記者の目 / 開発・分譲

2006/1/27

「バルコニー」の概念を変える

日本綜合地所の提案する「オープンエアリビングバルコニー」

 専有面積の限られたマンションライフのなかで、ここ数年、さまざまな提案がなされているのが「バルコニー」だ。単なる「物干し場」だったバルコニーは、ガーデニングや憩いのスペース、居室の延長として多種多様の利用がされることも増えてきた。だが、その「広さ」や「奥行き」については、法規制の関係から限りがあった。そんな制約から解放された、全く新しい発想のバルコニーが登場した。それが、日本綜合地所(株)の「オープンエアリビングバルコニー」だ。今後、同社の供給するマンションの半数以上に登場するという、そのバルコニーを採用した第一号物件「グランシティユーロリゾート葉山南」を見学してきた。

奥行き4m、抜群の開放感を実現した「オープンエアリビングバルコニー」
奥行き4m、抜群の開放感を実現した「オープンエアリビングバルコニー」
「建物モデル」こちらでも大きなバルコニーが目立つ
「建物モデル」こちらでも大きなバルコニーが目立つ
バルコニーの両側を吹き抜けとすることで、建築基準法の規制をクリア
バルコニーの両側を吹き抜けとすることで、建築基準法の規制をクリア
メーターモジュール採用の廊下。親子ドアも大きい!
メーターモジュール採用の廊下。親子ドアも大きい!
オール電化のキッチン
オール電化のキッチン
完成予想図・外観
完成予想図・外観

●奥行き4m、ジャグジーまであるのに「容積不算入」!

 「お客さまからは、まさに“大絶賛”されています。われわれも、お客さまに夢を持っていただける、何に使うか、どうやって使うか、ワクワクしてもらえる提案として、自信を持ってお勧めできます」と語るのは、同社専務の尾川亮氏。「ちょっとオーバーじゃないか」と思う読者もいるだろうが、実際、「オープンエアリビングバルコニー」を目にした記者も、そんな「ワクワク感」にかられてしまった。
 同バルコニーは、同社のヒット企画である「オープンエアリビング」(リビングから折り戸式全開口サッシュでアプローチできる、大型のサンバイザーを備えた専用庭)を2階以上の住戸で実現することを目的に開発された。だが、専用庭扱いの1階住戸と違い、いくらバルコニーが容積に参入されないとはいえ、その大きさを無制限に広げることはできない。

 建築基準法施行令第2条によると、建築物の面積算定は「外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積」、「ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離1m以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない」とある。つまり、「高い開放性を有する」マンションは、建物から1m+突き出た部分(バルコニーや開放廊下)の端から1m、合計幅2mについては容積算入されない。多くのバルコニーが「幅2m以下」なのはそのためだ。つまり、両側を隣住戸に囲まれた住戸のバルコニーを奥行き2m以上にするには、余計な容積消化分を価格に転嫁するか、その分住戸面積を小さくするしかないのである。
 ところが「オープンエアリビングバルコニー」の奥行きは、4mある。両側が開放されていなければ、幅2m分については、容積算入されてしまう(写真上から3点目、Aより先の部分)。これを防ぐため、同バルコニーは、その両側を大きな吹き抜けとし、開け放った。これがミソだ。それぞれの吹き抜けから2m(B、C)が容積算入されなくなり、結果として通常のバルコニーと同じくすべて「容積不算入」となっている。

 リビング側からのアプローチは、もちろん折り戸式全開口サッシュで、ウッドデッキが敷き詰められたバルコニーとの段差はほとんどなく、サッシュを開け放てばリビングとバルコニーは完全に一体化する。今回の「葉山南」では、ジャグジー付き温水バスの設置も選択できる。また、バルコニーではあるものの、居室側と外周側それぞれにスポット照明も完備されており、まさしく「居室」同様の扱いができる。面積自体は、リビング全面に沿った奥行き2mのバルコニーとさほど変わらないが、3面吹き抜け、ほぼスクエアな10畳大のスペースのほうがはるかに使い勝手がいいのは目に見えている。バルコニーとは反対側は腰窓となるが、広大な吹き抜けのおかげで十分な採光と通風が期待できそうだ。
 同社のマンションの売りはなにもこのバルコニーだけというわけではないが、他のチェックポイントが一瞬頭から消し飛んでしまうほど、強烈な印象を与えるポイントであることは間違いない。

