記者の目

2012/11/2

「ひかり」と「かぜ」に触れ、自然を楽しむ家

旭化成ホームズ、生活の知恵で健やかに過ごせる住宅を提案

 東日本大震災後、厳しい電力不足に直面し、われわれは改めて電気のありがたみを実感した。機械やエネルギーに頼りっぱなしだった生活を見直し、夏は暑く、冬は寒いのが当たり前だということに改めて気付いた人も少なくないだろう。  そうした暑さ、寒さ、四季の移ろいなどの自然のリズムに合わせ、その時々の気温の変化に素直に呼応することが「本当の心地よさ」だと考え、旭化成ホームズ(株)くらしノベーション研究所が「しぜんごこちの家」を提案。そこにある、自然と親しむ「しぜんごこち」の仕掛けとは? 20日に公開されたモデルハウスを見学してきた。

「しぜんごこちの家」を体感できるモデルハウス「街かどヘーベルハウス上大岡ガーデン」外観
「しぜんごこちの家」を体感できるモデルハウス「街かどヘーベルハウス上大岡ガーデン」外観
まち全体で設けた緑地協定により、周囲には緑が豊富。美しい緑の景観を一体となって管理するなど、まちの価値・向上を図っている
まち全体で設けた緑地協定により、周囲には緑が豊富。美しい緑の景観を一体となって管理するなど、まちの価値・向上を図っている
家の中で最も「ひかり」や「かぜ」に触れられる窓辺の居場所「窓の場ベンチ」
家の中で最も「ひかり」や「かぜ」に触れられる窓辺の居場所「窓の場ベンチ」
キッチンとつながる4.5畳の「床上げ畳室」。床下は収納スペースとなっており、普段使わないモノや季節のアイテムをしまえる場所として活用できる
キッチンとつながる4.5畳の「床上げ畳室」。床下は収納スペースとなっており、普段使わないモノや季節のアイテムをしまえる場所として活用できる
キッチンの間仕切りキャビネットの裏にある「床下げスタディコーナー」。床下げ効果で周囲から見えにくく、1人の時間を楽しめる
キッチンの間仕切りキャビネットの裏にある「床下げスタディコーナー」。床下げ効果で周囲から見えにくく、1人の時間を楽しめる
1階と2階をつなぐ「リビング階段」は、向こうが透けて見える素材を使用することで開放感をアップ
1階と2階をつなぐ「リビング階段」は、向こうが透けて見える素材を使用することで開放感をアップ
階段の2段目の高さが床になった、1~2階の継ぎ目空間「ジョイントフロア」。LDKに面したベンチにように使用できる
階段の2段目の高さが床になった、1~2階の継ぎ目空間「ジョイントフロア」。LDKに面したベンチにように使用できる
「かぜ」を取り入れる設計。出口を確保することで、入口から出口までの大きな風の流れをつくり出す
「かぜ」を取り入れる設計。出口を確保することで、入口から出口までの大きな風の流れをつくり出す

「ひかり」が集まる場所に居場所をつくる

 同モデルハウスは、横浜に程近い「上大岡」に位置。旭化成不動産レジデンス(株)が推進するマンションと戸建ての一体開発プロジェクト「アトラス上大岡」(横浜市南区)の戸建街区「アトラス上大岡ガーデン」(全33区画)に建設されている。

 同社が取り組んでいるモデルハウス形態の一つ「街かどヘーベルハウス」として公開。街区内の周辺環境に即して設計されているため、来場者は実際にまちに住んでいる感覚で「しぜんごこちの家」の心地よさを体感できるのが特長だ。
 ちなみに、これまでに「しぜんごこちの家」として建設された街かどヘーベルハウスは名古屋市の「街かどヘーベルハウス広路本町」(2011年4月完成)のみ。首都圏では初の事例となる。

 「しぜんごこちの家」のコンセプトは、「都市にある自然を上手に取り入れることで、心地よい暮らしを生み出していく家」。「ひかり」や「かぜ」などの自然を取り入れるため、従来の家のつくり方とは異なる発想の転換で、住まい手が積極的に自然と関わることができる仕掛けを随所に施している。

 まずは、太陽の「ひかり」。人間には、もともと「体内時計」をもとに、からだの機能を維持する「生体リズム」が備わっているというが、その体内時計は、太陽の光を受けてリセットされるらしい。つまり、太陽光のリズムに合わせて暮らすことが、心地よく暮らす基本というわけだ。

