記者の目 / 開発・分譲

2013/6/26

「グランフロント大阪」が目指すまちづくり

開業後は順調な滑り出し

 JR「大阪」駅北側の再開発地区「うめきた」に、オフィス、商業施設、ホテル、住宅などを集積させた「グランフロント大阪」が、今春グランドオープンした。  「うめきた」は、「大阪」駅北地区の梅田貨物駅を中心とする約24haの地域で、都市再生緊急整備地域に指定されている。「グランフロント大阪」は、同地域のうち約7haを先行開発したもので、初年度は2,500万人の来場と400億円の売り上げを目指しており、関西経済の牽引役として期待されている。  今回は、そんな「グランフロント大阪」が目指すまちづくりについて、その取り組みや工夫、運営方法を紹介するとともに、開業後の様子についてレポートする。

4棟の高層ビルからなる「グランフロント大阪」外観。右から南館「タワーA」、北館「タワーB」「タワーC」、分譲マンション「グランフロント大阪オーナーズタワー」
4棟の高層ビルからなる「グランフロント大阪」外観。右から南館「タワーA」、北館「タワーB」「タワーC」、分譲マンション「グランフロント大阪オーナーズタワー」
7層吹き抜け構造の屋内オープンスペース「ナレッジプラザ」。中核施設「ナレッジキャピタル」と連携してイベントなどを行なう
7層吹き抜け構造の屋内オープンスペース「ナレッジプラザ」。中核施設「ナレッジキャピタル」と連携してイベントなどを行なう
人々が集まれる憩いの空間「うめきた広場」。広場に面した建物には、カフェや多目的ホール「うめきたSHIP HALL」がある
人々が集まれる憩いの空間「うめきた広場」。広場に面した建物には、カフェや多目的ホール「うめきたSHIP HALL」がある
南館・北館9階の屋上には、計1万平方メートル超の「テラスガーデン」が設けられている
南館・北館9階の屋上には、計1万平方メートル超の「テラスガーデン」が設けられている
エリア巡回バスやレンタサイクルサービスにより、梅田エリア全体の回遊性を高める、新しい交通サービス「UMEGLE(うめぐる)」
エリア巡回バスやレンタサイクルサービスにより、梅田エリア全体の回遊性を高める、新しい交通サービス「UMEGLE(うめぐる)」
国際会議にも対応する「ナレッジキャピタル コンベンションセンター」。1
国際会議にも対応する「ナレッジキャピタル コンベンションセンター」。1

まちに賑わいをもたらす新たな試み

 「グランフロント大阪」は、南北に4棟の高層ビル(南館(タワーA)と北館(タワーBとタワーC)、分譲マンション「グランフロント大阪オーナーズタワー」(総戸数525戸)が並び、商業施設やホテル、オフィス、高級マンションからなる。
 南館は、地上38階地下3階建て、敷地面積約1万571平方メートル。商業施設、パナソニックセンター大阪、オフィスで構成。北館は、地上38階地下3階建てのタワーBと、地上33階地下3階建てのタワーCからなり、オフィス、ナレッジキャピタルのほか、商業施設、ホテル(215室)・サービスレジデンス(57室)、コンベンション施設などで構成。
 延べ約4万4,000平方メートルの店舗面積を有する商業施設は、アパレルショップやセレクトショップ、雑貨ショップ、飲食店など国内外から266店舗が集結する。

 「グランフロント大阪」のある土地は、元々JRの貨物ヤード。一般の人々にはまったく縁のない場所だった。しかし、今回の開発では、新たな出会いの場を設け、人と人とがつながり、広がっていくまちを目指したという。
 特徴的なのは、「知」をテーマにした中核施設「ナレッジキャピタル」を設置した点。これは、一般の人から、企業、研究機関、大学まで、さまざまな人々が交わり、それぞれが持つ「感性」と「技術」を融合させて、新たな商品やサービスを生み出していこうという施設だ。会員制交流サロンやレンタル可能な小規模オフィスをはじめ、貸会議室、多目的劇場、企業と生活者とのコミュニケーション空間など、さまざまな施設を連携させて運営する。

