国土交通省が22日に発表した「2010年都道府県地価調査(基準地価)」について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。
■(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏
■(社)全日本不動産協会理事長 川口 貢氏
■(社)不動産流通経営協会理事長 大橋 正義氏
■(社)不動産協会理事長 岩沙 弘道氏
■三菱地所(株)取締役社長 木村 惠司氏
■東京建物(株)代表取締役社長 畑中 誠氏
■住友不動産(株)代表取締役社長 小野寺 研一
(順不同)
平成22年都道府県地価調査は、全国平均で住宅地が▲3.4%、商業地が▲4.6%となり、昨年調査と同様、下落という結果となったが、下落幅は縮小した(平成21年調査の全国平均は、住宅地▲4.0%、商業地▲5.9%)。
三大都市圏においては、今回は、住宅地、商業地ともに下落率が半減したが、一部で、値ごろ感の高まりで住宅地の需要が回復した地域や、商業地における収益用不動産の取得の動きが見られること等が要因であり、地方圏では、人口減少や中心市街地の衰退といった構造的な要因もあって、住宅地、商業地ともほぼ同じ下落率を示している。
本会では、不動産研究所を設置し、「土地・住宅税制のあり方」「不動産取引制度」「賃貸不動産管理制度」「取引保証制度」などについて研究会を開催し、国民の住生活環境の改善・向上の観点から、提言活動を展開しており、政府の「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」において、急速な円高・デフレへの対応として、景気の下支え効果が大きい住宅エコポイント制度の延長と優良住宅取得支援制度(フラット35S)の大幅な金利引下げの延長が行なわれることなったことは、高く評価し、歓迎をしている。
現在、全宅連では、平成23年度の税制改正に向けた税制の提言として、(1)適用期限を迎える各種税制特例措置の延長、(2)良質な既存住宅ストック形成を通じた国民の住生活向上を図るための特例措置、(3)住宅取得資金に係る贈与税の非課税制度の運用改善、(4)消費税率引き上げにともなう住宅取得への配慮、(5)新築住宅に係る固定資産税の減額措置の堅持などを掲げ、活動を展開しているところであり、政策面においても、既存住宅に係る保証制度の充実や評価制度の確立等、良質ストックの活用、流通促進化策の推進について提言活動を行なっているところである。
今後も、全宅連では、国民生活の安定向上、国土の健全な利用、整備を推進していく観点から、不動産取引のより一層の健全化と不動産市場の一元化を図る目的をもって、インターネットオークション方式の不動産取引所システムを研究し、一部地域において公開実施に入った。また、不動産取引に係る各種税制および政策課題についても、不動産総合研究所等において調査研究を進めた上で、政策提言をとりまとめ、その実現のために活動を展開していく所存である。
前回に引き続き下落を示す地点が多いものの、地価変動率の平均では、全体的に下落率が縮小している。特に、三大都市圏では住宅地・商業地とも下落率が半減するなど、需要の回復が出始めてきているようである。しかしながら、昨今の深刻な円高・デフレが今後どのような悪影響を及ぼしてくるか、大変危惧している。景気回復の芽を摘むことがないよう、政府には有効な施策を緊急的に取り組んでもらいたい。
今回の地価調査においては、依然として厳しい景気動向の下、全国平均で全用途にわたり下落となりましたが、前回に比べ、全体として下落率は縮小し、特に三大都市圏では、住宅地、商業地ともに下落率が半減しました。一方、地方圏では、依然として景気回復の兆しは見られず、住宅地、商業地とも前回とほぼ同じ下落率を示しました。
三大都市圏において下落率が縮小している背景には、住宅地では潜在的に需要の大きい人気エリアでマンション、土地戸建に値ごろ感が出てきたこと、商業地では不動産融資に対する金融環境の改善により収益用不動産取得の動きが見られること等が挙げられます。
本年前期は、昨年12月の緊急経済対策による、「フラット35S」の金利引き下げや、税制改正における住宅取得資金にかかる贈与税非課税枠の拡大など、住宅投資の支援により景気回復を目指す方向が明確に示されました。こうした支援により、新築マンションの販売は好調に推移し、東日本不動産流通機構の土地取引件数は増加し成約価格も上昇するなど明るい兆しを見せ、半期毎の地価動向では、平成22年前期の下落率が、三大都市圏の住宅地で1%未満となり、地方圏においても下落率は縮小しました。
