不動産ニュース / その他

2009/3/24

平成21年地価公示に業界・各社がコメント

 国土交通省が23日に発表した「2009年地価公示」結果について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。

【業界団体】
(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏
(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏
(社)日本ビルヂング協会連合会 会長 高木丈太郎氏
(社)不動産協会 理事長 岩沙弘道氏(三井不動産(株)代表取締役社長)

【各社】
東京建物(株) 取締役社長 畑中 誠氏
三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司氏
(順序不同)


◆(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏

 平成21年の地価公示は、全国平均で住宅地・商業地を含めて全ての用途で下落した。前回と比較して三大都市圏平均では住宅地・商業地とも上昇から下落に転じ、地方圏を上回る下落率を示すとともに、地方圏平均においても下落幅が拡大した。
 前回は、三大都市圏におけるブランド力の高い地域、高級住宅地、高度商業機能集積地区の上昇が地価を押し上げる要因となっていたが、世界的な金融危機の影響による日本経済の後退により、不動産市場の停滞、投資・融資等の資金調達環境の悪化、オフィス需要の減退等が生じ、今回のような極めて残念な結果となった。
 本会では、全国的な資産デフレの再発を懸念しており、その対応として不動産取引市場の健全な発達を促すために、昨年来、土地住宅税制や一般消費者及び不動産事業者向け融資に関する要望活動を行っている。こうした中、国土交通省より「住宅・不動産市場活性化のための緊急対策」が発表されたことは大いに歓迎するが、事態は予想以上に逼迫しており、現時点においても、不動産事業者向けの金融機関の融資姿勢に関する改善等について要望を継続している最中である。平成21年度より大幅に見直される予定である住宅ローン減税の経済効果を最大限に引き出すためにも関係各所への理解を求めていきたい。
 また、本会では、不動産の売買における適正な消費者保護と流動性を高めるための不動産取引のあり方を検討するため、「不動産取引制度に関する研究会」(座長:川口有一郎早稲田大学大学院教授)を設置、活動している。ここでは不動産取引の活発化を促進する法改正を検討するとともに、公売物件等の公的物件及び任意売却も含めて早期確実、効率的な取引が行える場である「不動産取引所」について、具体的な検討を行っているところであり、研究会の報告を踏まえて不動産流通活性化に寄与する提言を行っていく予定である。
 今後は、不動産流通市場の活性化等を検討している国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会産業部会不動産部会の取りまとめ報告等の結果を踏まえつつ、経済状況の変化に対応し、関連機関と連携しながら各施策の迅速な実現を図るための活動を各方面で展開していく考えである。


◆(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏

 三大都市圏では、前回まで住宅地・商業地ともに平均で地価が上昇していたが、今回は地方圏を上回る下落となり、地方圏でも下落幅が拡大するなど、景気悪化の深刻さを浮き彫りにした。不動産の需要を喚起することが重要であり、そのためにも、21年度税制改正大綱で示された内容を確実に実行するとともに、今後も必要な経済対策を大胆に、かつ、タイミングを逃すことなく適時に実施することを願うものである。


◆(社)日本ビルヂング協会連合会 会長 高木丈太郎氏

 主要都市の商業地については、収益還元的な地価形成が定着してきており、最近の実体経済の悪化を反映した今回の地価下落も、想定の範囲内のものと受け止めている。
 ビル業界としては、地価の動向等に一喜一憂することなく、顧客満足度の高いビル経営を目指し、テナント戦略に万全を期すことによって、当面する難局を打開していくことが必要と考えている。


◆(社)不動産協会 理事長 岩沙弘道氏(三井不動産(株)代表取締役社長)

 今回発表された公示地価では、全国平均で住宅地が▲3.2%、商業地が▲4.7%となり、ともに上昇から下落に転じ、全ての用途で下落となった。三大都市圏においては、住宅地が▲3.5%、商業地が▲5.4%と顕著な下落となり、地方圏においては、これまで下落幅が縮小していたが、今回は下落幅が拡大に転じており、全国的な地価下落傾向が表れる結果となった。
 世界同時不況により、我が国経済はとりわけ厳しい状況にあり、実体経済の悪化は深刻さを増している、こうした中、我が国の不動産市場は、オフィスビル市場については、歴史的に見れば未だ安定的な水準にあると言えるが、企業業績の急速な悪化が今後空室率や賃料水準に大きな影響を及ぼす懸念がある。分譲マンションについては、今年に入り、モデルルームへの来場者の増加や在庫の減少など、市場回復の兆しが見えるものの、依然として厳しい状況にある。Jリートをはじめとする不動産投資市場は、国際金融資本市場の混乱の影響を直接受け、依然として低迷が続いている。
 このような状況のもと、我が国が今後も持続的な成長を遂げるためには、不動産業が内需関連産業の主要分野として成長のエンジンとなり、日本経済を強力に牽引することが必要である、特に、経済波及効果が大きい住宅取得の促進を図る一層の政策的支援を行うとともに、都市開発の推進や個人の資産形成を支えているJリート市場の再生を図ることが不可欠である。現在が「経済有事」ともいうべき非常事態であるとの認識のもと、平時の政策の延長線上ではなく、思い切った政策が講じられることを強く期待する。


◆東京建物(株) 取締役社長 畑中 誠氏

 サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱、世界経済の減速は、日本経済に大きく影を落とし、企業業績の悪化や消費マインドの冷え込みなど国内景気は極めて厳しい局面にある。このような状況下、不動産市場では、分譲マンションの販売不振、資金調達環境の悪化、グローバルな資金の流出による不動産投資市場の縮小などの影響で、取引が大幅に減少し、地価は全国的に下落した。
 一方、優良な住宅・オフィス、希少性の高い不動産に対する潜在需要は依然として底堅いものがある。
 今後、安定した地価形成のためには、不動産市場の活性化による内需主導型の経済成長策が不可欠である。そのためには、早期に金融安定化を図るとともに、引き続き官民一体となった都市・地域再生による魅力あるまちづくりの推進や、不動産市場の安定的な発展に向けた規制緩和、税制緩和、投資環境の整備などを継続して実施していく必要がある。


◆三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司氏

 全国平均では、商業地・住宅地ともに公示地価は3年ぶりに下落に転じた。実体経済の急激な悪化により、特に年の後半にかけては、ほぼ全ての地点において下落幅が拡大した。
 金融市場の信用収縮により不動産投資市場から投資資金が大量に流出している。企業は業績悪化の中、投資抑制や人件費削減の動きを加速させており、オフィスマーケットは予断を許さない状況にある。分譲マンション市場も、依然として厳しい市況ではあるが、年明け以降は物件価格の調整が一定程度進んだことや与党の税制改正大綱に住宅ローン減税の拡充が盛り込まれたこと、金利が低水準で推移していることなどを背景に、モデルルームへの来場者数が増加していることや分譲マンションの在庫数が減少傾向にあるなど、足下では回復の兆しも見え始めている。
 当社では丸の内を始めとして、再開発事業を通じた都市の付加価値向上に努めていくが、不動産業界全体が中長期的な視点で成長を図るためにはJREITを始めとする不動産投資市場の活性化に資する環境整備や税制が必要となることに加え、実体経済回復を目指した景気刺激策の速やかな実施に向けた政策運営に期待したい。

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