日本不動産ジャーナリスト会議(REJA、代表幹事・阿部和義氏)は23日、第4回不動産ジャーナリスト会議賞(2015年2月17日決定)のプロジェクト賞を受賞した「エステート鶴牧4・5住宅」(東京都多摩市、全29棟、総戸数356戸)を手掛けた(株)長谷工リフォームを招き、特別記念講演会を開催した。
「エステート鶴牧4・5住宅」は、多摩ニュータウンに位置する分譲住宅で、敷地面積4万9,264.77平方メートル、延床面積3万7,531.20平方メートル、1982年築の鉄筋コンクリート造(壁式構造)地上3~5階建て。永住を前提としたタウンハウス、メゾネット、フラットタイプと多様なプラン設定で、販売当時は坪単価107~118万円、販売倍率7倍と、ステータスのある人に人気の高い住宅であった。
講演会では同社代表取締役社長の鹿倉克幸氏らが、同プロジェクト着手の経緯や工事内容などについて紹介。居住者の住宅への愛着などから建て替えは難しいと判断し、大規模修繕工事として断熱改修とスマート化改修を実施。同社は、管理組合が希望していたものの、修繕積立金だけでは実現が不可能だった外断熱工事を採用するため、国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」(補助金事業)に採択されるよう、独自の改修プラン「総合省CO2改修」を組み立てた。同事業採択による補助金、修繕積立金、住宅金融支援機構の融資を組み合わせて1戸当たり305万円(うち断熱工事費217万円)の改修費用を捻出。総工事費用は11億403万円となった。2014年3月に竣工。
改修後の導入効果検証(冬季)によると、CO2排出量12%減、エネルギー消費量13%減を実現したほか、電気料金9,000円以上の世帯数が53%から34%に、ガス料金でも45%から25%に減少した。暖房時の満足度は55%から90%に大幅上昇。結露発生への不満も59%から9%、カビ発生も52%から5%に減少した。
会場からは「外断熱は優れた手法だが、高コストのため普及が難しい状況」「国交省の補助金があり実現したが、通常の団地改修では外断熱の採用は厳しいのでは」といった意見が出された。鹿倉氏は「寒冷地以外では、健康面への好影響、構造の長寿命化などメリット面のアピールが重要となる」と述べた。