不動産ニュース / 調査・統計データ

2025/3/18

都心開発の重心は品川へ。“空港への距離”が鍵

 (一社)100年企業戦略研究所(代表理事:堀内 勉多摩大学大学院経営情報学研究科教授)は17日、レポート「東京都心5区の今後の展開<その2 オフィスの状況と動向>」を発表。プレス向け説明会を開催した。

 同研究所は、2018年4月に(株)ボルテックスの社内シンクタンクとして発足。より中立的立場で研究に取り組むため、22年2月に一般社団法人化。外部研究機関や各界有識者と連携して、長寿企業や企業の持続可能性に関する研究活動に取り組んでいる。
 都心5区の都市力と活動の実績、今後の展望に関して3回にわたりレポートを公表する計画で、今回はその第2弾。オフィスについてとりまとめた。なお、初弾のレポートの内容は25年1月22日の記事を参照。

 東京都心5区におけるオフィスビルは、1990年代前半のオイルショック以降、供給量に波はあるもののゆっくりと増加を続け、2024年12月には延床面積1,416万5,630平方メートルと、バブル経済期のピークから34年で2.27倍に拡大した。直近5年(20年1月~24年12月)の都心5区オフィス供給量は302万1,140平方メートルであり、区別に見ると、「虎ノ門ヒルズステーションタワー」や「麻布台ヒルズ森JPタワー」等の竣工があった港区が171万2,756平方メートルと最も供給量が多く、全体の56.7%を占めた。ただし、「24年単年で見るとオフィス床供給量がマイナスとなった千代田区も新たな開発に向け既存ビルを解体している等の事情があるだけで、供給のタイミングに波はあるものの、都心5区におけるオフィスビルの開発はどのエリアでも止まっていない。今後も供給は継続する」(同研究所アドバイザー市川宏雄氏(明治大学名誉教授、大都市政策研究機構理事長))という。

 コロナ禍による影響については、各エリアの空室率が、千代田区は22年6月に5.07%(20年1月時点では1.25%)、港区は23年8月に9.60%(同1.76%)、渋谷区は21年7月に6.68%(同2.09%)と一時的に悪化したものの、すでに回復傾向にあり、「オフィス需要の減退について懸念の声は上がっていたが、現状からしてコロナ禍の影響は限定的なものであった」(同氏)。実際に、在宅勤務の普及等により一時は企業がオフィス床を減らす動きもあったが「そうした企業も現在は週3~4日出社を基本とする方針にシフトチェンジしている。それに伴い、執務空間がメインである従来のオフィスから、休息スペースや対話のスペース等、良好な体調の維持と充実感が得られるオフィスに需要が変化した」(同氏)。賃料から見ても、24年末にはコロナ禍前のピークの8割にまで回復していることから、やはりオフィス需要に対するコロナ禍の影響は限定的であるとした。

 今後は、「江戸時代には日本橋が中心だったが、開発の重心が品川方面に南下している」(同氏)と指摘。「世界の都市間競争において、“空港とまちの距離”が重視されている。そのため、今後は“羽田空港”に絡めて都市開発も交通網の整備も進んでいく。品川は羽田空港に近く、また、リニア中央新幹線の始発駅であることを考えても、今後開発が期待されるエリアだと考えられる」(同氏)などと話した。

 なお、25年4月中旬に発表する第3回のレポートでは「今後オフィス供給が期待されるエリア」について言及する。

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