NPO法人日本不動産カウンセラー協会は5日、会員向けの一般研修の一環で講演会「これからの日本経済と不動産ビジネスの今後の展望 大波乱!不動産ビジネスの展望とカウンセラーの役割」を開催した。
第1部では、(株)日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏が「少子高齢化とオリンピックで変化する不動産問題と、コンサルティングの役割」を講演。藻谷氏は「現役世代(15~64歳)や子供が減少、高齢者のみが増加、世帯構造が変化している中、プロが介在しなくてはビジネスが成り立たない時代になっている」と指摘した。現在と将来の日本の人口構成や移り変わり、そこから発生している住宅ニーズを解説。また、これまでメインユーザーとされていた現役世代が絶対的に減少することから、例え景気が回復しても従来のビジネス手法では生き残れないとした上で、「今後は後期高齢者を対象としたエリアマネジメントサービス、サ付住宅やグループホームといった不動産ビジネスが求められる。一方、数が減少する現役世代に対しては、訴求力のある土地活用や住宅提案をすることが重要」(藻谷氏)と語った。
第2部は、税理士法人平川会計パートナーズ税理士・平川 茂氏が「相続税・消費税ダブル増税に打ち克つ不動産戦略とは」をテーマに、近年の税制改正と今後の動向や少子高齢化時代の相続の問題点などを解説。「高齢者から高齢者に物件が相続される時代で、結果、相続物件が何もされないまま放置されることが多い。所有者の意思能力がはっきりしている間にどのように預けていくのかはっきりさせる必要があり、民事(家族)信託が有効」(平川氏)とした。また、課税評価額を抑えるための小規模宅地の減税特例適用や定期借地権の設定などによる土地活用や資産の組み換えの事例を紹介した。
最後に、会員がカウンセリングビジネスの成功例を紹介。同協会理事((株)信州不動産鑑定代表取締役)の寺沢秀文氏が、長野県飯田市において貸地を複数保有する個人地主を対象に借地物件について総合コンサルティングしている事例を紹介。同氏は「借地は貸していても地代が上がらない、返却されないなどの問題を抱え、誰に相談していいのか悩んでいる人が多い」としたうえ、資産管理台帳の作成などのアドバイス方法、地代の値上げ交渉、借地人への売却方法などを伝えた。
同協会理事長の吉村真行氏は「このほど不動産カウンセラー業務のビジネスビジョンを明確化した。『まちづくり』『不動産開発』『不動産マネジメント』『個人資産アドバイザリー』『グローバル』の軸で展開していく。これらを推進していくために情報提供や共有を積極的に行なっていく」と挨拶した。