記者の目

2022/4/7

都内で“愛犬ファースト”なホテル

コロナ禍で大きな打撃を受けた宿泊業界。需要を回復すべくさまざまな宿泊施設がテレワークプランやワーケーション利用など、新たな需要創出に取り組んでいる。 そうした中、東京都を中心に都市型ホテル「ヴィラフォンテーヌ」を展開する住友不動産ヴィラフォンテーヌ(株)が、コロナ禍での新たな需要喚起への挑戦として、従来の同ブランドのスタイルにこだわらない、“愛犬ファースト”をアピールするブランド「inumo」を立ち上げた。その第1弾となる「inumo芝公園by Villa Fontaine」(東京都港区、客室数:70室)を2月25日に開業。どのようなホテルか紹介しよう。

◆全室愛犬対応で、館内をどこでも自由に歩き回れるように

 同社グループは昨年、東京都港区芝公園の同社ビル2棟と隣接する旧芝パークホテル新館を取得。将来的にはそれらビルとの一体的な開発を前提とした取得だったが、物件が2016年竣工と築浅だったこともあり、暫定的な活用を試みることにした。

 同物件は、地上9階地下1階建て、延床面積約4,610平方メートル。従前のつくりが生かせるよう、ホテルを第1候補に、他にはないユニークな特長を打ち出したいと、物件のポテンシャルをさまざまな方向から検討。最終的に、近隣に1万3,000平方メートル超の広大な芝公園があるという立地、全室約30平方メートルと比較的広さのある客室であること、また、同社は伊豆高原で15年間、愛犬と泊まれるリゾート型ホテルを運営してきた経験があったことが決め手となり、リゾート地ではない東京都心で、愛犬と快適に滞在できる特化型ホテルを企画することにしたという。

 一方、現在、都心のラグジュアリーホテルでも、一部客室で愛犬と泊まれるプランを設けるホテルが出てきている。そうしたホテルとの差別化策として、同ホテルでは“全室”愛犬と泊まれるように。また客室以外の場所ではケージに入れる必要があるなど、一般的には愛犬が館内を自由に歩き回ることができないホテルが多いが、同ホテルでは、リードを付ければ館内どこでも自由に歩き回れることをウリとすることにした。愛犬が粗相した際は、飼い主がすぐ掃除できるよう客室以外にも、エレベーターホールなどにウェットシートや、消臭・除菌スプレーなどを常備するようにしている。

「inumo芝公園by Villa Fontaine」外観
リードを付ければ館内どこでも自由に歩き回れるように
エレベーターホールなどにウェットシートや、消臭・除菌スプレーなどを常備
館内には撮影スポットも

◆エステ、グルメに預かりサービスも。愛犬のためのフルサービスを提供

 愛犬が“旅でリフレッシュできる”フルサービスの提供をコンセプトに、“フィットネス””エステ“”グルメ“などの観点から、滞在を充実させる施設・サービスを導入した。

 もと従業員専用フロアだった地下フロアを、愛犬に特化したフロアに改修。雨の日でも気兼ねなく散歩できるよう、また他の犬との交流の場として、約76平方メートルの従業員食堂だったスペースに全天候型のドッグランを創出した。採光のない地下空間を屋外のように演出するため、青空を模した天井照明を導入し、フェイクグリーンで屋内緑化も実施。床には、傷がつきにくく、愛犬がすべりにくい塩ビシートを採用し、壁面は、粗相した際の張り替えなどに対応しやすいよう腰壁デザインを取り入れている。

従業員食堂だったスペースに全天候型のドッグランを創出
LED照明を用いて青空を模した天井照明を導入

 そのほか愛犬のためのエステとして、トリミングやグルーミングサービスを提供するサロンや、同伴できない場所に出かける際に、一次的に愛犬が滞在できる預かりスペースも用意した。

トリミングやグルーミングサービスを提供するサロンも用意

 1階のイタリアンレストランでは、愛犬専用メニューを用意し、一緒に食事が楽しめるように。2階には、愛犬の食事を調理できるキッチンスペースも設け、健康に配慮したドッグフードの試食なども行なう。貸し切りで一緒にプライベートな時間が過ごせる有料のドッグラウンジ(約30平方メートル)も設置しており、今後はイベント等の開催も予定。

愛犬専用メニューを用意しており、一緒に食事が楽しめる
愛犬用のディナー一例(有料)
貸し切りで一緒にプライベートな時間が過ごせるドッグラウンジ

◆室内で愛犬と遊んだり、ベッドでくつろげるタイプの客室も用意

 客室は、従前の内装や家具を生かしつつ、ドッグラン同様にフロアシートや壁紙を愛犬対応に改修。ツイン(39室)、キング(16室)はじめ最大4名まで宿泊できる計5タイプを提供する。より愛犬との滞在が楽しめる2つのコンセプトルーム「inumoルーム」(4室)、「ワンBEDフォース」(4室)も用意した。「inumoルーム」は、ベッドの代わりにソファベッド2台を配置することで、愛犬がより広い空間で遊べるスペースを確保。「ワンBEDフォース」ではベッド4台を並べて大きな1台とし、4名までベッドで愛犬と共にくつろげる仕様とした。

ベッドの代わりにソファベッド2台を配置した「inumoルーム」
4名までベッドで愛犬と共にくつろげる仕様とした「ワンBEDフォース」

 いずれの客室も愛犬2頭まで受け入れ、40kg程度までの大型犬も受け入れる。全客室内に食事用ボウルやおやつ、粘着クリーナーや足拭きウェットティッシュ、マナーシート等の愛犬専用アメニティも常備する。

全客室内に愛犬専用アメニティも常備

 宿泊料金は、愛犬との朝食、ドッグランやグルーミングの利用料金、一時預かりサービスも含む、愛犬同伴を前提としたオールインクルーシブで提供。平均料金は、ツイン(2名・愛犬2頭利用)で1室4万円台後半から5万円程度を見込む。

 ターゲットは、首都圏近郊からディズニーランドや東京観光、食事、買い物に訪れる層を想定。25日のオープン以降、都内、千葉県、神奈川など首都圏近郊の利用客を中心に、客足の伸びは順調。通常は1回数千円かかるグルーミング料金まで含まれたオールインクルーシブ料金が好評で、すでにリピーター客が複数組出ている。また、一般的に宿泊の際の制限が多い大型犬の買い主から、館内をリード付きで歩き回れるなど自由度の高さが好評で、口コミで利用が広がり、大型犬サークル(人間18人、愛犬20頭超)の利用もあったという。同社では、今後ペットショーなどでの広報活動に注力するとともに、利用状況を見ながら、愛犬連れの出張等、より広範囲からの集客も検討していく。

◆◆◆

 一部の客室ではなく全館内、全客室で愛犬を受け入れることで、吠え声や鳴き声、粗相が「お互い様」になり、飼い主も気兼ねなく滞在できるようになる。そして、レセプションロビーやエレベータホールに愛犬の目の高さに合わせた案内プレートやインテリアを配置するなど、館内のすみずみまで愛犬目線を生かしたつくり。個人的には、こういう細かな気遣いが案外、愛犬家の心に響くのではないかと感じる。都内でこうしたホテルができ、愛犬家たちの支持が得られれば、周辺で新たに愛犬家向けのサービスが提供され始めるなど、まちへの波及効果も期待できそうだ(meo)。

愛犬の目の高さに合わせた案内プレート
レセプションロビーでは愛犬の目線を意識して低めのインテリアを採用

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