(公社)全国宅地建物取引業協会連合会は14日、「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」の意見募集(パブリックコメント)に対する意見書を提出した。
同意見書では、(1)今回の民法改正は「分かりやすい民法にすること」が掲げられているにもかかわらず、これまでまったく使用されていなかった法律用語が使われている、(2)要件や内容が複雑過ぎるため、分かりにくい規定がある、(3)解釈や信義則等を根拠にして例外として判例が認めていたものを明文化しようとしている、(4)改正法施行時に締結されている契約には現民法が適用されるため、長期間にわたって現民法と改正民法が並立する、などにより「紛争の多発や混乱が懸念される」とし、試案の28ヵ所にわたり問題を指摘。これらが基本的に是正されない限り、民法改正に反対するとした。
17日に会見した、同協会常務理事の小林 勇氏は「ルールを明確化するのは一見良いことに思えるが、日本人の性質を考えると、法解釈に幅を持たせるための“あそび”は絶対に必要。すべてを明文化することで、それを逆手に取った悪質な契約が必ず出てくる。(民法改正は)不動産業界だけでなく、さまざまな分野に影響を及ぼす。国民的議論にしていかないと、将来に禍根を残すことになる」と語った。
また、同協会の「民法改正動向と宅地建物取引のあり方に関する研究会」に委員として参加した弁護士の柴田 龍太郎氏は「今回の民法改正の本質は、一般化されたルールにより解釈する大陸法の流れを、当事者の合意・契約を重視する英米法に変えることにある。国際取引に整合させるという点ではTPPと同じ水脈を感じる。例えば、瑕疵という言葉は“契約の趣旨に適合しない場合”と置き換えられる。契約書に多く盛り込んだほうが有利になり、法律弱者が生まれる懸念がある。その他、買主の宅建業者に検査・通知義務が発生する等、取引慣行も大きく変えなければならない。このような改正をわずか2年で行なう必要があるのか。多くの国民は、果たして民法改正の必要を感じているのか」と疑問を呈した。