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長期優良住宅制度、10年目の見直しへ

 国土交通省は30日、「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」(座長:松村秀一東京大学大学院工学系研究科特任教授)の初会合を開いた。

 長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づき、2009年6月にスタートした同制度が間もなく10年を迎えることから、これまでの運用実績に対する評価や課題を整理し、制度のさらなる普及促進を図るための取り組みの方向性を検討するのが狙い。学識経験者を中心にした委員11名と住宅・不動産業界団体など8団体がオブザーバーとして出席する。

 制度開始から18年3月までの長期優良住宅認定実績は、新築が91万5,194戸(一戸建て89万4,943戸、共同住宅2万251戸)、16年4月開始の増改築は423戸(一戸建て395戸、共同住宅28戸)。新築は住宅着工全体の11.3%(一戸建ては24.6%、共同住宅は0.3%)を占めた。

 会合では、消費者、ハウスメーカー、工務店、ディベロッパー等を対象に同制度の評価等を尋ねたアンケート結果が発表された。消費者アンケートでは、認定の有無による満足度の差が、戸建住宅と比べ共同住宅は小さいこと、長期優良住宅にした理由では「売却時に有利」との回答が戸建住宅は低いことなどが挙げられた。事業者アンケートでは、認定基準の緩和について、マンション供給者は「耐震性」や「劣化対策」「維持管理・更新の容易性」、ハウスメーカーは「劣化対策」「維持管理・更新の容易性」を上げる比率が高かった。また、住戸面積についてはハウスメーカーとマンション供給者の8割以上が緩和を要望。「省エネルギー性」については、工務店の2割が「強化」を望んでいた。

 アンケート結果等を踏まえ、今後は制度活用比率の低い共同住宅や増改築で活用が進むような認定基準の合理化、税制や融資などによる制度普及促進のためのインセンティブ見直し、事務手続きや申請手続きの合理化、インスペクションを活用した適切な維持管理の促進などをテーマに議論を進めていく。

 委員からは「長期優良住宅を維持管理するためのコストを消費者にどう理解させるか、ランニングコストをガイドラインのようなもので示すべき」「現行制度は作ること中心で、維持管理や流通の考えが弱い」「戸建住宅購入者は売却時の事を評価していない。また、共同住宅はそもそも維持管理がしっかりし流通もしているから長期優良住宅である必要がないと思われており、ここに力を注ぐのはナンセンス」「長期優良住宅の資産を維持し、いかに流通させるかを考えないといけない。そうした住宅の取得に対しインセンティブが必要」などの意見が寄せられた。

 今回を含め、19年6月までに7回の会合を開き、制度見直しに向けたとりまとめを行なう。


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