


住宅情報化推進協議会(東京都千代田区、会長:田中順一郎氏・三井不動産(株)代表取締役会長)は8日、設立15周年を記念し、「情報化による豊かな生活、活力ある社会を目指して」をテーマとした国際会議を開催した。
同協議会は、1988年8月に「日本社会の情報化への潮流の中でゆとりある住まいと暮らしを実現していく」(設立趣意書)ため、エレクトロニクス、通信、住宅関連業界に加え、エネルギー、放送、金融、各種工事等多岐にわたる業界各社によって設立された。
15年の間に、ブロードバンド環境の普及や携帯電話などを使用したインターネット利用の広がり、地上デジタル放送の開始など、「住宅の情報化」は大きく進展している。しかし、同協議会では、住宅の情報化や情報インフラの整備だけが目標ではなく、企業や公的施設などとのネットワークをひろげていくことによって国民一人ひとりの生活を豊かにすると共に、活力ある社会を創り上げる事が必要であり、「15年たって、ようやくその事を議論できるようになった(同協議会運営幹事会幹事長:寺田康和氏)」という。
記念講演は、『未来の住宅と情報化』と題し、ソウルビジネスイノベーショングループ、バイスプレジデントでスウェーデン王立工科大学共同研究者でもあるリンダ・ブラッドレイ氏が、未来の情報化住宅に必要なテクノロジーや諸外国における住宅情報化の実例を踏まえ、今後の情報化推進の要点について提言。
未来学研究所(スウェーデン・ストックホルム)のアンナ・ハードリッカ氏は『未来とつなぐ、家庭をつなぐ』と題して、ブロードバンドの普及率が世界一であるスウェーデンにおけるサービスの現状と、日常生活の中で有用であり、安心して使用できるブロードバンドサービスの普及のために、住宅メーカーとインターネットサービス業者が直面した課題と克服方法について講演。また、「未来の住宅と技術」プロジェクトの一環として2003年6月に行なった日本での調査結果をふまえて、住宅、社会の情報化のための提言を行なった。
続いて、オンラインを活用した企業広報支援サービスを展開する(株)ニューズ・ツー・ユー(東京都千代田区)の代表取締役である神原弥奈子氏による『IT時代のコミュニケーションとライフスタイル』。受動一方であったITコミュニケーションが、Eメールやチャットなど双方向に変化してきている現在、セキュリティに関する基本知識の必要性が高まっているにもかかわらず、日本ではメディアリテラシーが遅れていると指摘。年齢に合わせた段階的ガイドラインが必要なのではないか、また、情報化進行の中で、誰がどこで何のために使うのか、といったユーザーの視点をフォローしていくことが大切であるとし、21世紀型サービスとしてITだけでなく、人が介在することで、雇用も生まれ、新しいサービスが生まれると語った。
最後に、まとめ役として登場した東京大学コンピューターサイエンス学部長の松下温氏は、「これまでは技術主体であり、今後はユーザーの視点からの意見を生かす時代。将来住宅としては、ICタグやユビキタス環境をどのように活用するか、また、住民各層のニーズはまちまちでありサービスは多様化するためインフラの共通整備も必要になってくる。それが、各ユーザーの『豊かな生活』につながる」としめくくった。