不動産ニュース / その他

2008/3/25

2008年地価公示に業界・各社がコメント

 国土交通省が24日に発表した「2008年地価公示」結果について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。

【業界団体】
(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 藤田和夫氏
(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏
(社)不動産流通経営協会 理事長 岩埼芳史氏
(社)不動産協会 理事長 岩沙弘道氏
(社)日本ビルヂング協会連合会 会長 髙木丈太郎氏

【各社】
東京建物(株) 取締役社長 畑中 誠氏
三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司氏
(順序不同)
 なお、地価公示に関する詳細はこちら

◆(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 藤田和夫氏

 平成20年の地価公示は、全国平均では2年連続で住宅地(1.3%)、商業地(3.8%)とも上昇しており、誠に喜ばしい。三大都市圏では、いざなぎ景気を超える景気回復過程において、マンション・オフィス需要増大や不動産投資の活発化等により、住宅地が2年連続、商業地が3年連続上昇している。また、地方圏においても地方ブロック中心都市の上昇傾向や、今年新たに上昇に転じた静岡県と奈良県などが加わり、全体としては4年連続で下落幅が縮小している。
 特徴的な傾向として、ブランド力のある優良住宅地や高度に商業機能が集積した地区、あるいは利便性や住環境に優れた地区等においては、引き続き上昇傾向 にあるものの、通勤・通学の利便性が劣る地域や過大な宅地供給が行われている地域、既存商業地の集客力の衰退等が進んでいる地域では、下落傾向にあり、いわゆる「地価の二極化」傾向がいっそう鮮明になっている。
 全宅連では、今後とも不動産取引市場が健全に発展し、全国的な資産デフレからの脱却のためには、中心都心部のみならず、地方圏においても不動産取引や証券化が活性化されるべきであるとの考えから、国土交通省が実施する地方における不動産証券化に関する研修会支援事業に協力し、今後も引き続き事業協力を行う予定である。
 また、消費税増税への対応等、不動産市場の持続的確保が可能な税制のあり方を検討するため、「土地住宅税制のあり方研究会」(座長:山崎福寿上智大学経済学部教授)を設置し、適宜政策提言や税制改正要望を行っていく。
 さらに、不動産の特性を考慮した適切な消費者保護を図るために望ましい不動産取引制度のあり方を検討することを目的に、「不動産取引制度に関する研究会」(座長:川口有一郎早稲田大学大学院教授)を設置したが、研究会報告を踏まえて、今後は不動産取引についてもオークションなどの手法を活用した「不動産取引所」の創設等を検討し、不動産流通市場の活性化に寄与していきたい。
 いずれにしても、昨年来の改正建築基準法施行やサブプライムローン問題等、懸念される課題はあるものの、ねじれ国会のもとでの税制関連法案の早期成立に期待するとともに、全宅連としても有識者を交えた各種研究会等の政策提言をまとめ、国民本位の政策実現に向けて努力していきたい。

◆(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏

 昨年の都道府県地価調査では、大都市周辺の足下の景気は底堅く推移し、地方の中心都市においても、地価の持ち直しがみられていたが、この度の地価公示結果を見ると、住宅地、商業地ともに全国平均では、昨年に引き続き地価が上昇したものの、都心部では上昇基調が鈍化している。
 また、地方圏全体では下落幅は縮小したものの、依然として下落地点が大半となった。地価の二極化は相変わらず進行しているが、これまで好調な需要を示していた大都市圏においても、サブプライム問題等の影響で、景気の減速感が地価に表れてきたと思われる。
 ねじれ国会と称される現在の政治状況のなか、登録免許税の特例措置の延長を含めた政府与党の税制改正大綱の内容がすみやかに実現されることを強く希望したい。

◆(社)不動産流通経営協会 理事長 岩埼芳史氏

 今回の地価公示においては、全国平均で住宅地、商業地ともに2年連続の上昇となったが、着目すべき地価動向としては、地価上昇の広がりが利便性や収益性の高い地域を中心として見られ、その他の地域との差異が引き続き鮮明となってきていること、前回高い上昇率であった都心部においては、前回の上昇率を下回る地域もみられ、特に、昨年後半においては、上昇基調が鈍化していることがあげられる。また地方圏においては市街地整備や観光需要の増大等により収益性が向上した一部の地域を除き、依然として下落基調が続いていることである。
 大都市圏における基調の変化は、都心部における急激な地価の上昇に需要が対応できず、新たな価格の調整局面に入っていることも考えられるが、サブプライ ム問題に端を発した世界規模の金融資本市場の変化、米国経済の減速見通しによる、景気の先行きに対する懸念や、個人所得の伸び悩みによる影響も出始めているものと考えられ、これまで大都市圏を中心に堅調さを維持してきた不動産流通市場においても、成約件数の減少、販売在庫の増加等の変化が鮮明となってきており、予断を許さない局面となっている。
 今後、全国レベルでのバランスの取れた地価の回復のためには、経済の不透明感を払拭するとともに、地方経済の活性化を進め国民生活の基盤である土地・住宅に関する多様なニーズに応える政策を推進し、不動産流通市場のさらなる活性化を図ることが不可欠である。現在、長期優良住宅普及促進法案が提出されるなど、住宅履歴書の整備を始め、良質なストックの拡大や流通についての課題が幅広く検討されているが、これらとあわせて、不動産流通を促進する税制の継続実施および住宅投資等に対する幅広い政策面での支援策の強化がさらに求められる。

◆(社)不動産協会 理事長 岩沙弘道氏

 今回発表された地価公示によれば、全国平均で住宅地、商業地とも2年連続上昇となった。三大都市圏・地方ブロック中心都市では都心部における地価上昇が周辺地域に広がりをみせた一方、その他の地方圏では地価の下落幅は縮小したものの、依然として下落傾向が継続している。