今後、このような回復の基調を確かなものとし、全国レベルでの地価の安定化に結び付けていくためには、政府の「新成長戦略」で示された「元気な日本」復活のシナリオに基づく具体的な施策を着実かつ早急に推進すること、なかでも、喫緊の政策として不動産流通諸税の軽減措置や良質な住宅ストックの拡大を下支えする税制や金融支援の継続、拡充を始め、不動産流通市場を活性化させるための支援が不可欠であります。
今回発表された都道府県地価調査では、上昇地点・横ばい地点が増加するとともに、全体的に下落幅が縮小している。特に、三大都市圏では、住宅地、商業地とも下落率が半減するなど、下落傾向の鈍化が見られる。
住宅地・商業地とも、需要の回復傾向が見られる。首都圏のマンション市場は平均契約率が8ヵ月連続で70%を超え、在庫が8月末時点で約5,000戸まで減少し、デベロッパーのマンション用地取得にも積極的な動きが出てきた。また、オフィス等の収益不動産に対する投資も、J-REITによる本年1月からの資産取得額が既に昨年の取得額の1.8倍に達している。
我が国の経済を本格的な成長に導くためには、地価の下落に歯止めをかけることが不可欠であり、政府には、住宅・都市分野の成長戦略をスピード感をもって実行することを期待する。我々民間デベロッパーとしても、都市再生の推進や良質な住宅の供給を通じて、日本経済の成長に貢献してまいりたい。
■三菱地所(株)取締役社長 木村 惠司氏
前回の調査と比較し、引き続き下落を示す地点が多いものの、上昇および横ばい地点が増加した。特に三大都市圏では、住宅地、商業地ともに下落幅が半減した。
分譲マンション市場は、政策の恩恵や、価格が購入者の目線に合ってきたことなどから、首都圏の新規販売戸数、契約率とも前年比で増加している。特に都内の好立地においては土地仕入の動きが過熱しつつあるなど、地価の底打ち感が出ている。但し、3大都市圏以外のマーケット回復にはなお時間を要する。
商業地については、オフィス市況の本格的な回復に至っていないものの、空室率の上昇傾向には歯止めがかかりつつあり、特に都心部のS・Aクラスビルでは空室率低下の動きも見られる。商業地の地価は個別性が強く、今後もエリアや物件の優勝劣敗が進むものと思われるが、全面的な反転には実体経済の回復が望まれる。
政府の新成長戦略において「大都市の再生」や「住宅投資の活性化」などが掲げられているが、こうした施策が早期に実行に移されることを期待したい。日本の都市競争力の向上には、大都市、特に東京の再生が重要であり、選択と集中を進めることが必要である。PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)やエリアマネジメントの考え方により、民間資金を活用できれば、日本の経済成長に大きく貢献するものと考える。
日本経済は回復基調にあるものの、依然デフレ傾向が続くとともに、円高、株安の中、雇用情勢に一層の厳しさがみえるなど、未だ予断を許さない状況にある。
不動産市場は、マンション分譲において、首都圏に続き関西圏でも回復傾向が鮮明となってきており、不動産流通市場においても取引が増加するなど、一部では回復基調にある。一方、オフィス賃貸においては、空室率は依然高いものの上昇幅は縮小しており、新規契約賃料も下げ止まり傾向にあるなど、厳しい中にも底打ちの兆しがでてきている。
今回発表された地価調査では、地価は全国的に下落が続いているが、三大都市圏においては下落幅が縮小しており、この傾向は今後も続くと思われる。
日本経済の回復には、資産デフレの解消が不可欠であり、そのためには、都市・地域再生による不動産市場の活性化が重要である。菅政権には、都市の国際競争力を高めるため、迅速かつ大胆に、規制緩和、税制支援、投資環境の整備などに取り組むことを期待する。
■住友不動産(株)代表取締役社長 小野寺 研一氏
今回の調査結果を見ると、前年比で地価が横這い乃至上昇に転じた地点が若干増加したほか、引き続き下落した地点でも総じて下落幅は縮小した。さらに、1月の地価公示との比較では下落率が半減しており、地価下落局面が終盤を迎えたことを示唆している。
消費者心理が端的に表れる分譲住宅市場は、減税や低金利を背景として住宅取得意欲が改善し、概ね上向きに転じている。中でも首都圏の分譲マンションは販売が好調で、供給が少ないため価格は強含み傾向だ。原材料となるマンション用地は既に値上がりしているというのが現場の実感で、今後の地価調査にも次第に反映されていくだろう。
一方、国内外の経済情勢の先行きは、不透明感が強まっている。デフレ脱却と景気に自律的回復には、内需の柱である住宅分野の活性化と地価の安定は不可欠だ。新政権には、住宅投資促進策の継続、拡充と、積極的な成長戦略の展開を期待したい。