するすべてのスペックについて、ユーザーニーズに基づいた棚卸しを実施。『ザ・パークハウス』に必要な要素を抽出しました」(小林氏)

 そして、「ザ・パークハウス」の商品戦略上、外すことのできない5つの要素を抽出した。同社では、それらを「5つのアイズ」と呼称する。

 まず、「チェックアイズ」。言うまでもなく、三菱地所が築き上げてきた、マンション品質管理・性能表示システムだ。「ザ・パークハウスでは、従来から取り組んでいる性能表示・情報開示・品質管理に加え、工事途中段階で施工状況をご見学いただく機会を、できるだけ多くの物件でご提供していこうと考えています」(同氏)

 次が「エコアイズ」。太陽光発電と一括高圧受電を組み合わせたエコシステム「soleco(ソレッコ)」に代表される、環境対応仕様の強化である。エコロジーであることは、また「エコノミー」でもあり、マンションユーザーの評価も高い。

 そして「コミュニティアイズ」。「マンションは管理を買え」とまで言われる現代。マンション内のコミュニティ、あるいは地域社会とのコミュニティ形成は、欠くことのできない要素となった。「これまで我々は、マンションのモノづくりには積極的でしたが、管理組合や専有部へのサービスなどには、あまり関与してきませんでした。今後は、物件引き渡し後も、管理組合に対してさまざまなコミュニティ支援サービスを提案していきます」(同氏)

 モノ作りにおいては、人気の高い設備機器やプランセレクトのバリエーションを増やし、ユーザーニーズに応じて柔軟に提供していく「カスタムアイズ」を展開。また、ユーザーの安心を守るため、24時間365日対応の独自のセキュリティシステムである「ライフアイズ」も、首都圏全物件で標準化していくという。

 現在、同社は、「ザ・パークハウス」第1弾物件として、三大都市圏中心に18物件を販売している。そのなかでも、新ブランドの考えをよく象徴している「ザ・パークハウス光が丘公園」(東京都練馬区、総戸数69戸)を紹介したい。

 同物件は、東京メトロ有楽町線「地下鉄赤塚」駅徒歩12分に立地する、地上5階建ての低層マンション。光が丘公園にほど近い、第1種低層住居専用地域という立地をいかすため、敷地内に住民専用のプライベートガーデンを設けるなど豊かな植栽を施したほか、1階住戸すべてに専用庭を確保。また、屋上には太陽光発電パネルを設置するなど、新ブランドが重視する「エコロジー&エコノミー」や「コミュニティ」を前面に出した物件だ。

◆   ◆   ◆

 マンション供給戸数でナンバー1になった同社は、否が応にも業界内外からの注目を浴びている。もちろん、供給戸数とユーザー評価は、100%シンクロするわけではない。だが、数多くのマンションを供給するということは、それだけ多くのユーザーの声に接するということ。そうした声に真摯に応えていけば、どこよりも的確に、ユーザーニーズが反映されたマンションをつくり出すことができるはずだ。

 「ザ・パークハウス」の進化を、楽しみに見守っていきたいと思う。(J)

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