●同社の売り「ユーロ」がベストマッチの「葉山南」

 今回見学した「グランシティユーロリゾート葉山南」は、神奈川県横須賀市秋谷(JR横須賀線逗子駅バス20分、徒歩1分)の海を臨む高台に位置する、地上7階建て、総戸数64戸のマンション。現地は、逗子御用邸、名勝・長者ヶ崎も近いリゾートエリアで、首都圏への通勤ニーズというよりは、リゾートマンションのニーズが強いかもしれない。
 同社のマンションは、「ユーロ・クオリティ」のコンセプト通り、淡いアースカラーをベースにした欧風イメージのデザインが多い。今回の「葉山南」も、モナコの最高級ホテル「オテル・ド・パリ」などのデザインをモチーフとした伝統的なヨーロッパ建築様式がベースとなっている。同社のマンションを都内で見かけると、「ちょっとミスマッチじゃないの」と感じることもあるが、この「葉山南」に関しては、海岸線の風景と見事なまでにマッチする。
 住戸は、1LDKから3LDK、専有面積56~85平方メートル。紹介してきた「オープンエアリビングバルコニー」は、このうち49戸に採用。最上階住戸のうち4戸は専用のオーシャンビューデッキを備え、共用施設として屋上には水盤を配したガーデンが設置される。
 モデルルームは、オープンエアリビングバルコニーが採用された専有面積85平方メートルの2LDK。2,200mmのハイサッシュ、メータモジュールの廊下、リビング親子ドア、引き戸を採用した寝室に、ウォークインクローゼットを介したバスルームへの動線。大型のカウンター収納を両面に配したキッチンなど、材質は決して高級品ではないが、作りこみが充実している。やはり、リビングとオープンエアリビングバルコニーとの一体感は見事なもので、リビングからの視線が外に抜けるため、リビングが面積以上の広さを感じる。オール電化を採用。同社が全面的に導入している「虹彩認証(人の瞳で判別する)オートロックや100%無料駐車場も採用。海岸沿いマンションならではのサーフボード置き場やシャワーブースも備える。
 販売価格は未定だが、オーシャンビュー住戸の最多価格帯は4,500万円台、オーシャンデッキ付きで5,000万円台、坪単価150万円台を予定しているという。現在までに100組近い来場者を集めている。来場者層は、40歳台から60歳代がメインボリューム。リゾートと実需ニーズはほぼ半々で、都内から多くの来場者を集めているという。「海の見えるマンション」「オープンエアリビングバルコニー」を求めての来場も多いとか。

●「オープンエアリビング」供給物件の半数に採用予定

 「マンション市場は、外観から商品企画にいたるまで各社遜色ないレベルになっており、これからはより差別化できるポイントが必要になってくる。“オープンエアリビングバルコニー”は、そうした差別化ポイントとして、集客力の向上や販売期間の短縮に充分効果が見られる。間もなく分譲を開始する“向ヶ丘遊園”をはじめ、今年度当社が分譲するマンションの半数以上に、オープンエアリビングバルコニーを実装していくつもりだ」と、尾川専務は語る。
 「構造計算書偽装問題」は、マンション購入希望者の「夢」をしたたかに奪いつつある。構造躯体を手抜きするなど言語道断のことだが、それはなくとも首都圏のマンション市場は似たり寄ったりの「金太郎飴」状態であることは、尾川専務も指摘するとおり。ディベロッパー各社は、「ユーザーに夢を与えるマンション」とは何なのか、真剣に考えていく必要がありそうだ。(J)

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