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ハイグレードなオフィスへ拠点集約進み、空室率二極化

 JLLは17日、オンラインセミナー「不動産のプロが解説 2022年の不動産マーケット動向を読み解く」を開催。同社リサーチ事業部の谷口 学氏が、オフィスと物流施設を中心にマーケットを分析した。

 日本の経済状況について、GDPをもとに説明。20年第2四半期に初めて発令されて以降、こうした措置がとられるごとに実質GDP成長率は一時的な低下を繰り返しているものの、年間での成長率は20年のマイナス4.5%から21年はプラス1.7%に回復。22年はプラス2.8%へとさらに回復する見込みを示した。

 アセットごとの賃料の傾向については、21年第4四半期時点で、東京のオフィスは下落加速、リテールは下落減速、物流施設は上昇減速のフェーズにあると分析した。

 オフィスについては、東京Aグレードオフィスの需給の推移を分析。21年は需要が供給を下回り空室率は3.5%に悪化。しかし、Aグレードオフィスに分類される203棟中103棟は満室稼働であり、特に空室の多い15棟が全空室の50%を占めている。「コロナ禍当初の想定より、企業のオフィス離れは限定的。ただし、拠点統合の動きは盛んで、競争力の低いビルから高いビルに集約される傾向があるため、一部のビルで大規模な空室がみられている。同じく空室率が上昇したリーマンショックの際はビル間の差はなくまんべんなく空室率が発生していたが、今回はオフィスの選別が進んでいる状況だ」(谷口氏)。
 月額賃料坪単価は20年から21年にかけて7%下落。21年は3万6,274円となった。21年から22年にかけては2.1%下落と、下落傾向が続くものの下落幅が小さくなる見通しを示した。

 東京圏の物流施設については、21年は空室率が1.8%に上昇したものの低水準であり、今後も大規模な新規供給を控えているが需要は堅調で空室率は大きく上昇しないとした。賃料は世界的に上昇傾向にある。月額賃料坪単価は20年から21年にかけて1.6%上昇し、21年は4,419円となった。21年から22年にかけては上昇傾向が強まり、3%の上昇を見込む。

 マーケットがこのような状況にある中、不動産への投資は今後も拡大していくと予測。特に海外投資家による投資額は、19年の1兆円から20年には1兆5,000円に上昇、21年も1兆円を超えており、今後も拡大する予測を示した。「日本は社会経済の安定性が高く、世界の都市と比較して投資リスクが低いことから投資家の意欲は旺盛。アメリカやヨーロッパは金利が上昇局面にある中、低金利が継続している点も魅力だとされている」(同氏)。


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