






オーニングとは建物の外に取り付け、雨風や日差しを遮るテント、日除け、天蓋(キャノピー)を想像していただくとわかりやすいかもしれない。最近はレストランやブティック、ホテルなど、商業物件では必ずと言ってよい程建物に付随し、そこに店名や番地が表示され、目につきやすく工夫されている。
一方、一戸建て住宅などではオーニングはまだ充分に活用されていないようだ。住宅におけるオーニングはお洒落で個性的な風味を加えるのが最大のプラス面。窓や玄関ドアの上にオーニングをつけるとたちまち個性的な雰囲気を醸し出すし、選ぶ色によっては住宅全体の魅力的な視覚ポイントになる。
素材、色、形もさまざまなものが
シェイドやカーテン同様にオーニングは機能的でもある。素材は布地、金属、木など各種あり、色も形もサイズも豊富に出回っている。 布地ではキャンバス地が最も伝統的で格調もあり、色彩も美しい。最近では新合成素材や金属を布に織り込んだものも耐久性の面から使われるようになった。 金属、特にアルミニウムのオーニングは耐風防水に優れ、半永久的に長持ちするので経済的だ。 木は昔はよく使われていたが、腐ったりペンキを塗り替えなければならないために現在では人気がない。 他にもビニール地にハンドペイントしたり、デジタルプリンティングをするオーニング専門店もあるが、店舗なら面白いが個人の住宅では無地か縞模様が好まれる。例えば紺無地のオーニングに白地で波形の縁取りなどは、シックで、特に格調あるジョージアン風の建物に映える。オーニング専門会社、ショールームも参考にしよう
一戸建て住宅にオーニングを取り付ける場合は窓や玄関ドアの上だ。窓ガラスやドアに直接当たる雨風をやわらげ、日差しを防ぐ。特に窓から強い日差しが室内に入ると、気づかぬうちに絨毯やソファ、クッションなどの色が褪せることも…。 オーニングを専門に取り扱う会社は沢山あるから、まず何ヵ所かショールームを訪れる。あちこち調べた上でオーニング会社に連絡をとるとすぐに布地見本やフレームを持って自宅に来てくれ、施工まで一括した見積もりもしてもらえるから実際的な方法だろう。 大工仕事が得意であれば、大型家庭用品工具店で気に入ったオーニング素材と金具を買って自分で取り付けることも可能。アメリカは人件費が高いからその分の価格が浮く。スタンダード型と丸型を基本に、豊富なバリエーション
形は基本的には真っ直ぐなスタンダード型と丸型とに分けられる。さらにバリエーションは数限りない。例えば丸型でも「バブル型」とか「ドーム型」「ボストニアン」など、それぞれメーカーによって呼び名が違うし、スタイルもさまざまだ。 価格は施工料なしで窓用1個1万7,000円から6万円が一般的だろうが、サイズが大きくなったり特別仕様だと当然高くなる。大型家庭用品工具店ホームデポで買いやす値段の製品、ナルメージオウニングス社製のスタンダード型は施工料なしで1個2万7,000円。これは小さい窓用で高さ58cm、幅58cm。長さや幅のちがう製品も各種取り揃えてある。 色は茶、えんじ、チョコレート色とベージュの縞、グリーン、茶、ベージュの縞。丸型になると価格は高いようで、同店の「ボストニアン」(オゥンテック社)は窓用で高さ84cm、幅135cm、奥行きは66cmで4万3,000円。玄関の上につける場合は5万4,000円くらい。色は黒地に白の縁取り、えんじに白の縁取りと2種類。/www.homedepot.com季節や家の個性に合わせて楽しんでみては?
確かに上記の布地キャンバス地はお洒落度を引き上げるが、シカゴでは雪や氷の重さで布地が傷んだりたるんだりするのが弱点だ。クリスマスツリーが写っている右の写真に見られるように、激寒の季節、雪はとけずにオーニングの上に氷となってとどまることがある。それに冬は日差しが部屋に入った方が暖かいので、オーニングは機能面から言うと冬にはなくても…? 巻き上げ式のオーニングも出回ってはいるが、やはり伝統的な曲げたスティールを使ったキャンバス地のオーニングがエレガントなので好まれる。シカゴの老舗チェスターフィールド社では、要望があれば秋にオーニングをとりはずして冬の間保管し、春には再び取り付ける、というサービスも行なっている。/www.chesterfieldawning.com オーニングを取り付けて個性的なデザインを考えてみるのも楽しい改装のひとつと思う。
Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。