(株)コプラスの新しい取り組み、シナリオを使ってセミナー
自分らしさのぎゅっと詰まった「コーポラティブハウス」。設計やら費用やら面倒なことも多そうだけど、でもいつかは暮らしてみたい。自分の理想を形にした家で最高に贅沢な自分だけの時間を過ごして、豊かな生活を送りたい―。 そうはいっても、やっぱりハードルが高い。そもそも本当に自分が暮らしたい住まいのカタチって、雑誌の中の家とも違うしな。自分の頭の中にはあるのだけれどうまく表現できない。なんとなくあんな感じ…と、頭に浮かんでいる映像を言葉にできたのならば、きっと家族にだって、皆にだって伝わるのに。映像を言葉に、そして形にするには、どうしたらいいのだろう。 まさにそんな取り組みを「シナリオ」を使って実践している企業がある。それも、「人が主役」の住まいや空間づくりに勤しむ(株)コプラス。早速担当者に話を聞いてみた。








(株)コプラスは、昨年5月、プロのシナリオライターを数多く輩出しているシナリオ・センター(東京・青山)の協力のもと、「ゾーニングワークショップ」を開催した。当日は、コーポラティブハウスに興味のある17組の家族が参加し、シナリオ・センターの新井一樹氏から「シナリオ」の基本的な構成や書き方を学び、各世帯で1本ずつ、生のシナリオを書いた。シナリオを通して見えてきたそれぞれの住まいの理想のカタチを、その次のステップとして図面に落とし込んでいくというもの。
「言葉」と「図面」を巧みに使って自由設計の楽しさを覚え、理想を明確にしていくというセミナーだったが、総勢(子供6名含む)33名の参加者には大好評だった。
柱と、ト書きと、セリフを使って
しかし、素人が突然、シナリオなど書けるものだろうか。
恥ずかしがったり、ためらったりして進まないのでは。
シナリオは、「柱」と「ト書き」と「セリフ」の3つで構成される。
今回のセミナーでのお題は、「自分の理想の住まいで、最高だと感じる瞬間の場面をシナリオにしてみよう」というもので、家族全員を登場させるのが条件。
ドラマにすれば自然と、理想の住まいがポロリ
「当初、社内でもそういった懸念はあったのですが、意外とみなさん恥ずかしがらずにやりましたね。相手が目の前にいるのに、言葉にするって照れくさいもの。でも、それは自由設計のプロセスに似ています。踏み込んだところまで自分の考えや希望、理想などをきちんと伝え、すりあわせていくのが、住まいづくりには大事ですから」(㈱コプラス管理部マネージャーの野村 郁氏)
登場人物が自分の家族で、シーンも自分の家だからなのか。参加者らは、楽しみながら15分程度で書き終えたという。
シナリオでは、キャラクターの設定が重要だが、それも家づくりに、通じるものがある。家で大半の時間を過ごす主婦が、友人を家に招くのが好きか、モノづくりの趣味の作業に一人で集中したいタイプか。夫は?子供は?おばあちゃんは?など等…。
家族全員の生活スタイルや、「好きなこと」を尊重した住まいを作るためにも、きちんと一人ひとりの個性(キャラクター)と向き合う必要がある。言葉にするというのはなかなか難しいが、ドラマを作り、場面を作り、映像をイメージすると、自然にポロリと出るのかもしれない。「つまり、今回のセミナーは、シナリオを書くことが最終目的ではなく、自由設計のバーチャル体験」(野村氏)
家の中で自分が幸せを感じる場面を思い浮かべてセリフを書かせ、それにより、理想の住まいを追求させるという同社のこの取り組みはかなり面白い。当日は、それが目的ではなかったものの結果的に成約にも結びついた。
「私が主役の幸せなリビングルーム」
誰しもが、自分の家の中で、毎日幸せを感じたいと願う。しかし実際は、多くの人が既製の家に合わせるように暮らしている。「自分に合った住まい」であるべきなのに。
コーポラティブハウスに限らず、「家」の中で、「自分がとびきりハッピーなシーン」が描けるよう、考えてみようではないか。シナリオを何回も書いて、家族で何度も議論をするもよし。このようなセミナーに参加するもよし。と、せっかくなので、自分も考えてみた。
――夫が犬の散歩から帰ってきて、カウンターキッチン横の足洗い場で足を洗っているのを、「あら、もう帰ってきたの?」と、ソファに深く腰掛けながら見ている私。その頭上からは光と緑。ソファの向かいには大型スクリーンとオーディオシステム。私はスィッチ一つで、何でもコントロール(ついでに、夫も?)…と、ちょっと横着なキャラクターが見え見えか…――
人とのつながりを求めて
コーポラティブハウスの原点ともいえる「人とのつながり」。
コプラスでは、これをもっと広げて、今後はまちづくりの支援にも携わっていく考えだという。「シナリオ」を通して住人らのコミュニティを形成していく。すでに(株)御用聞きとのコラボレーションも行ない、光が丘団地でシナリオを使った子供向けイベントも実施ししている。
昨今のシェアハウス人気もそうだが、やはり人はどこかで人を求め、人と繋がりたいという思いがあると思う。「つながり」と「自分らしさ」を両輪に「大好き」が詰まったコーポラティブハウス。
今だからこそ、その注目度が上がるような気がする。(Y)