新年度を迎えた1日、不動産各社においても新たに不動産業界の一員となる新入社員を迎えるべく、入社式が執り行なわれた。以下、各社入社式での社長挨拶の要旨。
■三井不動産(株)代表取締役社長 岩沙弘道氏
■三菱地所(株)取締役社長 木村惠司氏
■東京建物(株)代表取締役社長 畑中 誠氏
■(株)大京代表執行役社長・グループCEO 田代正明氏
■(株)長谷工コーポレーション代表取締役社長 大栗育夫氏
■三井不動産販売(株)代表取締役社長 佐藤 実氏
■住友不動産販売(株)代表取締役社長 大橋正義氏
(順序不同)
皆さん、ご入社、おめでとうございます。人生の門出となるこの日に、私の思うところをお話したいと思います。
世界経済は同時不況の最悪期を乗り越え回復基調にありますが、EUの一部での財政不安をはじめ懸念要因を抱えており、先行きは楽観できません。日本経済も雇用不安、大きな需給ギャップ、デフレの継続など、不透明な要素が多く、景気回復は緩やかなものにとどまっています。一方、中国をはじめとする新興国は力強い成長を遂げており、今後の世界経済を語る上で、新興国の動向は欠かすことができないものとなりました。
こうした情勢の中、日本経済の最大の課題は成長戦略の構築であり、その大きな柱の一つが「住宅と都市再生」です。2010年度の税制改正では、住宅取得資金に対する贈与税の非課税枠の大幅拡大など住宅取得を促進させる税制が盛り込まれました。住宅を通じた内需拡大への期待は大きいということです。都市再生も、住宅と同様、政府の新たな成長戦略の中で経済成長の牽引役に位置付けられました。日本が経済成長を遂げるためには、グローバルな都市間競争に勝ち、世界中の人々が「働きたい、住みたい、訪れたい」と思う魅力的な都市づくりが必要です。また、環境の視点から、都市構造を「低炭素型」「循環型」に変えていくことも重要となっています。
不動産業界は、これまでもこの分野で大きな役割を果たしてきましたが、「新しい国づくり」へ向け、我々に期待されるものは大きく責任も重大です。
三井不動産グループは、「&マーク」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連携」と、「進化と価値創造」を経営理念と定め、都市開発において地球環境との共生を目指す環境コミュニケーションワード「& EARTH(アンド・アース)」を策定しています。こうしたビジョンを実現するため、長期経営計画「新チャレンジ・プラン2016」を推進しており、幅広い「くらし」のニーズへ応えること、都市再生の進化・発展、環境への取組強化等を進めています。また、これらに加えて、成長著しい東アジア、特に中国での新規事業に着手するなど、新たな成長戦略の確立を目指しています。グループ内の意識改革・人材の育成を進めながら、2016年には、グローバルなフィールドでの「不動産ソリューション・パートナー」へ進化したいと思います。
ここから、皆さんが三井不動産グループの一員として活躍するために、心掛けていただきたい点をお話します。
まずは、「自立した個人」になるということです。今後は、「自立した個人」が、「会社のビジョン」に「自らの志」を重ね合わせて「自己実現を果たしていく」ことが重要になります。
二つ目は、常に「ポジティブな発想」で臨むということです。不透明な状況下ではありますが、ポジティブ思考で「問題の本質的な部分」を徹底して考え、打開策を見出し、行動に移すことが大切です。
三つ目は、「自立した個人」として「ポジティブな発想」で臨むためには、「心と身体の健康」が必要です。常に心と体の健康を保てるよう、十分な自己管理を心掛けてください。
四つ目は、「社会人としてのコモンセンスを持つ」ということです。「やって良いことと、悪いことを見極める」、「おかしいと思うことは正す」といった、ごく当たり前の常識が重要です。
その次は、「幅広い視野を持つ」ということです。自らの可能性を伸ばしていくためには、「好奇心」、「ネットワーク力」、「感性」が必要です。社内外、世代を問わず、「人との交流」、「出会い」を大切にし、人間の幅を広げていただきたいと思います。また、「幅広い視野」と関連しますが、グローバルな視野とセンスは、今後、必要不可欠なものとなりますので、グローバルな視点から「アンテナ」を張り、自己研鑚を絶えず心掛けていただきたいと思います。
