不動産ニュース / 調査・統計データ

2025/5/22

賃貸住宅のクロス張り替え抑制で環境負荷を軽減

 (株)市萬は21日、賃貸不動産のビニールクロスの張り替えを抑制することでのCO2排出量削減効果を可視化することを目的に、産学共同研究を実施。その結果を発表した。

 賃貸住宅の入居者入れ替えに伴い発生する原状回復工事の際、同社では汚れていない箇所のクロスについて、交換せずに次の入居者にそのまま活用してもらうという取り組みを実施している。これによる環境貢献効果を確認するために、武蔵野大学工学部サステナビリティ学科の磯部孝行准教授の協力を得て、CO2排出量削減効果の試算を行なった。

 同社が管理する1993年築、鉄筋コンクリート造5階建ての建物の住戸の1住戸(専有面積51.40平方メートル、3DK)で、4年入居後に退去が発生した物件で検証を実施。専有部内部を確認した結果、トイレと4.5畳の洋室1室については張り替えが不要と判断。住戸内全面を張り替えた場合と、洋室・トイレを交換しない場合の両方について、張り替えに必要なクロス量をそれぞれ計算。はがしたクロスの処分に要する運搬負荷なども織り込んで環境負荷の計算を実施した。

 全面張り替えではクロスの使用面積が約179平方メートルであるのに対し、部分張り替えでは約134平方メートルとなり、約45平方メートルの削減につながった。処分場への移動・処分も含めて環境負荷を試算したところ、部分張り替えでは全面張り替えに比べて約25%のCO2の削減効果が確認された。これは、ガソリン車において7.9リットル分のガソリンの使用量を削減したのと同程度の効果だという。

 同社では、管理物件において年間約350件の原状回復が発生。各住戸の使用クロス量を平均90平方メートルと仮定し、それぞれ4分の1の張り替えを抑制すると、計算上では年間約3.2tのCO2削減につながる。市萬の中澤一世氏は、「まだまだ使用できるクロスを張り替えるということはそもそも大変もったいない話。張り替えないということに業界全体で取り組めば、2050年のカーボンニュートラル実現へにも貢献できるはず」と語った。

 なお同社では今後、「エコ管理物件マーク」(仮称)を作成し、こうした環境貢献への取り組みを行なっている企業や物件のホームページ等に掲載する活動にも取り組む計画。同社代表取締役の西島 昭氏は、「当社で取り組んできた部分張り替えが環境負荷軽減に貢献できると分かったので、今後も積極的に取り組んでいきたい。不動産管理業界にも広め、共に環境負荷軽減に取り組んでいきたい」と述べた。

評価ツールを用いて、対象物件について検証した結果

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原状回復

ある事実がなかったとしたら本来存在したであろう状態に戻すことをいう。例えば、契約が解除された場合には、一般に契約締結以前の状態に戻さなければならないとされる(原状回復義務を負う)。

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