記者の目 / 開発・分譲

2013/12/20

キーワードは「多世代交流」「元気に入居」「所有権」

フージャースコーポレーションが高齢者向け物件第1弾を開発

 つくばエクスプレスが開業して8年余り、沿線では現在も住宅等の開発が活発に進められている。終点の「つくば」駅から4駅目にある「みらい平」駅前エリア(茨城県つくばみらい市)でも現在、(株)フージャースコーポレーションが、6,000坪にわたる大規模開発を進めている。「みらいウォルズ」と名付けられたまちに、3棟のマンションを供給する計画で、うち1棟は、中高齢者向けのマンション「デュオセーヌ つくばみらい」(総戸数150戸、以下、「デュオセーヌ」)とする。同社が投資・開発する高齢者向け物件の第1弾(ダイヤモンド地所(株)との共同事業)となるこの物件は、最近では珍しく分譲方式での販売となるという。どのような物件か、紹介しよう。

「みらいウォルズ」完成予想ジオラマ。写真右が「デュオセーヌ」。コミュニティ形成の場となるよう、中庭も併設する計画
「みらいウォルズ」完成予想ジオラマ。写真右が「デュオセーヌ」。コミュニティ形成の場となるよう、中庭も併設する計画
玄関には腰掛けスペースと手摺りを設置。玄関を含めて、住戸内はバリアフリー化
玄関には腰掛けスペースと手摺りを設置。玄関を含めて、住戸内はバリアフリー化
浴室。出入口はワイドタイプで、引き戸を採用。浴槽脇には手すりも用意
浴室。出入口はワイドタイプで、引き戸を採用。浴槽脇には手すりも用意
トイレには手摺りと人感センサー、緊急コールボタンが設置され、万が一の際には、常駐スタッフが駆け付ける
トイレには手摺りと人感センサー、緊急コールボタンが設置され、万が一の際には、常駐スタッフが駆け付ける
キッチンからリビングをのぞむ。シニア向けということで、IHクッキングヒーターを導入している
キッチンからリビングをのぞむ。シニア向けということで、IHクッキングヒーターを導入している
リビングから隣接する洋室を臨む。シニア向け住宅というと連想する窮屈さは感じられない
リビングから隣接する洋室を臨む。シニア向け住宅というと連想する窮屈さは感じられない
ダイニングはレストランとして外部にも開放される。希望する入居者は、カロリーや塩分計算などがなされた食事を3食ここでとることができる(写真は外観完成予想パース)
ダイニングはレストランとして外部にも開放される。希望する入居者は、カロリーや塩分計算などがなされた食事を3食ここでとることができる(写真は外観完成予想パース)

多世代交流促進へ、ファミリーマンションに囲まれるように設計

 「デュオセーヌ」は、ファミリーマンション「デュオTXみらい」(総戸数106戸、完売済)、「デュオTXみらいヒルズ」(132戸、販売中)と合わせて開発が進められている物件だ。
 ソリューション事業部シニア事業課課長の佐藤多聞氏は、「当社初となる高齢者向け物件の開発にあたり、社内からは『まちづくりの中で供給したい』という意見が出ました。そこで、開業以来最大規模の自社開発物件となる、つくばみらいの開発の中で取り組むことにしたのです」と語る。

 ファミリーマンションと共に開発すれば、多世代交流が可能となり、それによりまちが活性化する。それが狙いだ。そこで、多世代交流がより促進されるよう、ファミリーマンション2棟が「デュオセーヌ」を囲むように配棟し、中庭も開設する計画を採用。この中庭を中心に、3棟の入居者が集い、コミュニティが形成されていくことが期待されている。

 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造、地上9階建て、総戸数は150戸。高齢者向け物件でありながら、専有面積は標準で60平方メートルというゆとりのスペース。そこにも、同社のこだわりが。