最後は、コンプライアンスの重要性です。コンプライアンスは、皆さんの行動の基本指針にしてください。法律・規則は守るべき最低のルールであり、その精神に反する行為も許されないことを肝に銘じていただきたいと思います。
私は、不動産業は社会的意義が大きく、人々に夢と感動を与えられる産業だと思っています。どうか、持てる力を存分に発揮し、自己研鑚を積んで、自らを成長させ充実した人生を送っていただきたいと思います。
・日本の経済の実態は、一部消費動向など回復の兆しも見え最悪期は脱したように思えるが、本格的な回復には至っていない。当社も先月に大幅な業績下方修正を行ったが、守りを固めるだけでなく次の成長へ向けて進んでいかなければならない。
・どんな仕事でも奥は深い。自分が会社全体を支えているということを認識し、手を抜かずに次の3つを大切にして欲しい。
(1)インテグリティ、コンプライアンス:社会やお客様に対し誠実な行動を心掛け、一層の信頼を得られるよう努力して欲しい。コンプライアンスは単に法律を守るという意味だけでなく、お客様や社会のニーズを捉え、応えていくことだという認識をもって欲しい。
(2)チームワーク、アズワンチーム:一人の力には限界がある。謙虚な心を忘れずに、仲間を信頼し思いやりながら連携し、周りの方が働きやすいような環境を創っていって欲しい。
(3)チャレンジ志向:当社は1984年の三菱一号館建築や1998年からの丸の内再構築など、チャレンジを続けてきた歴史がある。柔軟な発想を持ち、若い力でチャレンジを続けて欲しい。
・仕事を進めていく上では、時代や人のせいにするのではなく、自ら主体的に取り組む姿勢で臨んで欲しい。
皆さん入社おめでとうございます。
(一部省略)
日本経済や当不動産業界においても厳しい環境がしばらく続き、長期的には少子高齢化の中、低成長の時代に入ると言える。こうした厳しい時代だからこそ「変革の心」を常に持ち続け、真正面から問題に向かうことが肝要である。同時に、「お客様第一」の精神に立脚し、「顧客視点での事業展開」に真摯に対応していかなくてはならない。
当社は常に弛まぬ変革と挑戦を続けてきた歴史があり、その中で何物にも代えがたい「信頼」を勝ち得てきた。今後も、刻々変化し続ける市場のニーズを迅速・的確に把握し、過去の歴史に甘んじることなく、時代を先取りした事業推進を図ることで、当社の企業理念「信頼を未来へ」を体現する担い手となってもらいたい。
自分の可能性を伸ばす大きなチャンスを生かすためにも、次の4点、即ち、
第一に、「常に、初心忘れるべからず」
第二に、「謙虚な気持ちで、何事も基本に忠実に学ぶ」
第三に、「あらゆる人との『出会い』を大切にする」
第四に、「自分の責任で、心身の健康管理を怠らない」
を励行してほしい。
日本経済は着実に持ち直してきているものの、なお自律性は弱く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にあります。先行きについては、企業収益の改善により持ち直しが期待されますが、海外景気の下振れ懸念やデフレの影響など景気を下押しするリスクが、まだ残っています。
リーマン・ブラザーズの経営破綻以来、雇用不安や所得環境の厳しさを受けて消費マインドが低迷し、マンション供給が抑制を強いられたこともあり、2009年は全国のマンション発売戸数が17年ぶりに8万戸を割り込みました。一方、各社の在庫調整は進みつつあり、市場の需給バランスが大きく改善するなど底打ち感が出はじめ、マーケットは回復基調にあります。
当グループについても、マンション分譲事業の着実な進捗に加え、ストック事業の拡大・強化に向けた取り組みが順調に進展したことから、前期の連結業績は当初計画を上回る見通しとなりました。
大京グループの経営理念は、マンション分譲、マンション管理、不動産仲介、ビル管理などの各事業を通じ、「あらゆるライフステージに応える住まいとサービスを提供し、『住文化』の未来を創造していく」ことです。
