みずほ信託銀行((株)はこのほど「不動産トピックス2012年8月号」を公表。その中で「省エネルギービルのストック形成の状況」についてレポートした。
同レポートでは、都区内の大規模ビルの建築主が作成する「東京都建築物環境計画書」に記載された、建築物の省エネ性能に係る2つの指標“PAL低減率”と“ERR”に着目。東京都区部の省エネ性能の高いビルストックの形成状況を概観している。
“PAL低減率”とは、建物の窓や外壁からの熱損失の防止性能に関する基準値で、大きいほど建物の断熱性能が高いと評価される。“ERR”とは、空調、換気、照明、給湯、エレベーターの5つ設備において、基準値と実際に採用した機器のエネルギー消費量を比較し、低減率を示したもの。大きいほど設備の省エネ性能が高いとされる。
2012年6月19日時点で東京都のホームページに公開されている、区部に立地する物件の「環境建築物報告書」は808件。それぞれの評価をAAA、AA、A、B、Cの5段階とすると、“最も優れた取り組み”とされるAAAに相当する建築物はPAL低減率(25%以上クリア)で326件(40%)、ERR(35%以上クリア)で292件(36%)と共に最多の割合となった。
都区部の「賃貸オフィスビル」214件の省エネ性能については、「PAL低減率・ERR共にAAA相当」の評価となったオフィスビルは29件(14%)、「PAL低減率のみAAA」が38件(18%)、「ERRのみAAA」が34件(16%)という結果に。合わせて約半数のビルが省エネへの取り組みに優れたビルであったとしている。
ビルの竣工年別に省エネ性能をみると、新しいオフィスビルほど評価が高くなる傾向にある中で、2007~09年に竣工したものでは省エネ性能評価の低いビルの割合が高くなっていることが判明。この点については、08年前後の建築費上昇の影響を受けた可能性も考えられると分析している。
また、床面積規模でみると、ERRは大規模になるほど値が高くなるという結果に。大規模なビルはエネルギー消費がより大きいことから、エネルギー消費効率の高い設備等を導入しているとみられ、結果ERRを高めようと努力したことが背景にあると考えられる、とした。
今後の見通しについては、省エネやグリーン化による収益・便益が追加的な費用を上回ることが期待できるようになれば、経済的にも社会的にも省エネビルの価値が認められ、ストック形成が一層進むものと推測している。