 「しぜんごこちの家」では、窓前の陽が入り続けるところに人の居場所を設けている。例えば、1階の南側の窓に沿って設えられたワイドなベンチ。陽あたりのいい場所を追い掛けながら、座ったり寝転んだり、自由にくつろげるスペースだ。
 また、「奥の間」には大きな窓があり、玄関側の直射日光とは違う「反射光」や「拡散光」といったやわらかな陽ざしを楽しむことができる。4.5畳の床上げ畳室では、陽を浴びながら読書をするもよし、家族で食事したりゲームをしたりする憩いの場として利用するもよし。さらに、畳を取り外すと大容量の収納スペースとなっており、普段は使わないモノや季節のアイテムなどを整理しておく場所としても活用できる。

 このように、窓辺のベンチや床上げ畳室などの段差を多く設けることで、自然に合わせて心地よい居場所に移動する「移ろ居」を行ないやすくしているのも、「しぜんごこちの家」の大きな特長だ。
 「1日の中で刻々と変化する陽の動きに合わせて、住まい手が“明るい陽”、“やわらかい陽”、ときには“薄暗い陽”を求めてアクティブに移動する。そうした多彩な環境から、住まい手が“心地よい”と感じる居場所を見つけることで生活は活性化し、より豊かな暮らしにつながると考えます」と、同研究所主幹研究員の村松 浩氏は話す。

都市の「かぜ」を上手に利用する

 「ひかり」と同様、「かぜ」も重要なアイテムの一つ。住宅が密集し、風が通り抜けにくい都市では、風を家に引き込むことは難しい。しかし、上空には風が吹いている。また、街路に沿っても風は流れるもの。つまり、そうした風をうまくつかまえれば、家の中の風通しがよくなるのだ。

 一般的な家では、住宅の裏側にキッチンや水回りを配置することが多く、窓の確保がなかなかできない。が、「しぜんごこちの家」は家の北側に「奥の間」という共有空間をつくり、大きな窓を設けることを可能とした。風の出口をしっかりと確保することで、入口から出口までの大きな風の流れをつくり出し、都市の家でも心地よい風が楽しめる。
 また、2階には南北にわたる「風の廊下」を設置。風の廊下が風が吹き抜け階段を通して1階の風を引っ張り上げ、家全体に風の流れをつくり出す。

 確かに、見学中は家の中のどこにいても、常に爽やかな風が吹いていた。「かぜ」の通り道を確保するだけで、こんなにも違うものかと感心。これなら、自然のリズムによって生まれる変化を楽しみながら、無理なく省エネが実現できるかもしれない。

ほどよい距離間で家族をつなぐ

 心地よい家には、家族が集まるスペースだけでなく、直接姿は見えなくてもお互いの気配を感じながら、ほどよい距離間で過ごせる「1人の居場所」「隠れる場」も必要だ。
 その場所が、キッチンの間仕切りキャビネットの裏にある「床下げスタディコーナー」。家族との時間も楽しいけれど、ときには趣味に没頭したい…。そんなときは、奥の小部屋に直行。家族が近くにいる安心感を感じながら、1人の時間を存分に楽しめる。

 また、広いリビングには自然と家族が集まる。中央に設けた「リビング階段」は、上階にリビングの雰囲気を伝え、2階の家族もリビングに導く効果がありそうだった。

 それにしても、段差の多い家だった。段差を気にせず、それをうまく利用してコミュニケーションを取り合える、若いファミリー層に向けた商品と言えるかもしれない。窓の場ベンチ、床上げ畳室、そして、階段の2段目の高さが床になった1~2階の継ぎ目空間「ジョイントフロア」などなど、至るところに段差がある。また、階段の下をこのような空間として利用しているのには驚いた。不思議なことに、段差があると、ただの通過地点だった場所が一瞬にして居場所へと変化する。

 自然と親しむことに加え、家族とのつながりをつくる仕掛けも満載だった「しぜんごこちの家」。ここに住めば、「本当の心地よさ」「健やかさ」を実感できる毎日が過ごせそうだ。
 ちなみに、同モデルハウスは、旭化成ホームズ(株)がへーベルハウスの新築請負受注活動に使用した後、7,000万円台の半ばで販売される予定という。(I)

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【関連ニュース】
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