つまり、マンションの開発、分譲に始まり、お客さまがご入居された後のマンション管理や住み替えのお手伝い、リフォーム、インテリア商品の販売など暮らしに関わる様々なサービス、さらにビル管理を通じて働く環境を良くするサービスを、高い品質で提供していこうということです。お客さまの視点で、お客さまから選ばれる最適な商品・サービスを創造し、提供していかなくてはなりません。
これには、部所や会社の枠を超えた活発なコミュニケーションが必要です。強い仲間意識、グループ意識を持ち、同じ会社の一員という気持ちで、切磋琢磨しながら成長していただきたいと思います。また、若く新しい観点で発想し、大京グループの「未来を創造」して下さい。
当グループは、業績の回復とその後の中長期的な経営基盤の強化を目指し、市場環境の変化に柔軟に対応できるビジネスモデルを追求します。ストック事業を安定的成長の柱と位置付け、その上でフロー事業の弾力的な展開を図り、さらに外部環境の変化を新たなビジネスチャンスと捉え、グループでの提供価値の連鎖(バリューチェーン)を高めることで、ストックとフローのバランスの取れた継続的な成長を目指していきます。
これらを実現させるために、「人財育成への投資」を強化していきます。人を大切にし、人を育て、良い会社、強いグループを築き上げていきたいと考えております。
過去にも何度となく発揮されてきた「やりきる」「やり遂げる」という大京のDNAをしっかり引き継ぎ、一日も早く強い組織の一員・戦力となり、今日から明日、明日から明後日と続く大京グループ躍進の原動力となって下さい。
そして、私たちは住まいや暮らしに関わる社会貢献度の高い仕事をしているのだという気概と、お客さまの生活をお預かりしているのだという責任感をしっかりと持ち、お客さまに対しては「カスタマーズ・サティスファクション=顧客満足」を超えた「カスタマーズ・ディライト=顧客感動」を感じていただけるような接し方を期待しています。
今後の皆さんの会社生活が実り多きものとなりますよう祈念し、お祝いの言葉といたします。
新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。
当社をとり巻く環境は、依然として厳しい状況ですが、厳しさは成長の好機であるとも考えられます。是非とも臆することなく、夢と希望を胸に秘めて、今の思いを忘れずに前向きに明るく社会人としてのスタートを切っていただきたいと思います。
長谷工グループは今年で創業73年になりますが、約40年前からマンション建設及びその周辺事業を中心に事業活動を行ってきた特色あるゼネコンです。これまでに累計約48万戸のマンションを建設してきました。この数は日本の分譲マンションストックの約1割に相当するものであり、マンションというひとつの居住形態を広く普及する役割を果たしてきました。同時に、常に業界に先駆けた技術開発を行い、広く普及させ、それをマンションの標準にさせるという時代の開拓者としての社会的役割を果たしてまいりました。現在は日本で初めてとなる長期優良住宅認定マンションを東西同時に2つのプロジェクトで取り組んでおります。その時代における新しいものに積極的に挑戦し結果を出してきた会社・グループのことを、新入社員の皆さんはまずはしっかり勉強して理解してください。そして自分の会社に自信とプライドを持っていただきたいと思います。
長谷工グループは「いい暮らしを、創る。住まいのオンリーワングループ」として、お客様に「安全・安心で快適な住まいの場を提供する」ことで社会に貢献しています。そしてこれからは「長谷工ブランド」として、それを確かなものにしていこうとしています。そのためには、営業、技術、管理などの各部門、グループ各社の求心力、連携が大切です。その源泉となるのが「人」です。人が働き、汗を流して初めていい「ものづくり」ができます。各部門、各人がそれぞれの役割を担い、土地情報の収集、企画・設計、施工、販売、管理まで一連の流れが繋がることで、お客様にいいものをお届けすることができます。