 「高齢者向けの住宅・施設というと、高齢者の健康状態が悪化してから、高齢者の身内の判断により入居してくるケースが多い。しかしわれわれは、元気なうちにこの住まいに移っていただき、ここでの生活をエンジョイしていただくと同時に、充実した生活環境により居住者が要介護期に入るのを少しでも遅らせていきたいと考えている。元気な人にとっては、高齢者向けの住まいとして多く供給されている20平方メートル台の面積では狭く、移り住むことを躊躇させる。そこで、60平方メートルという面積を確保したのです」(同氏)。
 なお、「デュオセーヌ」の入居条件は、満50歳以上。シニアをターゲットとした住宅にしては低い年齢の設定となっており、取材当日も、「シニア向け物件入居はまだ早いのではないか?」と思われる50歳前後の人が、複数見学に訪れていた。


一見“普通のマンション”も、高齢者の生活に配慮したつくり

 物件の主要ターゲットが“元気な中高齢者”であるため、見学したモデルルームも一見通常のファミリーマンションとほとんど変わりがないように見える。
 しかしシニア向けの物件であるために、よく見ると高齢者が生活するための工夫がそこかしこに落とし込まれているのが分かる。

 玄関や水回りも含めて住戸内はバリアフリー化。玄関には手すりと腰掛けが設置されており、靴の着脱にも負担がかからない仕様となっている。ドアは全て引き戸。トイレにはライフセンサー(人感センサー)が設置され、一定時間利用がないと管理運営室に通報される仕組みに。その他緊急通報コールボタンの設置やIHクッキングヒーターの採用など、高齢期の暮らしに対応できる工夫が多数取り入れられている。

 共用施設も充実。3食の食事を提供するダイニング、麻雀や囲碁、将棋などが楽しめる娯楽室、歓談などに利用できるカフェコーナーなどを用意。なお、ダイニングはレストランとして、外部にも開放する。
 温泉を掘削し、天然温泉大浴場を設置するのも、こだわりの一つ。「マンションは、所有者が集まることで一戸建てでは実現できないサービスや施設を導入できるのもメリット。温泉も、そうした施設の一つと捉えています」(同氏)。

 ソフト面では、コンシェルジュが常駐し、24時間体制で入居者の暮らしをサポートするほか、マンション内に看護・介護ステーションを開設。適切なサービス提供を実現する。

 
資産として保有。シニア向けニーズに対応

 同社は今回、同物件を分譲物件として販売する。「高齢者向けの物件というと、利用権方式や賃貸方式が多いが、資産として保有できる物件のニーズが一定数存在していることを、これまでの経験から知り得ている。そこで、今回は分譲物件として販売することにしました」(同氏)。販売の際も、相続や売却が可能、賃貸に出して収入を得てもOKとアピールしており、その点を評価する検討者も多いという。

 ゆくゆくは「みらいウォルズ」の中で物件流通が図られ、「デュオセーヌ」に入居した親世代の入居者が子供たちを「デュオTXみらい」「デュオTXみらいヒルズ」に呼び寄せる、あるいはファミリー世帯が、年齢を重ねて「デュオセーヌ」に移り住む、といった、まちの中での流通が進むことを、同社は期待しているという。

 第1期販売では専有面積55.75~73.20平方メートル、間取りは1LDK・2LDK、予定販売価格は2,500万~4,100万円台。
 なお、管理費は4万~5万2,000円(入居者1人プラスにつき2万3,000円を加算)。食費は1日3食30日提供された場合で4万9,200円。修繕積立金(約1万円前後)を含めても、厚生年金の受給者ならおおむね年金額の中でまかなえる設定となっている。

 11月より販売を開始しており、年内には30件弱の契約を目指して進捗しているという。「高齢者向け物件は出足が遅いという特徴があり、年内は契約の申し込みを得るのは難しいかも、と思っていましたので、想像を上回る順調な滑り出しです」(同氏)。

 竣工は2014年12月の予定。 

***
【関連ニュース】
つくばみらい市の大規模開発、名称を「みらいウォルズ」に/フージャースコーポレーション(2013/11/18)

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