海外トピックス

2023/2/1

vol.401 まるで動くマンション!いまRV市場が熱い【アメリカ】

 ある時は湖畔で、ある時は森林で…自分のお気に入りの場所で暮らすノマド生活。今、アメリカではこんな生活を楽しむRVer(キャンピングカーを楽しむ人)が増えている。 

アメリカのRV専用キャンピング場。電気や給水なども設備が整っている

 アウトドア大国であるアメリカで、最近かなり売り上げを伸ばしているRV(キャンピングカー)。RV業界団体であるRVIA(RV Industry Association)によると、コロナ禍以降幅広い年代でブームになり、2021年度の売り上げは前年度の約4割増しで約60万台。現在1,120万世帯以上が何らかのRVを所有していて、さらに約1000万世帯がこの先5年以内にRVの購入を検討しているという。

 ではなぜそれほど多くの人々にRVが注目されるようになったのか。それはパンデミック以降のリモートワークの浸透と、インフレの影響で家賃等が値上がりしたこと、そして何よりもRVの進化が挙げられる。RVといえどもその設備の充実ぶりはまるでマンション!今回はそんなアメリカのRV事情について紹介しよう。

●家電も家具もなんでも揃う!豪邸RV

 アメリカのRVには、ワゴンやバスのような車体一体型の「モーターハウス」タイプと、トラック等で牽引する「キャンピングトレーラー」タイプの2種類がある。その中でも、居住スペースが広く、設備が充実している最大級クラスが、大型バスの「クラスA」(モーターハウスタイプ)と「フィフスホイールトレーラー」(キャンピングトレーラータイプ)だ。どちらも居住スペースが大きく最大8~10名程度まで乗ることができ、必要な家電や家具は装備されているので何不自由なく生活ができるのだ。

モーターハウス「クラスA」。停車中に車内を広げるスライドアウト部分があるため、内部は想像以上に広い
キャンピングトレーラー「フィフスホイールトレーラー」はトラックで牽引できる。この大きさでも普通免許で運転可能

 車内にはリビングルーム、キッチン・ダイニング、ベッドルームの他、子供部屋やゲストスペースがあるものも。アウトドア好きの人なら、車内後方にボートやバイクと言ったアウトドア用トイを収納できるトイトレーラータイプを選ぶという選択肢もある。室内の構成や内装などは予算に合わせて選ぶことができる。

RV車内のリビングルームはもはやマンションの一室。ソファはリクライニング式のものも
キッチン家電はフル装備。冷蔵庫、食洗器、電子レンジなど生活に必要なものが揃っている
ベッドルームも広々。この他に2段ベッドや収納式ベッドを完備している車種もある
トイレや洗面所も2つ以上ある車種が多い。トイレは外から出入りできる場合も

 RVで生活をしている人やリタイア世代で長期旅行をしている人に人気のこの最上級モデル。価格は新車のモーターハウスだと2,000万円以上のものが多いが、トレーラータイプであれば1,000万円以下のものも。予算に合わせて、車内だけでなく車外アウトドア用キッチンやテレビを搭載するなどのアレンジを加えたり、屋根の上にソーラーパネルを設置する人もいるようだ。RVに移住して完全に自宅代わりにする人もいれば、別荘のように利用するために購入している人も多い。

●売れ筋はコンパクトなファミリー向けRV

 前述の最上級モデルよりは気軽に買えて、ファミリーに人気のタイプが、モーターハウスタイプの中型トラック「クラスB+」や「クラスC」。牽引型のキャンピングトレーラーでは「トラベルトレイラー」だ。車種によって大きさは異なるが、だいたい1家族を想定したコンパクトのものが多い。

中型モーターハウス「クラスB+」。比較的小回りが効くので家族でのロードトリップに人気
中型トレイラー「トラベルトレイラー」。旅先でトレーラーを離せばトラックでの行動が可能

 このファミリークラスは、サイズや種類が豊富なので、目的や予算に合わせて様々なタイプが選べる。モーターハウスの新車だと1,000万円以上のものが多いが、小型のトレーラータイプであれば中古車なら100万円台から選べる。家電はコンパクトで、中には収納式のベッドや2段ベッドを設置しているものも。運転席の上の空間など、スペースを有効活用できるような工夫も凝らされているので外観以上に内部は広いと感じるはずだ。

運転席の上のスペースは寝室として使うことも。大人2人が寝られる
収納式のベッドを壁に仕舞えば、リビングスペースとして利用できる
キッチン家電はコンパクトながらもすべて揃っていて、インテリアもオシャレ
一見リビングの収納スペースに見える場所は2段ベッドとして利用できる

●ノマドライフを楽しむRVerが増加中

 現在RVを中心に生活をしている人の数は100万人以上いて、その数は増加傾向にある。それもそのはず、アメリカにはRV用のキャンプ場がたくさんあるので、旅先で滞在場所に困ることがない。普通免許で誰もが運転でき、道路の道幅も広いため運転がしやすいのもポイントだ。またホームスクーリング制度が充実しているため、ファミリー世代にも浸透しやすい。さらに、RVのレンタルやRVを使ったグランピング施設が増えたことで、RV購入前にもRV体験ができる機会が多いこともブームを後押ししているだろう。

 より多くの人がRVに興味を持つことで、市場全体が盛り上がり、さらに車体も進化していく…。今まさに勢いに乗っているRVの世界、今後しばらく目が離せそうにない。

手持ちのRVを使わない時だけレンタルできるサービスも。旅行者でも簡単にレンタルができるので、ぜひ機会があったらアメリカのRVを体験して欲しい

石川千絵(いしかわ・ちえ)
米国在住ライター。経済・法律専門誌の編集者を経て、2002年よりフリーライターとして、女性誌、情報誌、スポーツ誌等で執筆。17年よりノースカロライナ州に移住。現在はアウトドアや米国文化紹介記事を執筆中。海外書き人クラブ会員。

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