 一方で、オープンスペースや、のんびりと散歩をしてくつろげる場所を多く取り入れていることも特徴。「グランフロント大阪」の北館と南館を結ぶ歩道「けやき並木」には、公道利用の特例を受け、全国でも2例目となる道路上のオープンカフェを常設。他にも「ナレッジキャピタル」と連携したイベントができる屋内オープンスペース「ナレッジプラザ」をはじめ、約1万平方メートルの憩いの空間「うめきた広場」、南館・北館9階屋上の「テラスガーデン」、「うめきた広場」に面した建物の2階にある多目的ホール「うめきたSHIP HALL」など、人が集まるスペースを用意して、気軽に歩いて楽しめるような仕掛けをつくっている。

新しい交通サービスもスタート

 さらに、梅田地区全体の活性化にも取り組む。まちびらきに合わせて、新しい交通サービス「UMEGLE(うめぐる)」がスタート。うめぐるは、「グランフロント大阪」に限らず、梅田エリア全体の回遊性を高めるためのサービス。都心部の交通混雑を解消するため、できるだけまちの中心部への自動車の流入を減らそうと、エリア巡回バスをはじめ、周辺駐車場との連携によるレンタサイクルサービスによって、アクセスの改善を図り、まちの活性化を目指している。
 バスは、北は茶屋町付近、南はJR「北新地」駅付近など、梅田地区12地点をつなぐ1周約4kmを10~21時まで10分間隔で運行(価格は100円)。レンタサイクルは「うめきた広場」内に貸し出し・返却ポートが設置してあり、事前登録なしで利用することが可能(最初の1時間は200円、以降1時間ごと100円)。
 今後は、さらに周辺エリアや行政と連携しながら、巡回バスのルートを検討したり、レンタサイクルの貸し出し場所を増やしたりするなど、サービスの拡充を図っていく予定。

開業後1ヵ月で700万人が来場

 そんな「グランフロント大阪」の取り組みが奏功してか、4月26日の開業日には、来場者が約34万人、3日目には累計100万人を突破。5月の大型連休最終日までの累計は300万人超となるなど、順調な滑り出しとなった。その後も客足は衰えず、平日で1日10~20万人を集め、開業後1ヵ月の来場者数は累計約700万人を超えた。専門店街の売上高は1カ月で50億円を突破。初年度の売上高の目標400億円は、このペースでいけば、達成可能の見通し。
 ただ、来場者は想定を大幅に上回っているものの、来場者1人当たりの売上高は700円以下と少しさみしい数字。様子見客が多いことが主な要因のようだが、リピーターが増えていけば、売り上げのさらなる拡大が期待できる。

超高級マンションは完売、一方、オフィスは鈍い出足

 「グランフロント大阪」には、最高価格が4億円を超える超高級マンション「グランフロント大阪オーナーズタワー」があるが、今年2月には全525戸が完売となっている。
 同マンションは、地上48階地下1階建て、敷地面積約4,666平方メートル。販売価格は3,670万~4億1,500万円。専有面積47.78~300.10平方メートル(1K~3LDK)。4重セキュリティや、災害時に備えて免震構造を採用。同じ地区に開業する高級ホテル「インターコンチネンタルホテル大阪」のサービスが付属するなど、立地や高級感、品質の高さなどが人気となり、売り出しから好調となった。
 一方で、オフィス棟は、5月初めの時点で入居率が2割強とややスロースタートとなっている。駅近で交通利便性は優れているものの、周辺のオフィスに比べて、賃料が高いことが要因だ。ただ、まちに魅力を感じる企業が出てくれば、新しく大阪に進出する企業が増え、需要が出てくる可能性もあるだろう。

「うめきた」全体の連携で国際競争力高める

 開業した後も、隣接する西エリアではさらなる大規模開発が控えている。「グランフロント大阪」の開発面積は、全体からみれば、3分の1にも満たず、まちの発展は今後の開発に委ねる部分が大きい。
 国際競争力の高い都市を目指し、魅力的なまちにするには、周辺との連携をさらに強化していく必要がある。今後開発が進む隣接エリアが、ともに発展し、まちを熟成させていってほしい。(さ)

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