人は一人では何も出来ません。誰か一人が手を抜いてもうまくいかなくなります。一人ひとりが確実にその責任を果たしながら、お互いに協力し合うことが「長谷工のものづくり」なのです。
新入社員の皆さんも、早くこの一翼を担う人材となってください。職場の上司や先輩の良い面を学び、自分の会社を好きになってください。そこから成長が始まると思います。皆さんが一日も早く成長し活躍されることを期待しております。共に頑張りましょう。
皆さん、入社おめでとうございます。役職員を代表して皆さんを心から歓迎するとともに、お祝い申し上げます。
2010年という今、日本の社会は大変厳しく、決して明るい状況には無いということはご承知の通りです。その要因はさまざまありますが、将来に希望が持てないという悲観的ムードが蔓延しているという事が原因ではないでしょうか。
しかし、我が国には、経済成長の潜在的可能性は多いに有り、技術力・人的資源・金融資本があります。悲観的にならず、日本・日本の企業・自分の将来は明るいとPOSITIVEな発想でいて下さい。
当社の仕事は、大きく分けると不動産流通事業と駐車場事業ですが、いうまでもなく不動産は国富のかなりの割合を占める社会資本です。
企業にとっての不動産の有効活用は経営戦略そのものであり、個人にとっての住み替えは一生の大事であります。そのお手伝いを通じてお客様の人生に関わるということは、責任も重い極めて社会的に意義があり、やりがいのある仕事です。
そして、既に人口減少社会の我が国では、ストックとしての住宅を個人の様々なライフスタイル実現のために循環させる流通の時代となり、不動産事業の中でも最も成長拡大が期待される分野であります。駐車場事業についても、環境問題がクローズアップされる中で、その重要性は一層増大してくるものと思われます。
さて、皆さんは本日から社会人となり、当社の一員になる訳ですが、会社とは「生活の糧を得る場」であり、生活時間の多くの時間を過ごす場です。充実した会社生活とは、自分の人生の充実と重なります。
当社で自分の人生を充実させるために必要なことは、「意欲」を持ち、「行動する」ことです。成長し続ける自分で有りたいという「意欲」、課題・目標に対して、何としても目標を達成するという「意欲」を持って下さい。また、お客様をより満足させるためにはどうしたら良いかを考え、それを具現化するために「自ら行動」して下さい。
最後に、三井不動産販売そして三井不動産グループは、大変、志の高い会社であり、企業グループです。多くの先駆的事業を創出し、業界をリードして来ました。やりがいのある仕事、働き甲斐のある会社であり、舞台は整っています。
皆さんが意欲を持ち、自己研鑚し、自らの持てる力を最大限に活かし、充実した人生を送って頂きたいと願っております。共に頑張りましょう。
皆さん「住友不動産販売」入社おめでとう。
我が国の景気は、企業収益の改善や個人消費の持ち直しなどにより着実に持ち直してきているが、長引くデフレや、失業率も高水準で推移するなど懸念材料が残っている。
「不動産業界」も、全体では厳しい環境が続いているが、当社の主力である仲介市場については、価格に割安感が出てきたことに加え、新築マンションの供給減もあり取扱件数は増加している。また、国の施策も新築から中古へと切り替わっており、政府は「新成長戦略」の中で、「ストック重視の住宅政策への転換」を打ち出し、2020年までに中古住宅流通市場の規模倍増を目指すなど、今後一層の拡大が見込まれる。
このように、活況が続いている仲介市場の中で、当社のさらなるシェア拡大を図るため、新入社員の皆さんには「早期の戦力化」を期待する。これから受講する研修もこのことを強く意識したカリキュラムになっている。配属後も各職場の上司・先輩のもとで、「確実に早く」をモットーに仕事に取り組んで欲しい。
尚、当社はモノを作る会社ではないので、皆さん自身が商品であり、人材が我が社の宝である。いかに他社より優れた人材を多く擁しているかがポイント、会社の強みになるわけで、そのことをよく念頭に置いて、自己研鑚に励んでいただきたい。