海外トピックス

2013/11/20

vol.239 ハウスボートに住むというライフスタイルの選択

運河に浮かぶ沢山のハウスボート(オランダアムステルダム市)
運河に浮かぶ沢山のハウスボート(オランダアムステルダム市)
小物から想像するとイラストレーターかデザイナーか?ハウスボートをオフィスとして使っているのかもしれない(オランダアムステルダム市)
小物から想像するとイラストレーターかデザイナーか?ハウスボートをオフィスとして使っているのかもしれない(オランダアムステルダム市)
付属の小さなボートでちょっとした買い物などに出掛けるのだろうか?(オランダアムステルダム市)
付属の小さなボートでちょっとした買い物などに出掛けるのだろうか?(オランダアムステルダム市)
お洒落な外観のハウスボート。屋上から港全体が見晴らせる。バンクーバー市があるブリティッシュコロンビア州は世界でハウスボートの名所として最も名高い(カナダ バンクーバー市)
お洒落な外観のハウスボート。屋上から港全体が見晴らせる。バンクーバー市があるブリティッシュコロンビア州は世界でハウスボートの名所として最も名高い(カナダ バンクーバー市)
一戸建て住宅と何ら変わりのないハウスボートだが、ゆらゆらと水面に浮いている。ハウスボート、というよりもフローティングホームであろうか?(カナダ バンクーバー市)
一戸建て住宅と何ら変わりのないハウスボートだが、ゆらゆらと水面に浮いている。ハウスボート、というよりもフローティングホームであろうか?(カナダ バンクーバー市)
沢山のサーフボードが並べられているハウスボート(カナダ バンクーバー市)
沢山のサーフボードが並べられているハウスボート(カナダ バンクーバー市)

カナダのバンクーバー市を訪れた際、グランヴィル島の岸辺にハウスボートが軒を並べて繋留されているのが目についた。ボートはどれもモダンなデザインで、自転車やスケートボードが脇に置いてあったり、繊細なレースのカーテンがひかれた窓辺には可愛らしい花が飾られ、おしゃれなセカンドハウスの様子。
ハウスボートはモーター付きにしても、外洋に出て大波をかぶれば室内が水浸しになるのは間違いない。港にヨットやクルーザーを繋留してそこで生活するのとは違う。波のない湾内や流れのゆるやかな川を必要があれば移動する程度で、決して航行が目的ではない。
ハウスボートは「ボート」とは言っても、水に浮かんでいる「住居」なのである。

住民登録すれば、ちゃんと郵便物も

オランダのアムステルダム市では、網の目のように巡っている運河に沢山のハウスボートが停泊していた。ボートの持ち主は市にちゃんと住所(停泊する場所)を登録するのだとアムステルダムに住むオランダ人の友人から聞いた。そうすると郵便物も届くし、アメリカのキャンプ場のように、電気を地上から引き込むことができ、陸地と同様に生活ができるらしい。 とりわけ、アムステルダム市は、建物は所有できても土地に関しては何百年も続いているこの市特有のシステムがあり、市に高い税金を払ってその土地を借りなければならない。ハウスボート居住者はこの点、固定資産税が免除されるためか、実際的な考え方から船上生活を望む人達が順番待ちの長い列だとか。

都市に住みながら自然を味わう

ハウスボートはワイルドライフをたっぷり満喫できる。干潮時には沢山の鳥達が貝をついばむ様子や、季節ごとに訪れる青鷺、白鷺、ペリカン、時には鶴などを真近に観察できる。朝日や夕焼けにいだかれる感覚も素晴らしい。行き交う船の明かりや海であげられる花火を屋上から眺めるのはロマンティック。 興味深いのは、充分自然を味わいながらも、ハウスボートがある立地はポートランド(オレゴン州)、シアトル(ワシントン州)、バンクーバー(カナダ)等、いずれも都市の中心部に近いということだ。とりわけハウスボートが多いサウサリート(カリフォルニア州)は、サンフランシスコの中心地にある金融街に近いためか、そこで働く若い人達も多く住む。 ハウスボート賃貸の家賃はボートのサイズや立地によりさまざまだが、月5万円から15万円位。下水処理などに月々6万円近くが加算されるようだ。台所はプロパンガス、洗濯は陸地のコインランドリーを使い、トイレ処理やゴミなどは週1回回収される。

ハウスボート専門の不動産仲介業者も

ハウスボート物件売買を専門に取り扱う不動産エージェントもアメリカ西海岸には数多い。購入の段階は普通の一戸建て住宅やコンドミニアム購入と何ら変わりはないが、陸地でなく水に浮かんでいる点、多少違った規則も。 例えば、耐航性のある船体であること、エンジンやナビシステムを備えていること、米国の沿岸警備隊の規則に合っているかどうか、など等…。 また、モーターがつかず、岸辺に繋留されるフローティングハウスは、ハウスボートとは違う規則が適用される。 ハウスボート購入は通常の不動産購入と同様、月々のローン返済、保険、それに加え、下水処理などに月々9万円位かかる。購入の際には税金も払わねばならないが、月々の固定資産税は払う必要がない。ただ、海水に浸っているので建物の痛みが早く、たびたびのメインテナンスを覚悟しなければならない。サンフランシスコのハウスボート物件を調べて見ると、価格は5,000万円から1億2,000万円位まで、決して安くはない。古いものだと2000万円位からあるが、修繕や改装にかなりの出費が必要だろう。

流動性のあるコンパクトな暮らしにあこがれ

筆者が生まれ育った横浜は港町で川が多く、川沿いに停泊していた船で暮す人達を、橋の上から、市電の中から、あるいは川に添って歩きながら…、飽きずに眺めていた幼い頃のぼんやりした記憶がある。彼ら家族は横浜港で働いていたのだろうか。水上生活者を乗せた船がひっきりなしに川を行き来し、船上で洗濯物を干す母親や、干物を七輪で焼くおばあちゃん、甲板の上を走り回る同じような年頃の子供達と手を振り合ったり…。 ゆらゆらと漂う不安定な生活臭も子供心に印象に残ってはいるが、何よりも流動性のあるコンパクトな暮らしがうらやましく、いつかこんな暮らしがしたいと夢見たものだ。 カナダやオランダで明るくお洒落なハウスボートを見ると、幼児体験のイメージと重なり合い、楽しい思いにとらわれる。


参考資料
realestate.msn.com/article.aspx?cp-documentid=13107835
www.houseboatsbuyterry.com/living-on-a-houseboat.htm
cooperjacobs.com/seattle-houseboats
www.frontdoor.com/houses/whats-it-really-like-to-live-in-a-houseboat


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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