記者の目 / 開発・分譲

2013/6/21

1棟リノベーションだからできたこと…

大京が1棟リノベーション初物件「グランディーノ稲毛海岸」販売

 今やすっかり市民権を得たと言える「リノベーションマンション」。改修やリフォームにより、新築物件と遜色ないほどに生まれ変わった物件が、新築よりも安く手に入ることなどから、一次取得者層を中心に高く支持されている。  このマンションリノベーション事業。以前は区分所有建物を1戸単位で事業者が取得し、リノベーションを実施し再販するというケースがほとんどであったが、最近では社宅として使用されていた集合住宅を1棟丸ごと取得し、外装も含めて全面的にリノベーションを実施し、その上で分譲するというケースが見られるようになってきた。  このほどマンション事業大手の(株)大京が、この1棟丸ごとリノベーション事業をスタート。事業ブランドを「グランディーノ」として立ち上げ、第1号物件「グランディーノ稲毛海岸」(千葉市美浜区、総戸数23戸)のモデルルームをオープンした。  1棟リノベーションのメリットについて触れつつ、生まれ変わった同物件についても紹介していこう。

6月24日より販売が開始される「グランディーノ稲毛海岸」外観
6月24日より販売が開始される「グランディーノ稲毛海岸」外観
独立したエントランスを新設。管理人室を設置したほか、オートロック、防犯カメラ、宅配ボックスなども導入した
独立したエントランスを新設。管理人室を設置したほか、オートロック、防犯カメラ、宅配ボックスなども導入した
住棟までの通路は植栽豊かなフットパスに
住棟までの通路は植栽豊かなフットパスに
敷地南側に設置されていた駐車場(12台分)には、インターロッキング(保水タイル)を敷設。夏の暑さを軽減させる打ち水効果がある
敷地南側に設置されていた駐車場(12台分)には、インターロッキング(保水タイル)を敷設。夏の暑さを軽減させる打ち水効果がある
パイプスペースは新たに塗装を実施。その際階段ごとにテーマカラーを決めて塗り分けた
パイプスペースは新たに塗装を実施。その際階段ごとにテーマカラーを決めて塗り分けた
2階の部屋から南側の眺望。道路までの距離が広く取られていることから、他からの視線をあまり気にする必要がなさそうだ
2階の部屋から南側の眺望。道路までの距離が広く取られていることから、他からの視線をあまり気にする必要がなさそうだ
水道設備も刷新。スペースの有効活用や管理の簡易さなどから、直結水道に変更した。このような変更は、まさに一棟リノベーションならでは
水道設備も刷新。スペースの有効活用や管理の簡易さなどから、直結水道に変更した。このような変更は、まさに一棟リノベーションならでは
階段入口
階段入口
モデルルーム。全面的に刷新され、まるで新築のよう
モデルルーム。全面的に刷新され、まるで新築のよう
水回りも全面的に刷新
水回りも全面的に刷新

消費者からの要望の中には、1戸リノベでは対応できないものも

 「当社で展開してきた1戸単位のリノベーション事業“リノアルファ”もご好評をいただいているのですが、それでは対応できないニーズが顧客の声として寄せられるようになったのです。そうしたニーズに対応すべく、1棟リノベーションをスタートさせた」と語るのは、リノベーション事業部長の中島真司氏だ。
 1戸単位のリノベーションでも、専有部分は目を見張るような再生ができる。しかし消費者はもはやそれでは満足できなくなっている…というのがその理由だ。リノアルファの顧客からは「外観もきれいにして欲しい」、「エントランスの質を高めて欲しい」、「目に見えない共用部の劣化が不安だ」…などの声が寄せられているという。しかしそれらは共用部分の変更に当たり、管理組合の総会決議が必要だ。そのハードルは非常に高く、事業者にはどうすることもできない。

