(公社)日本不動産学会は3日、すまい・るホール(東京都文京区)にて「日本のTPPへの加入と国内不動産市場への影響について」をテーマにセミナーを行なった。
セミナー第1部では、(独)住宅金融支援機構調査部主任研究員の小林正宏氏が「米国の住宅市場とGSE改革の動向」について解説。
アメリカは住宅金融市場の改革案として民間の役割を拡大し、無責任な貸付の損失を納税者に負担させないこと、低所得者や一次所得者向け住宅取得を推進するなどを指針として打ち出していると説明。これらは日本の住宅政策においても重要ではあるが、日米の環境は違うことを踏まえ、考えていくことが大切だと述べた。
続いて、東京ガス(株)顧問、前・国土交通省国土交通政策研究所長の周藤利一氏が「日本のTPPへの加入と国内不動産市場への影響について」と題して講演を行なった。
ウルグアイラウンド、ドーハラウンド、FTP、EPAなど、世界の貿易ルールの仕組みから、TPPとは何か、現在進んでいる交渉分野は何かなどについて解説した。また、TPPにおける不動産業の位置付けについては、交渉分野の「越境サービス(貿易サービス)」に関わってはくるが、現段階で不動産業そのものについて取り上げられている項目はなく、直接的な影響はないとした。ただし、資格の相互認証など間接的な影響については、メリットデメリットを含めて着目すべきであると述べた。また「TPPはあくまでも通過点であり、貿易の自由化は今後も続いていくもの。外国人や外国企業とのコンタクトが増大する機を逃さず、対応していくことが必要である」と語った。