インド洋に浮かぶ小島、モーリシャス共和国。東京都とほぼ同じ大きさで、人口約130万人の小国。ヨーロッパからのバカンス客が多く訪れるビーチリゾートとして知られている。地理的にはアフリカに属していながら、政情も安定しており、治安も良く、2020年の世界銀行の「ビジネスのし易さ」ランキングでは世界で13位につけており(日本は29位)、海外からの投資を積極的に受け入れている。中でもモーリシャス経済開発庁(EDB)は2019年8月、東京に日本事務所を開設、日本の個人・企業の投資の誘致に積極的だ。
不動産投資を促進するプログラム
モーリシャスへの投資を誘致するの流れの中で、海外からの不動産投資を受け入れる仕組みとして、2002年「統合リゾートスキームIRS (Integrated Resort Scheme)」が導入された。それまで非現地人がモーリシャスに不動産を購入することはできなかったが、このスキームにより、外国人・外国企業による不動産購入が可能となった。ただし対象となる不動産は国がIRS物件と認定した物件のみ、大きさが1.25エーカー以下、最低購入価格が50万ドル (約5400万円)以上の高級ヴィラに限られている。
外国人がIRSの不動産を購入すると、その不動産を所有している限り、モーリシャスの在住許可も付与される。よって、非就労者・退職者でもIRS物件を購入すればモーリシャスに在住できるのが魅力となっている。購入者には定住する人、年に数ヶ月別荘として暮らす人、賃貸として貸す人など様々な人がいる。
初めての外国人向け高級ヴィラ
モーリシャスで初めてのIRS物件として登場したのが、島南西部のタマラン(Tamarin)にあるタマリナ・ゴルフ・エステート・アンド・ビーチ・クラブ(Tamarina Golf Estate and Beach Club)。モーリシャスを代表するゲイテッドコミュニティーのひとつだ。206ヘクタールの広さを誇り、入り口には複数の警備員が24時間駐在、18ホールのゴルフ場の中に100件余りの高級ヴィラが点在している。
まず特筆すべきはこのゴルフ場。ここは世界の名門ゴルフコースの設計&デザインを数多く手掛けているロドニー・ライトによる設計。元々ある自然と地形を生かしたゴルフコースである。各住戸には少なくとも1台のゴルフカートがついており、住人はゴルフカートで敷地内を移動できる。
敷地内に点在するヴィラはそれぞれデザインや大きさは異なるが、バリ風アジアンリゾートのスタイルで統一されている。増改築の際も色・スタイルなどの規定を守ることが規則となっているため、全体としての調和が保たれている。さらに敷地内にはビーチに面するホテルも併設されており、住民はホテルのレストラン、スパの設備を利用できる。その後いくつものIRS物件が建設されたが、タマリナ・ゴルフ・エステート・アンド・ビーチ・クラブは今でもモーリシャスのIRSの老舗として外国人投資家だけでなく、モーリシャス人の富裕層にも人気がある。
多様な不動産投資が可能に
その後、IRSの成功を受け、「不動産スキームRES (Real Estate Scheme)」や「不動産開発スキームPDS (Property Development Scheme) 」など、海外からの不動産投資をさらに促進するための仕組みが導入された。細かい条件は異なるが、いずれも一定条件を満たす物件に関して、外国人・外国企業の不動産購入を許可するものである。
さらに2016年には3階建て以上のマンションで金額が600万モーリシャスルピー(約1800万円)以上の物件に関して、事前にモーリシャス投資庁の許可を得れば外国人・外国企業でも購入することが可能になった。これにより、外国人・外国企業の不動産投資に対する門戸はさらに開かれ、購入できる物件が高級ヴィラだけではなくなった。モーリシャスは日本ではまだあまり知られておらず、日本からの直行便もないが、それだけに日本人にとっては不動産投資の穴場と言えるかもしれない。
※為替レートは2020年1月現在
◆タマリナ・ゴルフ&スパ・ブティックホテル
(http://www.tamarina.mu/index.html)
永井葉子
ライター・ビジネスファシリテーター。2014年よりモーリシャス在住。外資系IT企業のSE、多国籍コンサルティング・ファーム(パリ事務所)のコンサルタントを経て独立。日仏英語で業務可能。各種メディアにおける記事執筆、市場調査・分析、商談随行、翻訳・通訳などを行う。「海外書き人クラブ」所属。
http://www.japan-mauritius.com