国土交通省は1日、8月31日開催の社会資本整備審議会建築分科会(分科会長:村上周三慶應義塾大学教授)において最終報告として取りまとめられ、大臣に提出された「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について」答申を公表した。
答申では、新築住宅の売り主等に対する、瑕疵担保責任履行の実効性を確保するための措置として、保険や供託、信託等を活用した仕組みについて、具体的な制度設計を進めるべきと指摘。特に、保険機能を活用する場合は、従来の住宅瑕疵に係る保険と比べ、リスクが異なるなど制度運営主体が過大な負担を追うことも予想されるため、さらに制度の検討を進めていくべきとしている。これらの仕組みが円滑に運営されるための環境整備や、故意・重過失に起因する瑕疵による損害への対応、紛争処理体制の整備など、消費者保護のための仕組みを構築するとともに、制度の検討を進め、新築住宅の売り主等に対して、相応の資力確保措置を義務付ける必要があるとした。
また、建築士制度の抜本的な見直しを行なうべく、建築士資格試験の受験資格である学歴要件について、必要な知識を修得可能な科目を履行しているか否かにより判断することにするなどのほか、既存建築士に一定期間ごとの講習受講を義務付け、効果測定のための修了考査を実施、新たな建築技術への対応や建築基準法令等の改正への対応など、必要な能力の維持向上を図るための具体的措置を講じる必要があるとしている。
一方、建築行政における監督体制・審査体制の強化などについては、国・都道府県・特定行政庁での整備に向けたプログラムを1年以内に策定・公表すること、その実効性を確保するため、特定行政庁において建築行政職員数や建築主事数など執行体制を国がモニタリングし、その内容を公開することなどを盛り込んでいる。このほか、小規模木造住宅の構造耐力等に関する規定の審査を省略する建築確認・検査の特例制度の見直し、建築関連情報の管理・提供体制の整備、構造計算書に係る電子認証システムの整備などを挙げている。