TX沿線では2物件・1,700戸を発売
藤和不動産(株)はこのほど、今年下半期のマンション販売戦略を発表した。重点プロジェクトとなるのは、やはり大規模マンション。8月に開通したつくばエクスプレス(TX)沿線では、2物件・総戸数1,700戸を発売。そのほか、川崎の2物件1,300戸、川口駅前では500戸のタワーマンションを発売していく。いずれも、スケールメリット、商品企画での差別化を徹底。早期完売をめざしていく。杉浦重厚社長自らが語った販売戦略と、目玉物件の1つであるTX最寄りの「東京新大陸プロジェクト」を紹介したい。






大規模物件比率が40%まで拡大
同社は今期、すでに全国で2,800戸のマンションを販売。今期販売予定戸数4,100戸のおよそ7割を消化している。年初から販売を開始した注目物件「フォートンヒルズ」(横浜市戸塚区)も、総戸数888戸のうち、3期・682戸を即日販売させている。
「通年より5,6%早いペース。首都圏を中心に、売れ足は早い。需要を先食いしていると指摘されるが、ライフスタイルの多様化や世帯分かれにより、新しい需要が生まれている」と杉浦社長は語る。
今回発表された下半期の重点プロジェクトは、首都圏では5つ。06年度決算計上物件を前倒しで販売していくもので、いずれも総戸数300戸以上の大規模物件で、同社が得意とする一次取得者向けの内容。10月から、本格的販売活動に入る。
「当社は、300戸以上の大規模物件、100戸以上の中規模物件、小規模物件の比率がほぼバランスが取れており、この考えを変えるつもりはないが、今年は大規模物件の比率が40%まで拡大している。いずれの物件も共同事業だが、当社がメインシェアを取り、商品企画・販売戦略を決定している」(杉浦社長)。
一番の注目物件は、8月に開通したつくばエクスプレス(TX)沿線での2物件「東京新大陸プロジェクト」(荒川区南千住8丁目)と「マインループ」(埼玉県八潮市)。「東京新大陸PJ」は、南千住駅徒歩15分に立地。大規模再開発区域内にあり、総戸数は693戸だが、計画戸数は1300戸を超える。「マインループ」は、八潮駅前の区画整理事業地内に立地し、総戸数は343戸。大規模ショッピングセンターに隣接し、多彩な共用施設と市役所の出張所も併設される、駅前のランドマーク的プロジェクトだ。
川崎市でも、2物件を発売する。「川崎サイトシティ」(川崎市川崎区下並木)は、京浜急行電鉄八丁畷駅前に立地し、川崎駅にも徒歩13分でアクセスできる。総戸数は505戸。ランドプランに力を入れており、都市型立地でおろそかになりがちな環境創造がなされる。スケールメリットを生かした16もの共用施設も売り。
「スニーカータウン」(川崎市高津区久地)は、東急田園都市線溝の口駅に徒歩15分。多摩川にほど近い3万平方メートルの敷地を持つ、総戸数855戸の大規模マンション。次世代オール電化システムを導入し、平均専有面積84平方メートルのゆとりを売りにする。
京浜東北線川口駅西口駅前では、2棟のタワーマンションからなる「ドリームタワーズ」(川口市飯塚)を発売。地上30階建て・総戸数239戸のイースト棟は「アメニティ」、31階建て・総戸数259戸のウエスト棟は「セキュリティ」をテーマとしている。
これら5物件は、現在インターネットを中心としたプレセールスを行なっており、インターネットからの反響をメインに、東京新大陸PJが2,000件、マインループが1,500件、スニーカータウンが1,200件の事前反響を集めるなど好調だ。
多彩な共用施設と低価格に魅力
重点プロジェクトのうち、現時点で見学が可能だった「東京新大陸PJ」を見学してきた。
建設地は隅田川沿い、南千住駅前から続く大規模再開発エリアの一角。すでに多くのマンションが立ち並んでおり、街並みは成熟している。駅前でも商業施設の整備が進み、さらにJR貨物の操車場周辺での住宅市街地総合整備と隅田川護岸のスーパー堤防整備が進めば、街並みは一変しそうで、将来性がある。
今回分譲されるのは、総面積2万9,000平方メートルのうちの約半分、1万5,200平方メートルに建築される、20階建て5棟・693戸。設計・施工・監理は、長谷工コーポレーション。
住戸は3LDK・4LDK、専有面積71~105平方メートル。平均85平方メートルとゆとりを持たせている。基本構造、住戸仕様、アメニティ、セキュリティなどは長谷工施工マンションの標準的なもの。6メートル台のスパンが中心なのは残念だが、38通りの幅広いプランを用意している。
それとは対照的に、共用施設とソフト提案は多彩だ。「TIMES DESIGN」(豊かな時間をデザインする)をテーマに、様々なジャンルのセミナープログラムを用意。共用施設は「豊かな時間をデザインするスペース」として、各分野のトップブランドとのコラボレーションを行なった。インテリアショップ「シボネ」によるブックバー(ライブラリー)、ナショナルの最新マッサージチェアを設置したヒーリングスタジオ、BOSEのサラウンドシステムの入ったシネソニック(シアター)、ウェスティンホテル開発のヘブンリーベッドが設置されるゲストルームなどだ。いずれも個性的で、いい差別化になりそうだ。
販売価格は、かなり抑えられている。メインとなる3LDK・80平方メートル台の住戸が3500万円台、4LDK・88平方メートル台でも4000万円を切る。坪単価にして150万円台。強力なライバルとなるであろう、湾岸・豊洲周辺のマンションよりかなり割安感がある。
「ここにきて土地仕入れ価格はかなり上がっており、普通にしていたのでは販売価格が10~15%ほど上がってしまい、ユーザーが付いていけなくなる。幸い、ゼネコンも協力的で、総合設計制度等を使って高さを増すなど、細かいコストダウンの積み重ねを、土地代に回している」(杉浦社長)。
販売予定価格と事前反響、商品とのバランスを見る限り、売れ行き好調が予想できそうだ。
販売戸数は追わず、いいものを継続的に
杉浦社長は、今後の同社のあり方について、こんな風に語った。
「当社は40年前から都市型マンションを販売している。これからも、さらにマンション一筋でいくため、新しい一歩を踏み出そうとしているのが、いま。三菱地所との資本提携により、財務的信用力も増した。情報交換も積極的にして、よい情報を集め、品揃えの知識を増やしている。今後は、これまで不得意としていた高額物件や商業との複合開発などにもチャレンジしていきたい。三菱地所との共同プロジェクトも、半年後には発表できると思う。ただ、むやみに販売戸数を追うことなく、継続的に良いものを造り、きちんと売って、毎年100億円の利益を生む会社でありたい」(J)