 そこで同社は、1棟物件を仕入れ、専有部のみならず、共用部までも刷新し、さらに管理等のソフト面も提供することで、マンション全体の価値を向上させて販売する事業に踏み切った。
 その第1号物件が「グランディーノ稲毛海岸」だ。

仕入れでは、リノベで変えられない部分を重視

 同物件はJR京葉線「稲毛海岸」駅徒歩5分に立地。もとは損害保険会社の社宅であった築29年の建物だ。鉄筋コンクリート造地上4階建て、専有面積は全戸79.37平方メートル。

 仕入れに当たっては、立地、信頼できる設計施工であること、ゆとりのある専有面積など、“リノベーションで克服できない点”を重視して実施している。その点、同物件は大手設計事務所・大手ゼネコンによる設計・施工であり、また大手企業の資産として大切に管理されてきたこと、第三者機関の建物診断および同社グループの建物検査をクリアしたことなどから、仕入れに至ったという。

 また「新築物件ではもはやありえない」(同氏)というゆとりの配棟も、取得決定の大きな要因だったそう。1,600平方メートルの敷地に建つのは、わずか1棟。総戸数は23戸、1戸あたりの土地面積は約70平方メートルにも及ぶ。しかも空地率は約62%、建物から隣地までの距離は約26.5mも確保されている。
 さらに南側の接道面には平置きの駐車場が配置されており、駐車場に面する1階住戸のベランダでも、外からの視線を気にする必要がない。このプランニングは、「新築物件では絶対に無理」(同氏)ということで、リノベーション物件にもかかわらず大きなアドバンテージに繋がると判断し、取得に至ったという。

エントランスを設置し、インフラ部分も刷新

 この物件を、“大京”がどう“料理”したのか、紹介しよう。

 同社では、快適性を高めて、そして安心度を上げることに重点を置き、リノベーションを実施。
 「柵に設けられた出入口のようであった」入口には、独立したエントランスを設置。オートロックを導入し、防犯カメラや管理人室、宅配ロッカーなども備え付けた。
 エントランスから住棟に続く通路はなだらかな曲線のフットパスとして、サイドには豊かな植栽を施した。また2戸1方式で設けられている階段近くにはベンチを設け、コミュニティ創出の一助となるようにプランニングした。

 専有部は、キッチン、建具、トイレ、ユニットバス、洗面など、ほとんどの設備を新品に交換し、畳、襖、壁、天井、クロスも刷新。さらに1棟リノベーションならではともいえる、専有部ガス管、排水立て管、横引き配水管、給水立て管など、1戸リノベーションでは難しいインフラ部分についても交換を実施した。

 1棟取得したからこそできる共用部刷新も含めたリノベーション。“既存物件にもかかわらず、購入者が安心して入居できる”商品に仕上がった。

 棟内モデルルームを見学したが、天井高などは新築物件に比べると低く、梁などの出っ張りも正直気になる。エレベーターがないという点もデメリットではある。しかし、駅徒歩5分、駐車場は平置き、敷地のゆとりといったさまざまな条件を考え合わせると、やはりお買い得感が高い。

 価格は2,720万~3,090万円。これは近隣の築10年超の中古物件の価格帯とのこと。なお、エレベーターがない点や1階住戸にウッドデッキ調の拡張ベランダを設置したことなどから、価格は下層の方が高い設定となっているという。

 現在棟内モデルルームがオープン中で、6月24日より先着順で申し込みを受け付ける。反響については「予約制でモデルルームを案内していますが、週末は毎回満席となっています。来場者からは立地の良さや敷地のゆとりなどについて高い評価をいただいております。また近所からいらした方からは、『リノベーションってこんなにきれいになるのか!』との驚きの声を聞くことも多い」(同社販売担当者)とのこと。

 同社では、この1棟リノベーション事業を、年4~5棟実施していく計画だという。(NO)

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【関連ニュース】
1棟まるごとリノベーション事業、第1弾「稲毛海岸」6月販売(2013/5/30)

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