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全宅連、空き家・空き地活用促進に向け研究報告

 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会は、「空き家・空き地等の活用促進のための政策研究」の報告書をまとめ、5月31日に実施した理事会で成果報告を行なった。

 全宅連では、かねてより空き家問題の解決について地方自治体との連携や各種政策の実現といった面で成果を上げてきた。ただし、空き家バンクを含めた各種取り組みの実績については地域によって取り組みに温度差がみられることや、官民連携の在り方についても課題を感じている地域が多いという。さらに、地方部の空き家・空き地は価格が低廉で採算性が低いためにビジネスとして成立しづらいという課題もある。

 そうした各種の事情を背景に、2022年度事業として空き家・空き地等の活用促進のための政策研究会(座長・中川雅之氏〈日本大学経済学部教授〉)を立ち上げて地域活性化・社会貢献の観点から課題整理と政策等について、事前調査やヒアリングを行なった上で、22年10月以降4回にわたって検討してきた。

 報告書では、現状の課題認識としてビジネス、官民連携、未然防止の3つの観点で課題があるとし、その対策についての提言も盛り込んでいる。

 ビジネスの観点では、空き家対策の担い手として宅建事業者が果たせることは大きいものの、(1)特に市場性の低い空き家の流通や相談対応等について採算性の確保、(2)自治体等が所有する空き家所有者情報へのアクセス、といった点がハードルとなって事業として行なうことに踏み切れないという問題があると指摘。それに対する提言として、空き家情報活用を円滑化するために改正空き家特措法で市町村が指定するものと定められている「空き家等管理活用支援法人」に各都道府県の宅建協会が指定されることで空き家・空き地対策を事業化しやすくなるとした。また、空き家対策における宅建士の役割を明確するとともに、宅建士を「所有者不明土地建物管理人」に登用するなどといった取り組みが求められるとした。

 官民連携の視点では、自治体におけるマンパワー・予算不足によって取り組みに温度差があるほか、民間活用による官民連携も十分に進んでいるとは言えないとする。提言では、自治体による地域の市場性の有無に応じた課題の把握と対策の策定を求めていくとともに、全宅連として協力していく体制を整備していくべきだとした。

 空き家の未然防止については、対策が十分ではないとして、相談対応人材の育成や遠隔地居住者に向けた相談会の実施など、全宅連の組織力を生かした相談体制を検討する必要があるとしたほか、オーナーが早期に対応できるよう、空き家の取得・活用・解体等を支援する税制を検討していくことが必要だとしている。


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