(株)住信基礎研究所は、2006年の「不動産プライベートファンドに関する実態調査」結果を発表した。
同調査は、不動産投資市場調査の一環として、2003年より毎年実施しているもので、今回が4回目。2006年11月~12月にかけて、国内で不動産プライベートファンドを組成・運用している企業121社を対象に、郵送による調査票の送付・回収を実施、34社から有効回答を得た。
これによると、現在運用中の代表的なファンドのスペックは、LTV(負債比率)が平均で71%(前年比2.4ポイント上昇)、目標IRRは10.9%(同▲0.1ポイント)となり、利回り確保が厳しい市場環境にあることがうかがえる。
また、06年に数本組成された1,000億円超の超大型一任型ファンドの影響から、目標資産規模の平均は614億円(同281億円増)と大幅に増加した。
投資対象エリアは、「都内」が減少し「首都圏」「関西」がともに拡大。「関西」「地方都市」の合計が55%を占めるなど、昨年に引き続き地方が東京圏を上回る結果となった。
ファンドタイプは、「コア」ファンドが全体の6割超。今後1年以内に組成が予定・検討されているファンドについても「コア」ファンドが過半数を占めている。
今後について、東京圏以外で賃料上昇が予想される都市に挙げられたのは「大阪」「名古屋」「福岡」で、これら3都市に全回答の9割が集中。
東京・大手町に代表される都心Aクラスオフィスビルのキャップレートの見通しについては、「現状のまま」との回答が7割弱となり、下げ止まりを予想する会社が大多数となった。
金利見通しについては、今後3年間で2%未満の上昇を見込んでいる会社が全体の8割と、さほど急激な金利上昇は見込んでいないものの、金融期間からのデット資金(ノンリコースローン)調達について、過半数の会社が今後より厳しくなるとの見方を示している。
なお、出口戦略には、これまで「JREIT成り・自社REITへの売却」が最有力とされてきていたが、利益相反の点から厳しい目が向けられていることもあり、「外部のファンドに売却」を最有力とする企業が最多、次いで「自社の後続ファンドに売却」となっている。
また、今後運用会社が生き残っていくための戦略としては、「コンプライアンスの充実」「物件取得力の強化」「運用能力の向上」の3つが最も多く、そのほか「他社との差別化」「投資家対応の強化」「企業力・運用規模の拡大」といった回答が見られた。
なお、同社が運用会社へのアンケート、ヒアリング、公表データに基づいて推計した不動産プライベートファンドの市場規模は、06年12月末時点で約6兆1,000億円(前年同期比約1兆7,000万円増)。同時期のJREIT資産規模(5兆4,000億円)との差は約7,000億円に縮まっている。