(公財)不動産流通近代化センターは2日、中小不動産事業者の「これからの不動産業を考える研究会」(座長:小林重敬東京都市大学教授)の報告書をとりまとめたと発表した。
同研究会は、人口減少や少子高齢化、東日本大震災発生など、社会・経済構造が激変する中、売買仲介、賃貸仲介・管理などを行なう中小不動産流通事業者(宅建業者)の今後の事業展開のあり方を検討すべく2011年6月に発足したもの。6回開催した。
報告書では、不動産業を取り巻く社会経済環境の変化として、事業の「機会」となる要素に「既存住宅流通量の堅調な推移」「消費者の価値観の多様化」を、また、脅威となるものに「総人口の減少」「国内人口移動数の減少」などを挙げた。
加えて、中小不動産業の状況をアンケートやヒアリングなどから分析。そこから、中小不動産業の強みとして「地域密着しやすい」「きめ細やかなサービスの提供」「事業コストの安さ」を、弱みとして「事業の多角化が難しい」「情報量、物件量が乏しい」「人材確保・教育研修制度の確立が難しい」「情報化への対応が難しい」を指摘した。
また、宅建業者の新規・廃業業者数は1998年以降、増減を繰り返し、その出入りの多さが伺えるほか、免許取得時期の長短に関わらず、残存率が50%となっているとした。
それらを踏まえ、中小不動産事業者が持続可能な経営をしていくには、“顧客満足度の向上”をキーワードとした、「経営のプラットフォームの確立」が必要と提言。そのためには「経営ビジョンの設定」から「持続可能な経営のための方策」を講じるとともに、「事業展開における方向性」に沿って事業を進め、最終的には「中小不動産業としてのアイデンティティの確立」につなげていく一連の流れを策定することが重要とした。
「持続可能な経営のための方策」では、従業員教育の充実、従業員満足度や従業員定着率の向上を強化することで、消費者への情報発信の強化やコンプライアンスの徹底を行なうことが重要とした。「事業展開における方向性」では、「顧客密着の強化」「地域密着の強化」「新たな市場へのアプローチ」をポイントに、高齢者向け住み替え支援やリフォーム付き中古住宅仲介など底堅い需要が見込めるニッチ市場への挑戦が必要としている。
「持続可能な経営のための方策」と「事業展開における方向性」を両輪にアイデンティティ確立を努めることで「地域の魅力の向上」にもつながっていくとしている。
同報告書は同センターホームページにて公開予定。