(株)ニッセイ基礎研究所は19日、第8回不動産投資市況に関するアンケート結果を発表した。震災直後の緊急アンケートに引き続く形で実施したもので、10月3~14日にかけ、不動産・建設、金融・保険、仲介、不動産管理、不動産ファンド運用、格付、投資顧問・コンサルタントなどの業務に携わる198人を対象に行ない、102人(回収率52%)から回答を得た。
「東日本大震災が日本の不動産市場に与えた影響の大きさ」については、「非常に小さかった」あるいは「小さかった」の回答が合わせて4割近くを占めた。震災直後は「やや深刻」、「深刻」、「非常に深刻」との回答が合わせて9割を超え、今後の影響に対する懸念が支配的だったが、不安感や不透明感がかなり払拭された結果となった。一方、今回の調査で「非常に大きかった」が21.6%ある点にも留意する必要があるとしている。
また、「中長期的にみて大きく進むと思われる変化」については、「不動産の選別や二極化」(75.5%)、「不動産の防災技術や省エネ技術」(60.8%)、「既存ストックの耐震補強や省エネ改修」(57.8%)がトップ3に。一方、震災直後、東京一極集中リスクへの意識が高まったものの、今回「東京一極集中構造への是正」の支持は1割弱に止まった。
「今後の価格上昇や市場拡大が期待でき、魅力的だと思われる投資対象」については、「中国をはじめとするアジア不動産」への支持が45.1%(10年10月時点:18.2%)、次いで「物流施設」が43.1%(同9.1%)と昨年以上に関心が高まった結果となった。また、今回新たに選択肢に加えた「高齢者向け施設」についても37.3%と関心の高さが確認された。
一方、昨年と比較し、主要セクターであった「オフィスビル」は36.3%(同47.0%)へと大幅に支持を減らした。
「防災性と省エネ・省電力性に特に優れた不動産に投資するとした場合、そうでない不動産比べて収益還元利回りにどの程度のプレミアムを考慮するか」について、昨年の類似質問と比較すると「特に考慮しない」が4.9%(同12.9%)と大幅に減少し、昨年皆無であった「-1%超」が6.9%と明確なプレミアムを考慮する回答がみられた。今後新たに開発される防災や省エネ分野のスペック向上はもちろんのこと、既存不動産に改修需要も増加すると考えられ、防災性や省エネ性による市場の二極化が進むと分析している。