 都市、地方を問わず地価の上昇が見られた地点は、地域の特性を活かした街づくりの取り組み、再開発等の市街地整備、交通基盤の整備、観光振興に伴う需要の増大など、その地点の利便性や収益性といった付加価値の向上が評価された結果と考えられる。今後も都市・地域再生や地域活性化の自助努力とそれに対する支援が必要である。

 地価は、日本経済の回復と、都市・地域再生などによる付加価値の向上が実需に結びつき回復してきた。日本経済のファンダメンタルズは依然底堅いと考えられるものの、米国のサブプライムローン問題に端を発した国際金融市場の動揺、資源・資材価格の高騰、急激な為替変動等により、日本経済を取り巻く状況は厳しさを増している。こうした状況を受け、わが国の不動産市場においても、都心部では商業地の価格動向に一服感が出始め、住宅市場では調整局面を迎えるなど先行きの不透明感が増している。

 このような中、日本経済が中長期的に持続的成長を遂げるためには、内需主導型の経済成長モデルを確立することが必要である。内需拡大のためには、個人消費等への経済波及効果の大きい『住宅』を成長のエンジンととらえ、税制を含めた諸制度を、住宅投資を力強く支援するものとするとともに、経済のグローバル化が進展する中、国際競争力強化のため、全国で都市・地域再生をさらに進めるなど、不動産市場の活性化を図ることが不可欠である。

◆(社)日本ビルヂング協会連合会 会長 髙木丈太郎氏

 商業地・住宅地ともに2年連続の地価上昇となり、都心部から周辺部への地価上昇の広がりが見られるが、交通利便性など地域のポテンシャルの変化や地域のブランド力の差などが反映された結果であり、収益還元的な地価形成が定着してきたものと受け止めている。
 また、札幌、仙台、広島、福岡などの地方中枢都市においても地価の回復傾向が顕著になってきたことは、都市再生などの施策の効果が現れてきたものと評価している。
 今後とも、東京など大都市における国際競争力強化に向けた戦略の充実強化と、地方都市の中心市街地の活性化に向けた総合的な施策の展開が望まれる。
 わが国のオフィス市場の投資パフォーマンスは、先進諸国の中でも相対的に高いと考えているが、景気の先行きについては、世界的な信用収縮の影響が懸念されるところであり、安定的なビル経営の確保の観点からも、各国と連携した金融政策の機動的な運営と内需主導型の的確な経済運営がとりわけ重要な局面となっている。
 こうした観点から、登録免許税を含む歳入関連法案の処理をはじめ、当面する問題について一刻も早く政治的な合意形成が図られるよう期待しているところである。

◆東京建物(株) 取締役社長 畑中 誠氏

 地価は全国平均で住宅地及び商業地ともに2年連続で上昇となるなど、総じて地価の持ち直しが顕著になる一方、昨年後半からは三大都市圏等で上昇率の鈍化傾向も見られた。
 ここ数年、わが国経済は緩やかな景気回復を続けており、都市再開発などの都市・地域再生の進展や不動産証券化市場の拡大発展により、地価は都市部を中心に引き続き持ち直しているものの、サブプライム問題に端を発した米国の景気後退、原油高、円高、株安、国内政治の不安定など、このところのわが国経済は急速に先行き不透明感を増しており、不動産市場にも影響が出始めている。
 一方で、わが国の不動産市場は、米国に次ぐ市場規模を有し、不動産証券化市場を通じてグローバルな資金が流入するなどクロスボーダー化が進むなか、都市部を中心にオフィスマーケットが堅調であることや、優良な投資用不動産に対するイールドギャップが諸外国と比較しても高いことなどから、依然として魅力的な市場であることに変わりない。
 今後、わが国の内需主導型経済を強固に成長させ、持続させていくためには、不動産市場の更なる成長・発展が不可欠であり、そのためには官民一体となった都市・地域再生の更なる推進や不動産証券化市場に拡大に向けた規制緩和、税制支援などを継続的に実施していくことが肝要である。

◆三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司氏

 全国平均では、商業地・住宅地ともに2年連続の上昇となり、三大都市圏だけでなく、地方ブロックの中心都市等でも、上昇幅の拡大や地価上昇地点数の増加が見られたが、昨年後半より上昇基調がやや鈍化するエリアが出てくるなど、地価動向に若干の変化が認められる。また、地方圏の多くのエリアは、下落幅は縮小しているものの未だ下落傾向が続いている。
 米サブプライムローン問題に端を発した世界景気の減速や、原油価格の高騰等から、商業地の地価も一時的な価格調整局面に入るおそれはあるものの、オフィスマーケットは堅調に推移しており、国内外の投資家による商業用不動産への潜在的な投資意欲は依然として高い。
 分譲マンション市場は、株式市場の低迷等が、顧客心理に悪影響を及ぼしており、昨年後半から、郊外エリアで相対的に魅力の劣る物件は販売に鈍化傾向が見られる。商品企画力や立地条件に優れ、顧客の多様なニーズに的確に対応することが、今後より一層求められることになる。
 当社は、丸の内の他、新宿エリアや大阪駅北地区、仙台市等において、積極的に開発事業を展開しているが、今回の地価公示においても、再開発等により付加価値向上が図られているエリアでは地価が上昇し、その周辺にも影響が波及している。景気の先行きが不透明な中、地価上昇の機運を再び後退させないよう、都市の再開発や住宅建設を促進、支援し、不動産市場の持続的・安定的成長に資する税制を含めた諸制度の導入・運用等を期待したい。

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