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新しい働き方に対応するビル経営の姿を展望

 (一財)日本ビルヂング経営センターは1月29日、第22回新春特別ビル経営セミナー「ポストコロナに真価が問われるビル経営~コロナ禍を超えて変革の機会に転じる~」をライブ配信でオンライン開催した。

 コロナ禍でテレワークが急速に広まり、オフィス不要論が叫ばれる一方で、オフィスでなければできないことや、その存在意義が再認識されている。そこで今回のセミナーでは、国内外の先駆的なスマートシティやスマートビルの事例を交えながら、ポストコロナ時代のビルのあり方について講演。新しい働き方に対応するビル経営の姿を展望した。

 (株)ザイマックス不動産総合研究所代表取締役社長の中山善夫氏が、「ポストコロナの『働き方×オフィス』を考える~コロナ禍収束後のオフィスのあり方~」と題して講演。ウィズコロナで、テレワークによるオフィス面積縮小、ソーシャルディスタンス確保のための拡張など、企業がオフィス面積を見直す動きが出てきていると指摘。首都圏企業では縮小傾向が強まっており、空室率も上昇の兆しが表れている。
 在宅ワーク増加で見えてきた課題として、「ツール・環境整備の不足」「業務内容の不公平感」「コミュニケーションの不足」「マネジメントの不安」を挙げ、ポストコロナのオフィス需要のポイントは、「集約にこだわらない分散型」「都心に全員分のスペースを必要としない」「賃貸借契約にこだわらないフレキシブルな利用形態」とした。企業のオフィス戦略の方向性については、メインオフィス(集約)とテレワーク(分散)を使い分ける「ハイブリッド戦略」がより主流となっていくと予測した。

 また、「ポストコロナにおけるビルの方向性」をテーマに、(株)野村総合研究所グローバルインフラコンサルティング部グループマネージャーの又木毅正氏およびコンサルタントの御前汐莉氏が講演。今後ビルに求められる役割は、ビル内部と外部の街区における役割の変化の2つの側面に分けて考えられるとし、内部では、「Small(集約型から分散型に)」「Smart(ビル機能に合わせた生活・働き方からビルが機能を合わせる方向に)」「Safety(感染症等の事後対応から予防保全に)」の3S化が加速し、外部ではスマートシティ化の潮流に伴い、まちの高度化に寄与する機能の一部として役割を果たすことが求められていくなどと解説した。
 ビル管理会社の役割は、テナントの生産性・快適性の向上ニーズが高まり、そうした付加価値領域の取り組みに踏み込むことが期待されること、スマートシティ化の進展に伴い、ビル単体ではなく街区全体で連携して取り組む座組が必要となること、管理・運営業務のICT化を見据えてビル設計に織り込むことなどが期待されると指摘した。

 その他、リプトン・ロジャース・ディベロップメンツ ファウンディング・パートナーのスチュアート・リプトン氏などがロンドンの「シティ」中心部の再高層ビルでの取り組みについて、東急不動産(株)都市事業本部スマートシティ推進室長の田中敦典氏が竹芝でのスマートシティ構想について講演した。


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