

一般社団法人日本マンション学会(会長:小林秀樹氏・千葉大学教授)は11日、明海大学(千葉県浦安市)で「東日本大震災によるマンションの被害実態と対処方法」をテーマにした報告会・セミナーを開催した。
報告会では、浦安市長の松崎秀樹氏が講演。市域の86%、約1,455haに及ぶ液状化被害の実態と被害者の救済対策について語った。同氏は、液状化の被害からの復旧には「最低でも3年はかかる」との見通しを示したうえで、一戸建ての被害認定において新たに「大規模半壊」を設けるなど認定基準を緩和したほか、被災マンションについても管理組合に最大3,000万円の補修費を援助する独自の制度を創設するとした。
同氏は「浦安市は、まちづくりのなかで積極的にマンションを誘致してきた。一戸建住宅との公平性を保ちながら、被災マンションについてもしっかり市が責任を持っていく」などと語った。
続いて、東北マンション管理組合連合会会長・鎌田 担氏、浦安住宅管理組合連合会会長・舘 幸嗣氏が、同震災により発生したさまざまなマンション被害について報告。創価大学法科大学院教授の折田泰宏氏が、地震保険におけるマンションの被害認定基準に関する問題点を解説した。
これらを受け、同学会では、同震災で被災したマンションと居住者を救済するため、緊急に対応すべき事項について提言を行なった。提言は(1)倒壊の危険があるマンションの区分所有を解消するには、全員合意が必要なため、非常時においては多数決による区分所有解消、敷地処分を可能とする「区分所有解消制度」を創設すべき、(2)被災者生活再建支援法はマンションの再建、解体や改修について考慮していないため、マンションを対象とした「被災マンション生活再建支援制度」を創設すべき、(3)地震保険は、一戸建てとは異なるマンションの実態に即した被害認定基準を確立すべき、(4)マンションの敷地内は戸建住宅における前面道路と同じ役割を担うものとして、公的支援の対象に加えるべき、(5)比耐震壁や設備等の被害が大きく地震保険の対象に入らず再建に苦慮するマンションに対し、特別融資制度を設けるべき、(6)被災マンションに対するコンサルタント派遣への援助をすべき、の6項目。
同学会の小林会長は「今回の大震災は、マンションの被害が限定的だったが、阪神・淡路大震災のときとはまた別の新たな課題が見えてきた。液状化対策や建替えに対する国の支援は一戸建てを念頭に置いたものであり、マンションに対する配慮が必要」などと語った。