不動産ニュース / 開発・分譲

2025/7/23

1低層団地建て替え初の容積緩和/旭化成不レジ他「千歳烏山」

「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」外観
敷地内外に豊富なオープンスペースを設け豊かな植栽で包み込んでいる(写真は中庭)

 旭化成不動産レジデンス(株)と丸紅都市開発(株)は23日、両社が参加組合員として参画したマンション建て替え事業「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」(東京都世田谷区、総戸数248戸)を報道陣に公開した。マンション建替円滑化法に基づく団地の建て替えにおいて、全国で初めて容積率緩和が適用された物件で、マンション建て替えによる都市再生の推進手法として注目を集めている。

 同物件は、京王本線「千歳烏山」駅徒歩9分、同線「仙川」駅徒歩13~14分に立地。鉄筋コンクリート造一部鉄骨造地上4階地下1階建て2棟構成のマンション。竣工は、7月31日予定。従前は、東京都住宅供給公社が1971年に分譲した「給田北住宅」で、2棟構成7階建て171戸。2011年の東日本大震災後、耐震診断を行なったところ耐震性不足が明らかとなったため、建て替え計画が持ち上がり、16年に再生推進を決議。18年3月に両社が事業協力者に選定された。21年5月団地一括建替え決議、22年1月マンション建替組合設立、同年7月権利変換計画の認可を経て、同年8月解体工事着手、23年7月着工していた。

 従前建物は7階建てだったが、その後敷地のほぼすべてが第1種低層住居専用地域となり、10mの高さ規制を受け既存不適格建物に。指定建蔽率50%、容積率100%の規制もかかったが、再建時の敷地内貫通道路の設置等の工夫で高さ規制が12mまで緩和されることに。さらに歩道上空地の確保、広場上空地の確保など公共に資するオープンスペースの設置により、14年のマンション建替円滑化法改正による容積率特例を受け、容積率は40%弱緩和された。

 従前入居者の約6割が60歳以上の高齢者だったため、建て替え決議前後の懇談会や相談会で入居者の不安を払拭。家財処分や仮住まい、引っ越し等のケアを行なった。従前入居者の6割強が再取得を希望。いずれも自身または家族の入居のためで、賃貸とする権利者は1割にも満たなかった。

 住戸は、従前の3DK、専有面積約50~57平方メートルから、従前入居者の希望も受け入れ、1LDK~4LDK、専有面積約39~90平方メートル、全90タイプを用意した。従前入居者が取得するなどした107戸を除く141戸が、24年2月より販売され、4戸を除き販売済み。先着順で販売中の2戸(2LDK、3LDK、専有面積約64、69平方メートル)は、8,998万円、9,198万円。販売済み住戸は、専有面積70平方メートル台の3LDKで9,000万円台中心だった。

 再取得した入居者の年齢層は60~80歳代、新規に入居する入居者は30~40歳代の夫婦が中心のため、コミュニティスペースやコモンテラス、中庭などコミュニティ形成の場を多く設け、居住者専用のアプリによるコミュニティ支援を行なう。また、敷地内や歩道、貫通通路を含め豊富な植栽を施すなどして、東京都マンション環境性能表示における5つの評価項目で満点(★15個)を取得している。

 23日説明にあたった旭化成不動産レジデンス開発第二事業本部マンション建替営業部長の島 寛治氏は「さまざまな困難を乗り越えながら248世帯の入居者と対話を重ね、設計事務所やゼネコンなどの専門家の力を借りて課題を解決し、今後の都市再生に活用できるよう、団地建て替えとして初めて容積率緩和実現に取り組んだ。これまで50以上の建て替え事例で組合員の皆さんと対話を重ねてきた。これからも多くの建て替え事例を通じて、安全安心なまちづくりに寄与したい」と抱負を述べた。

建て替え前の給田北住宅。東日本大震災で耐震性不足が明らかとなり、建て替えの検討がスタートした。竣工後、敷地の大部分が第1種低層住居専用地域になったことから高さ規制や厳しい建ぺい・容積率指定を受け既存不適格物件となったが、マンション建替円滑化法の容積率緩和を使い、建て替えが実現した。

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マンション建替え円滑化法

「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」を参照

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