海外トピックス

2016/7/22

vol.302 親離れ&子離れ、そして不動産ビジネスとの関係

いまの若者達(ミレニアルズ)はベビーブーマーズ世代ともX世代とも違う特徴を持っているようだ(カナダ バンクーバー市)
いまの若者達(ミレニアルズ)はベビーブーマーズ世代ともX世代とも違う特徴を持っているようだ(カナダ バンクーバー市)
結婚式で最初のダンスは花嫁と花嫁の父で始まる。親離れ子離れの日だが(イリノイ州シカゴ市)
結婚式で最初のダンスは花嫁と花嫁の父で始まる。親離れ子離れの日だが(イリノイ州シカゴ市)
家を出てアパートに住む娘だが、親の支援がまだ必要らしい(イリノイ州リバティビル市)
家を出てアパートに住む娘だが、親の支援がまだ必要らしい(イリノイ州リバティビル市)
シカゴから母親の住むハワイに移った娘。母子の絆は強いようだ(ハワイホノルル市)
シカゴから母親の住むハワイに移った娘。母子の絆は強いようだ(ハワイホノルル市)
同居はしていないが子供への支援は惜しまないと話す友人(イリノイ州シカゴ市)
同居はしていないが子供への支援は惜しまないと話す友人(イリノイ州シカゴ市)

 不動産ビジネスに活気がいまひとつ欲しい。雇用率が良くなってきたにもかかわらず、不動産売買が足踏み状態なのはなぜだろうか?

 停滞の原因を推察するに、若者世代(ミレニアルズ)及び彼等の親世代(大半はベビーブーマーズ)の動きが予想外に鈍く、この2つが不動産ビジネスのダイナミックな動きを妨げているのではないか。

 この現象を引き起こしている要因として、親離れが出来ず独り立ちを渋る若者達と、子離れをしない親達の相互依存関係が見え隠れする。

ミレニアルズの財政状況は厳しい

 ニューヨークタイムズ紙によると、ミレニアルズは金銭面に余裕がなく借金もかさんでいるのが特徴と指摘している。彼等の多くは同時期のベビーブーマーズ世代やジェネレーションX世代に比べて重い学生ローンを背負っている。若者達は高学歴を取得するために学生ローンを組んで月謝にあてるが、卒業後返済してゆくのは相当の重荷となる。家庭があり40歳過ぎた友人(大学助教授)は「やっと今年で学生ローンの返済が終わるよ!」と笑っていた。

 仕事があってもなくても、ローンは当然ながら卒業後毎月返済しなければならない。第二次世界大戦後に生まれ育ち、「力強いアメリカ」にどっぷりつかって育ったベビーブーマーズ世代とは社会的な背景が違い、深刻な景気後退の時期にぶつかり、就職どころかパートタイムの仕事の機会でさえ少ない若者世代である。学生ローンは借金となってのしかかる。

若者5人に1人が親と同居

 不動産関係のリサーチで信頼のおけるジロゥ社によると、2005年には13%の若者達が親と同居していたが、11年後の現在は倍近い21%に上昇し、しかも増え続けているという。その理由はアメリカの賃貸相場の上昇と関連がある。

 全米平均家賃は月1,389ドル(月15万円ちょっと)だが、来年は3%上がると予想され、上がり続ける気配だ。住む場所によって賃貸価格に差があるのは当然で、都市は高い。

 サンフランシスコでは月に3,500ドル(月38万5,000円!)払って1BRが見つかれば幸運、独り住まいしている若者世代はたったの9.4%しかいない。

 サンフランシスコの賃貸市場は例外としても、収入の4分の1から3分の1を家賃にまわすので、仕事があってさえ一人暮らしは若者にとり経済的に厳しい。親の家に同居できればかなりの額を節約出来るので、親を頼りたくなるのはわからないでもない。

住み替えに踏み出さないベビーブーマーズ

 22歳から33歳までの若者世代(ミレニアルズ)の親達というと、大雑把にくくってベビーブーマーズの範疇(47歳から65歳)に入る。ベビーブーマーズのうち、大半の人々はすでにローンを払い終えた家に住んでいるが、家周りの修理や手入れは年をとるにつれ厄介になってゆくし、改築改装も必要になってくる。家を維持してゆくにはこれからの収入(年金)でまかなっていかれるだろうか不安になる。

 だから経費縮小を考えて小さめの家またはコンドミニアムに買い換える、あるいは持ち家を売って賃貸アパートに移るベビーブーマーズがこれまでは多く、そうした家の買い換え住み換えが不動産市場に活気を与えていた。

 ところが、生活の縮小にとりかかる時期にもかかわらず、その一歩を踏み出さないベビーブーマーズが多くなった。

成人した子の住まいや家計を支援する親たち

 アメリカン・コンシュマー・クレジット・カウンセリングの調査によると、アンケート回答者の41%の親世代が成人した子供を何らかのカタチで支援している。典型的な支援方法は「住まい」、つまり成人した子供を同居させているか、あるいは親が子供の住まいの支払いをしているというもの。親が成人した子供の家計費を助けてあげている場合もある。

 その結果として親は持ち家にとどまる。アメリカ合衆国国勢調査によると、人々が住まいを変え移動する割合を見てみると、1984年から85年は全人口の20%だったが、2014年から15年では半分の11%に激減している。それだけ人々の動きが全体として鈍くなってきた事を示している。

 さらに細かく見てゆくと、成人した若者世代が移動した割合は、1999年から2000年には35%(20歳-24歳)と27%(25歳-34歳)であるが、2014年から15年になると、23%(20歳-24歳)と20%(25歳-34歳)と、若者達の移動割合が減ってきていという結果が表われている。

子供たちが飛び立てば経済が動く!

 合衆国国勢調査によると、若者世代は8,000万人ちょっといると推定され、他のどの世代よりも多数派。望みの仕事に就く、結婚、子供を持つなど、今後の暮らしの変化で彼等が親の庇護から出て、自分の翼で飛び立つ時がくると予測するのは楽天的すぎるだろうか?

 そうなれば、不動産ビジネスが大幅に動く事が予想される。親世代にしても今後20年30年をどう暮らして行くか考える時期にさしかかっているのは確かで、未来図を描くのは難しいにしても、人生のうちで大きな決断を下す時期でもあろう。

 親離れと子離れは不動産ビジネスに良い影響を与えるだけでなく、社会的にも健康的ではないかと考えるのだが。


参考資料
Chicago Tribune newspaper 6/26/2016
www.zillow.com/blog/cities-where-millennials-live-alone-200621/
www.smh.com.au/lifestyle/diet-and-fitness/talkin-bout-my-label-20110720-1ho7s.html
www.nytimes.com/2015/06/21/business/media/marketers-fixation-on-the-millennial-generation.html?_r=0
www.whitehouse.gov/sites/default/files/docs/millennials_report.pdf
https://www.uschamberfoundation.org/reports/millennial-generation-research-review


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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2020/1/7

「記者の目」更新しました!

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