(社)全日本不動産協会東京都本部(本部長:林 直清氏)は、26日開催した住生活セミナーで、同本部の総合教育研修機関「全日東京アカデミー」(学院長:青山 佾 明治大学公共政策大学院教授)がとりまとめた提言「地域防災と都市計画」を発表した。セミナーには、協会会員や一般都民など約100名が参加した。
同アカデミーは、2011年3月、旧耐震マンションが都市防災の上で悪影響が大きいとして、その建て替え政策についての提言を行なった。その後発生した東日本大震災を受け、地域防災、災害に強い都市づくりが喫緊の課題となっているとして、前提言をさらに推し進め、「密集住宅地で大災害からどう住民を守るか」という観点から、同アカデミーの運営委員会調査・研究小調査委員会が専門家、不動産業者、建築士、コンサルタント、学識経験者などと共同で、2年間かけ議論。その内容を新たな提言としてまとめたもの。
同提言は、すぐにでも着手できる「地域防災力の推進強化」と、中長期的な取り組みが必要な「防災都市づくりの推進強化」で構成。前者には、都内米軍基地返還地の有効活用など災害時の避難施設・シェルターの整備、地域の災害シナリオの作成、エリアマネジメントによる地域防災の仕組みづくり、災害時の賃貸物件斡旋・供給への支援拡充などを盛り込んだ。
また、後者には、未利用容積率の利用促進や地区まちづくりの規制緩和といった密集市街地開発のインセンティブや事業加速化の支援、防災上危険な建築物の撤去や測量・地籍調査の実施強化など既成市街地整備の加速化、セットバック後も容積率を従来通り使えるようにするなどのインセンティブによる道路拡幅整備の促進、沿道建築物以外の耐震化助成拡充、耐震改修への助成の検討、危険な賃貸住宅の退去命令や正当事由の要件緩和、借り主への移転費用補助などによる耐震改修促進などを盛り込んでいる。
この提言を受け全日東京では、地域防災の主体者育成、災害時の帰宅困難者支援、地域住宅の脆弱性を把握し防災性向上へ協力する等「地域密着型営業を活かし、地域防災に協力していく」(林氏)方針。また、物件オーナーや一般ユーザーへの都市防災知識や技術をテーマにしたセミナーの開催、防災都市づくりを推進するための支援策、税制優遇措置などの要望活動に加え、同協会の物件情報検索システム「ゼネット」を災害時の借上住宅情報提供などを通じ有効活用するなどの取り組みを行なっていく。