船井総研の「女性営業戦略セミナー」レポート
11月1日、(株)船井総合研究所が「業界最前線! 即実践! 成功事例から学ぶ『不動産業界の常識が変わる!』女性営業戦略セミナー」と題するセミナーを開催した。 賃貸仲介現場では、もはや女性の活用は通常化しているが、売買仲介となると、大手企業はともかく、中小業者ではまだまだ本格的に女性が活躍する現場を見ることは少ない。当日は、約20名の不動産経営者、管理職、営業社員が参加。熱心に聞き入っていた。



売買仲介で女性が活躍する稀有な例
場所は東京丸ノ内の船井総研東京本社セミナールーム。 当日、午後1時から始まった同セミナーは、5部構成だが、メインになったのは、株式会社プライムスター(東京都港区)代表取締役社長、咲本慶喜氏による「女性社員活用で組織力をあげる!」と、株式会社スミカ・クリエイト(東京都目黒区、代表取締役:羽生卓氏)の女性管理職・社員4名による「現場社員の本音を徹底ディスカッション」の2講座。 両社とも、女性社員が売買仲介営業場の主戦力として活躍していることで評判の会社だ。社長の決意表明から始まった女性活用
プライムスター、咲本社長は、1994年に埼玉県春日部市で売買仲介を主に創業。現在は埼玉県内および東京都内4拠点で戸建分譲、注文住宅受注、売買仲介を行なっている。年間売り上げは約30億円。 同社長が女性活用を積極化したのは2年前から。顧客満足度ナンバーワンの会社になることを決意し、そのためにどんな仕掛けが必要か、どんなスタッフが必要かを考え、経営・営業・人材すべての面で社内刷新を図った。新しいことにチャレンジできるスタッフ、個ではなく組織で動けるスタッフの採用に取り組むとともに、紹介受注100%の会社になるため、女性の活用が不可欠との決断をしたという。 その結果、それまでいた幹部社員が辞めていくなどの事態も起こったが、むしろ成長のための布石と前向きにとらえた。 現在は、社員32名中約半数の15人が女性。20代の女性社員をはじめ「古き悪しき慣習」を打ち破るスタッフが育ち、社員が生き生きと仕事ができる職場環境が出来上がってきているという。 女性が働きやすい職場作りのために、同社では週1回各店舗の女性事務だけを集めて事務スタッフミーティングを行なっているが、業務改善への思わぬ提案が出てきたり、店長レベルの会議では見えない部分も分かったりと、さまざまな効果をあげているそうだ。 また、人材は育成より採用であると語る同社長から、そのための同社独自のユニークな手法がいろいろと公開された。「風通しの良い社風」が女性を活性化
スミカ・クリエイトは、不動産仲介事業、プロパティマネジメント事業を主力業務とする会社。グループ会社に株式会社スミカ(不動産分譲事業、高齢者ケア事業、不動産証券化事業)がある。1991年設立。昨年度の売上は約60億円。 セミナーでは、友井時恵氏(課長)、小林知代氏(課長代理)、寺野麻衣氏(課長代理)、小鹿悠美子氏の4人が講演。全員新卒で入社しているが、入社を決めた理由、社員間のコミュニケーション、組織の中での役割、今後の展望などについて、それぞれの考え方、意見などが発表された。 「男性を初めて部下に持ったとき、男性に対して怒るということがなかなかできず難しかった」など、女性管理職としての悩みなども語られた一方、「風通しがいい社風」「社長がマメに全部の社員に声をかけている」「性別ではなく個人にスポットを当ててみてくれている」といった環境が、女性社員の活力を引き出していることが感じられる講演だった。このほか、株式会社センチュリー21・ジャパントレーニングサービス部課長、五井哲治氏が「全国約700店舗の加盟店と3700名の営業マンに学ぶ」と題した講演をした他、船井総研不動産仲介・管理業活性化プロジェクトチーム、村中真紀氏の「女性活用のポイントに学ぶ これからの不動産業界に求められること」と題する講演などが行なわれた。
「不動産業は女性に向いている」といわれて久しいが…
アメリカの不動産エージェントの8割が女性と言われるように、「不動産業は女性に向いている職業」とずいぶん前から言われてきている。日本でも、住宅を「住む側」から見る目、お客さまの気持ちになった営業、きめ細かい配慮、等々、女性営業のメリットを認識・評価する不動産経営者も増えてきた。客の側も、一昔前とは違い、営業担当が男性であろうが女性であろうが、知識と理解力、誠実な対応をしてくれる人であれば抵抗感を持たなくなってきている。必要なのは、経営者の意識改革
しかし、賃貸仲介現場はともかく、売買仲介現場に女性がまだまだ少ないのはなぜか? 本セミナーの2社の事例から明らかになったのは、経営者そのものの意識が変わらないとダメ、ということだ。 女性は使いにくい、打たれ弱い、すぐ辞める、といった古い観念を捨て、「女性」としてみるのではなく、その人の「個」としての能力を見極め、それを生かす道を考えていくことが必要だ。また、会社として、経営者としてのはっきりとした目標・理念を持ち、それを社員に明確に伝えることができないと、特に女性はついてこないということも分かった。さらに、男性に比べ女性は、「働く」ことに対する意識が多様である。そのあたりの見極め方も重要になろう。 「女性を活用している会社というのは、女性を表に出せる会社」という村中氏の言葉にナットク。
国際的に見ても、先進国でこれだけ女性の参加度が少ない業界は(特殊な職業を除いて)、珍しいのではないか。
IT化、国際化、高齢少子化といった社会変化の中で、経営者の意識転換は進んでいくだろう。それに伴って、不動産業界にも「女性を表に出す」会社が増えてくるに違いないと期待が高まったセミナーだった(yn)