MIPIM JAPANでの日本流おもてなし
「MIPIM」というイベントをご存じだろうか? MIPIMとは、リードミデム(フランス・パリ)が主催する「不動産プロフェッショナル国際マーケット会議」(Marche International des Professionnels de l ‘Immobilier)のこと。このイベントが、5月20~21日の2日間、日本で初めて開催された。 このイベントでは、20を超えるカンファレンスと、ブース展示が2つの柱であったが、ブース展示では、日本らしいおもてなしの姿が随所で垣間見られた。今回はちょっと趣向を変えて、その視点からレポートする。








◆アカデミックなカンファレンス、カジュアルなブース展示
「MIPIM」は、1990年よりフランスのカンヌで毎年開催されてきたイベント。2006年からは、アジアの投資家を対象に「MIPIM ASIA」を開催してきた。この度、初開催された「MIPIM JAPAN」は、インバウンド・アウトバウンドに力を入れている日本が、日本の不動産市場をアピールするために、官民共同で誘致、今回実現したものだ。このイベントについては、「月刊不動産流通」2015年7月号の巻頭グラビア「流通フラッシュ」をご参照いただきたい。日本への不動産投資促進がテーマというと、堅苦しい、ビジネスライクなイベントを連想するかもしれない。確かにカンファレンスは、専門的なテーマのものが多かったが、ブース展示エリアについては、カジュアル感のある、親しみやすいものがほとんどであった。
展示ブースは2カテゴリーを用意。自治体等の出展ブースエリアと民間企業・業界団体のブースエリアだ。
自治体等のブースエリアには、東京、名古屋、大阪、福岡といった主要都市の巨大なジオラマが出現。各所に自治体等の担当者が待機し、各地で進む再開発プロジェクトの詳細や今後の予定などを解説すると共に、その地域の魅力を伝えていた。外国人来場者が熱心に質問する場面も、随所で見られた。
外国語に堪能なスタッフも多く配置されていて、外国語で説明を受けている来場者がそこかしこで見られた(記者には何を話しているのか分からず…)。
対応していた自治体担当者に話を聞いたところ、「具体的な投資先を探していると思われる人から、『店舗を出店したい』という方も。海外の方のニーズが実にさまざまであることが分かった。現状、窓口ではワンストップでは対応できないので、そういった点の対応も今後の課題」とのことだった。
自治体ブースというと、それこそ堅苦しい印象を抱くかもしれない。そんな先入観を記者も持っていたが、そこに現れたのが甲冑姿のサムライ! 名古屋のPRをするその話言葉も、まるで時代劇のよう。そばには英語の通訳も張り付き、記念撮影にも気軽に応じていた。
◆菓子をつまんで、のどをうるおし、企業の実績を把握する
民間企業・業界団体のブースエリアでは、各企業が趣向を凝らしたブースを出展していた。多くのブースにジオラマが設置されており、自社で取り組むプロジェクトについて展示するとともに、待機するスタッフがそれを使って自社のビジネスなどについて解説していた。
特筆すべきは、飲み物や食べ物をふるまっているブースがとても多かったこと。水やお茶のペットボトルはたいていのブースに用意されており、さらにはフレッシュドリンクを配るブースまであった。
その他、お茶を点てて和菓子とともにふるまわれていたほか(これは、主催者が用意したもののようであったが)、各ブースでも、菓子や日本らしい小物などが来場者に提供されていた。
記者は、さまざまな不動産関連のイベントの取材機会がある。消費者対象のものだと、ノベルティなどが多数配布されるということが多いが、いわゆるB to Bのイベントで菓子を振る舞うというのは非常に珍しい。
そこであるブース担当者に質問してみたところ、「フランスのMIPIMでは、ブースでお酒やつまみを振る舞い、それらを味わいながら回るのが通常。それを日本式に取り入れたおもてなしをしている企業が多いのではないか」とのことであった。
こうしたある種お祭りのようなソフトな雰囲気により、来場者も肩肘張らずに、ブースを見て回ることができるのは、お互いにとってプラスに働くように思えた。各社のブース担当者も、ライバル視するというより、手すきの時にはお互いのブースを訪問し合うなどの姿も見られ、その和気あいあいとした雰囲気が、一大イベントを、より親しみやすくしているのではないだろうか。
実際に、多くの外国人来場者が各ブースで気軽に足を止めており、ブースの担当者からは「日本への投資を検討しているという外国人投資家と、多数接触できた」という声が多数聞かれた。また世界でも最先端を行く開発技術をアピールする良い機会にもなったようで、「自国の開発プロジェクトに、一緒に取り組まないか」といったアウトバウンド需要についても、多くの企業ブースに持ち込まれたという。
これらの流れを継続させるためにも、今後の継続開催は業界全体の希望だ。なお、主催企業によれば、来年5月には早くも第2回目の開催が検討されているという。初回となった今回、グローバル化の中での日本の立ち位置や、今後の経済動向を探る上でも、貴重なイベントとしてその役割を果たしたと思うが、日本の細やかなおもてなし精神を披露する場としても大きく機能したのではないかと感じた。(NO)
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