三菱地所(株)は30日、一橋大学国立キャンパス(東京都国立市)内に開設した、ソーシャル・データサイエンス学部・研究科のインキュベーション・交流拠点を報道陣に公開した。
同社は23年3月、国立大学法人一橋大学と共に、データ駆動型社会における空間価値創造に関する共同研究契約を締結。データサイエンスを活用し、産業界や地域を巻き込んだイノベーションプロジェクトが集積する空間・拠点作りをはじめ、国立エリアおよび大手町・丸の内・有楽町エリアにおいて、実証実験や他社との情報連携等を実施し、社会課題の解決を目指している。
その最初の取り組みとして、歴史的建造物に指定される1929年築の東本館をリノベーション。一橋大学が23年4月に新設した、商学・経済学・法学・社会学といった社会科学に関する知見と最先端のデータサイエンスを掛け合わせた「ソーシャル・データサイエンス学部・研究科」の交流拠点を開設した。同社がこれまで培った丸の内エリアのスタートアップ・エコシステムと連携し、ビジネス革新や社会課題の解決について検討していく。
1階には、ソーシャル・データサイエンス関連資料を展示する一面のシェルフやカフェコーナー等を設置。教員や学生のみならず、共同研究を行なう企業のスタッフにも開放することで、コミュニケーションの創発を狙う。テーブル・椅子は可動式、スクリーンも配備することで、講演会やセミナー、パーティなど多用途にも対応する。2階には、学生の研究活動に特化したフォーラムや研究成果を展示するラウンジを設けた。ラウンジ内では、センサーを利用したモーションキャプチャのデータ収集実験、バーチャルリアリティやロボットを用いたワークショップ等も行なっていく予定。
30日に会見した同社執行役社長の中島 篤氏は「当拠点には、当社がこれまで丸の内エリアで培った共創の拠点作りのノウハウをつぎ込んでいる。ここから社会課題の解決につながる新たな研究が生まれていけば嬉しい。当社も施設の運営を通じて、継続的にサポートしていく」と語った。
また、一橋大学の後援団体(一社)如水会の理事長であり、同社特別顧問を務める杉山博孝氏は「学生時代、ゼミの研究室がこの東本館内にあり、非常に懐かしく思う。社会科学系の学科・研究科は他の分野と比較して企業との共同研究において後れを取っているという課題があり、同拠点を通じて共創が進んでいけば良い。また、関連企業に留まらず、その他の学部や地域との交流拠点としての活用にも期待したい」と述べた。