海外トピックス

2016/12/6

vol.311 なぜ?なぜ?なぜ?のアメリカ人

アメリカ人が茶道の稽古をする時はとりわけ受け止め方に差が出るようだ(イリノイ州シカゴ市)
アメリカ人が茶道の稽古をする時はとりわけ受け止め方に差が出るようだ(イリノイ州シカゴ市)
大勢の生徒達から「なぜ?」「なぜ?」の質問を受ける課題について講評中(テネシー州アローモント工芸学校)
大勢の生徒達から「なぜ?」「なぜ?」の質問を受ける課題について講評中(テネシー州アローモント工芸学校)
アメリカの多くの庭はこれでもか!と、植物を所狭しと植える。控えめに抑えた日本の庭とは対照的だ(イリノイ州シカゴ市)
アメリカの多くの庭はこれでもか!と、植物を所狭しと植える。控えめに抑えた日本の庭とは対照的だ(イリノイ州シカゴ市)
どんな時でも多くの質問が飛び交う(ハワイ州ホノルル市)
どんな時でも多くの質問が飛び交う(ハワイ州ホノルル市)
なぜ?が飛び交い、のびのびと自由なアンヌリーススクールの生徒達(カリフォルニア州ラグナビーチ市)
なぜ?が飛び交い、のびのびと自由なアンヌリーススクールの生徒達(カリフォルニア州ラグナビーチ市)
小さな庭でも芝生は大切に育てるアメリカ人の家(カリフォルニア州ラグナビーチ市)
小さな庭でも芝生は大切に育てるアメリカ人の家(カリフォルニア州ラグナビーチ市)
辛抱強く子供の「なぜ?」に答えるお父さん(ハワイ州ホノルル市)
辛抱強く子供の「なぜ?」に答えるお父さん(ハワイ州ホノルル市)

 アメリカ人は子供っぽいのだろうか?すぐに「なぜ?」と問いかける。そして理由がわかると納得する。大人、子供にかかわらず「腑に落ちる」のが大好きである。

 日本人の感覚だと、「そういう事だから。」「そうなってきているのだから。」と決めつけられると、納得はせずとも「ま、そうかー。」と飲み込んでしまう。先生や目上の人に「どうしてですか?」とは聞きにくい状況も多々ある。

 しかし、アメリカ人は小さな子供でさえ親や先生に「どうしてなの?」と説明を求める。それに対して大人は実に辛抱強く子供に対応するのに驚く。

日本を知るアメリカ人の多くが「安全、清潔、穏やか」というが

 日本は次回のオリンピック開催地ということもあり、外国人観光客の訪問が増えているときく。日本へビジネスで訪れる外国人も多いし、英会話に力を入れている学校も増えているらしい。日本で英語を教えたことのあるアメリカ人の知り合いが周囲に大変多く、彼らは一様に「日本は安全で清潔、穏やかで美しい所だ。」とお褒めにあずかり、うれしい。

 しかし、日本語の壁は厚いようで、日本文化の研究者でない限りはそれほど深く日本人の生活に入りこめない様子。同様に日本人にとっても、外人をどう取り扱ってよいか迷う場合も少なくないと思う。

 アジア人に対しては顔も文化もそれ程違和感がなく向かい合える気がするが、西洋人に対してはおもわず腰が引けてしまうのを否めない。

外国語が喋れるから国際人…ではない

 ところで、英語やスペイン語が喋れるから、あるいは外国で生まれたり住んだ経験があるから「国際的」と考える人もいるが、それは思い違いのような気がする。

 まず自分の国、すなわち日本の歴史や文化をまず把握する事が基本であろう。そしてしっかりとした自分の基盤に立って、他の国の文化や伝統や歴史を受け入れてはじめて国際的な理解が開けてくるのではあるまいか。

 つまり腰がどっしりと座っていないと視点が定まらず、従って価値観がぼやけたりふらふら動いてしまったり…、曖昧になる。同じ地球に住む人間でも、長い歴史や環境の違いを経て物事に対する理解の仕方が違ってくるのだから、どちらが正しいと黒白を決め付けられない部分が沢山あるように思う。

「こいつはレモンだ」は、いい意味?悪い意味?

 あれっ?と感じた事がいくつかあった。

 例えばアメリカでは車や家電製品などを購入してたまたま故障が多いのに当たった時、「あーあ、この車はレモンだよ、、、。」と否定的な意味合いにレモンは使われる。しかし、著者はレモンの色も形も香りも大好きである。だからもしも「あなたはレモンのようですね。」と褒め言葉としてアメリカ人に言ったら、相手はどうとっていいかわからず困惑するに違いない。

 機械や車に悪いのが当たってどうしてレモンか。レモンは酸っぱいというところから来ているようだ。それにしては彼らはレモネードやレモンパイが大好きだが…。

「苔のむすまで…」はアメリカ人には?

 また、苔も日本とアメリカとでは反対の意味の表現となる。「苔のむすまで…」という言葉は日本の国歌に歌われるように、小さな石が時がたって頑丈な岩になりさらに苔が生えるほどに、平安が千代に八千代に末永く続きますように、という祈りの唄で、苔が生えるのはよい兆候らしい。

 ところがアメリカでは、「動く石には苔が生えない。」ということわざがある。石はもしも長い時間同じ場所に停滞しているとだんだんに苔が生えてきてしまう。だから積極的なアメリカ人としては、常に動いて前進した方がよいという意味で、苔が生える状況に否定的だ。

 日本では木々が天蓋となり苔に影を落として楚々とした緑には静謐な美がある。一方、アメリカでは、苔よりも日光が豊かに当たって育つ鮮やかな緑の芝生に軍配があがる。これらは単に同じ言葉でも社会によって違う解釈が成り立つ場合もあるという例である。

 違う文化を持っていても、同じ地球人として外国人に対して構えることなく気持ちを大きく持って受け入れられないものだろうか。

日本についての「なぜ?」に答えられますか?

 アメリカ人だったらきっと不思議に思う日本のしきたりや日本人に対する「なぜ?」をいくつか投げかけてみよう。

 例えば、なぜ日本人は靴を脱いで室内にあがるのか? なぜ話すときなど目と目をがっちりと合わさないようにするのか? なぜ日本人は電話で相手に見えないのに頭を下げるのか? なぜ日本は(諸外国に比べて)安全なのか? なぜ深夜車も通らないのに信号のある交差点で青信号に変わるまで待つのか? なぜ一人では静かなのに団体となると日本人はお行儀が悪くなるのか? なぜ穏やかな日本人なのに残虐な歴史が? なぜ大のおとなが漫画を好み電車の中で読みふけるのか? なぜ病院や寺社、オープンハウスでもスリッパを他人と共有するのか?等々。

 「なぜ?」という疑問を素直に受け取って答えを考えてみるのも面白いのではなかろうか。そして理由を外国人に説明してみよう。日本の文化や社会や歴史を自分が知るきっかけにもなろう。

 なぜ?の疑問に「黙りなさい!問答無用。」と切り捨て御免の社会程恐ろしいものはない。


Akemi Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com


明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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