高齢者住宅支援事業者協議会(高支協。会長:菊地通晴氏)では、同協議会内に「未来の高齢者住宅委員会(委員長:三繩浩司氏)」を設置し、入居者にとって望ましい住宅のあり方を検討。その成果を昨年「私たちのエルダーリビングー明日の高齢者住宅」と題する冊子にまとめ、26日、東京・千代田区内で同委員会メンバーによるシンポジウムを開催した。
同委員会では、現在の日本の「高齢者施設」は、狭小で画一的な居室、機械化されたサービスなど、必ずしも居住者にとって心安らぐ空間になっていない、住み続ける場所になっていないとの問題認識から、自立した状態から終末期まで安心して住み続けられる高齢者住宅とはどのようなものかを検討してきた。
冊子では、「高齢者が自分らしく豊かな生活ができ、安心して最期が迎えられる」ために、居住スペース、エネルギーの自立化、リスク対策、照明・内装、衛生、癒しの場、カスタマイズとメンテナンスといったハード面、食事、睡眠、リハビリ、福祉用具によるサポート、コミュニケーション、認知症ケア、ターミナルケアといったソフト面それぞれについてサプライヤーとして考えるべきことがまとめられている。
シンポジウムでは建築、照明・内装、庭づくり、睡眠とリハビリ、福祉用具などの事業者がそれぞれの専門見地から、「明日の高齢者住宅」を講演。
「高齢者住宅の主役は人。ファシリティ(施設)ではなく、リビング(住まい)であるべき」(医療法人社団フォルクモア、森川悦明氏)、「ヨーロッパでは福祉は住宅に始まり住宅に終わると言われるが日本はかけ離れている」((株)モリトー、三繩浩司氏)、「無味乾燥な建築物でなく、季節や時間を感じる工夫が必要。周辺地域にも好影響を与える建物に」((株)現代計画研究所、今井信博氏)、「最先端技術を用い、住まい手個人の身体状況に見合った家具や内装、照明を取り入れる施設が出てきた。先々の身体変化にも対応できるようになっており、日本の超高級高齢者住宅なども導入を始めている」((株)イリア、山本直子氏)、「療法的園芸は欧米では学問分野にもなっているほどで、緑がストレス軽減や認知症発症予防もにもつながる」(Regent Garden Design 永野智子氏)、「認知症予防には運動、食事、社会活動が必要3要素」(パラマウントベッド(株)、小池清貴氏)、「北欧の高齢者住宅をみると例えば食事にしても、1週間分のメニューがあらかじめ決まっているようなことはなく、地産地消で割安、美味、新鮮なものが提供されたり、好きなものを好きな時に好きなところで食べられるなど自由さがある」((株)タムラプランニング&オペレーティング、田村明孝氏)などの報告や提言がなされた。
高齢者住宅ビジネス関連事業者、住宅メーカー、メディア、行政担当者などが聴講した。