
2024年12月、タクシーアプリ「GO」、米Alphabet傘下の「Waymo 」、そしてタクシー会社大手の「日本交通」は、2025年から東京でロボタクシーの自動運転技術テストを開始すると発表しました。
ロボタクシーとは、スマホのアプリでタクシーを呼ぶと、無人の車両が迎えに来てくれて、完全自動運転で行きたいところへ連れて行ってくれる。支払いはあらかじめ登録したクレジットカードで済ませる。そんなサービスです。
2025年1月現在、Waymo社が展開するWaymo Oneはアメリカ国内ではアリゾナ州フェニックス、カリフォルニア州サンフランシスコ、同ロサンゼルスでサービスを提供しています。近い将来にテキサス州オースティン、ジョージア州アトランタ、そしてフロリダ州マイアミに展開する予定とのこと。
つまり、ロボタクシーはアメリカでもまだごく一部の都市でしか実現していない近未来的な新しい移動手段です。東京がそれに続くとなれば、初の海外進出ケースになります。
東京でのテストはまず日本交通の乗務員がWaymo Oneの車両を運転する方法で行われます。実際に自動運転での運用が開始され、一般が利用できるようになるまでにはまだかなりの年月が必要になるでしょう。最終的に日本での導入が実現しない可能性もゼロではありません。

先行したアメリカの年でロボタクシーを体験するには、現在はサンフランシスコが最も日本人にとって便利かつ実用的でしょう。ロサンゼルスは一部地域での運用に限られていますし、フェニックスは日本からの直行便がありません。オースティン、アトランタ、マイアミも同様です。
濃霧に覆われ、急坂が連なり、狭く渋滞したサンフランシスコでの成功事例
現在、サンフランシスコ市内を数ブロックでも歩くと、必ずといってもよいほどWaymo Oneの車両を見かけるようにまでなりました。屋根にサイレンのようなセンサーをつけ、そして運転席には誰も座っていない車が市内のあちこちを走り回っています。
サンフランシスコ交通局の発表によると、Waymo Oneの送迎数は2024年1月の77,000件が同年8月には312,000件にまで急上昇したそうです。

ライバルだったCruise(GM)がロボタクシーから撤退を表明し、現在はWaymo Oneのひとり勝ちといった状況ですが、アマゾン子会社のZooxも2024年11月からサンフランシスコを含む複数都市でテスト運用を開始しています。

サンフランシスコは急坂が多く、市内はとても混雑しています。濃霧がよく発生することでも知られています。自動車を運転するに適しているとは言い難い街です。
そのためか、アメリカの都市には珍しく、ケーブルカー、バス、地下鉄といった公共交通機関がずっと以前から発達していました。2010年代前半にはライドシェア大手のUberと Lyftが相次いで運用を始めた都市でもあります。
さらに歴史を振り返ってみても、サンフランシスコは19世紀にはゴールドラッシュで発展し、1960年代にはカウンターカルチャー運動の発信地となり、20世紀後半にはテクノロジー革新の中心地になりました。常に新しいものやアイデアを取り入れることに積極的な土地柄であることも、ロボタクシーがこの地に広まった大きな要因なのかもしれません。
Waymo Oneの利用方法
Waymo Oneの利用を開始するにあたっては、まずアプリを自分のスマートフォンにダウンロードすることから始まります。会員アカウントを作成し、使用するクレジットカードを登録すると、事前準備は完了です。
アプリを起動し、乗車位置と行き先を指定して検索すると、配車可能な車両の予定到着時刻と移動時間、そして運賃が表示されます。
乗車位置に到着した車のドアはロックされていますので、スマホのアプリで解除します。車内に乗り込み、パネルのスタートボタンを押すと、いよいよ車は走り出します。

ロボタクシーの運転技術や乗り心地の感想は人さまざまでしょうが、少なくとも自分で運転するよりはずっと上手いな、があまり腕の良いドライバーではない私の率直な感想です。
サンフランシスコに負けず劣らず混雑している日本の都市交通にも十分対応できるのではないかと思います。むろん100%安全ということはないでしょうが、それは人が運転するタクシーでも同じなはず。百聞は一見に如かず。サンフランシスコを訪れる機会があれば、ロボタクシーを体験してみてはいかがでしょう。

角谷 剛
文・写真/角谷剛。日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。