不動産ニュース / 開発・分譲

2025/12/12

横浜市過去最大の建て替えマンションが竣工

「プロミライズ青葉台」外観
現地空撮。東西軸が長い4ha余の敷地で高低差が25mある
敷地中央を東西に貫く「センターウォーク」は地域にも開放。エレベーターもあるバリアフリールート

 横浜市住宅供給公社は11日、桜台団地マンション建替組合、(株)URリンケージ等とともに開発を進めてきた分譲マンション「プロミライズ青葉台」(横浜市青葉区、総戸数761戸、うち非分譲住戸205戸)の第1工区竣工に伴い、現地を公開した。建替組合が主導した事業を事業者が伴走支援する形で、456戸の住民の合意形成を図り建て替えを成功させた手法、4haを超える敷地を生かしたランドプランや、竣工後の新旧入居者のコミュニティ形成などに注目が集まっている。

 同物件は、東急田園都市線「青葉台」駅から徒歩約10~14分に立地。約4.4haの開発地は、1966~67年に竣工した「桜台団地」(総戸数456戸)の跡地。築50年を経て割賦販売期間が終了し、管理組合が発足した段階で、ある不動産事業者主導で建て替えが検討されたが、リーマンマンショックによりこの事業者が撤退。改めて、管理組合が建て替えありきではなく、現状建物の修繕維持も併行して検討することに。その間2010年に横浜市住宅供給公社がコンサルタントとして参画。16年にURリンケージが合意形成等の支援を開始。17年に組合員対象に行なったアンケートで、建て替え賛成が65%(反対15%)となったが、保留、未回答がそれぞれ10%に達したことから(1)全組合員との個別面談を2回開催、(2)建替決議総会を1年半延期、(3)団地内に建て替え相談室を設置、などの取り組みを経て、19年に一括建て替え決議が可決された。同公社が事業者に選定され、21年解体着手、22年着工し、敷地北西側を除く第1工区が25年11月に竣工。第2工区は26年6月竣工予定。

 敷地は、東西軸が長く、東西の比高差は約25m。最も高い西側に広さ約2haの桜台公園が隣接する。敷地の南北方向に2本、敷地中央を東西方向に1本公道が走る。この敷地形状と周辺環境との調和を目指しランドプランを作り込んでいるのが特長。敷地中央は、最も駅に近い棟(ステーションサイド)から、公道で分けられた各棟を貫きながら桜台公園まで続く「センターウォーク」とし、近隣住民にもバリアフリールートとして開放。まちの中心には円形状の広場空間「セントラルプラザ」、その周囲に共用棟「セントラルコア」と「さくらテラス」を配置。「セントラルコア」は、キッズスペース、ミーティングルームなどのほか、スタディスペース、ゲストルーム3室を用意。「さくらテラス」は、キッチンスペース、ライブラリー機能などを配した。敷地内は、既存樹含め約1,500本の樹木で彩る。空地率も62%に達する。

 建て替え後のマンションは、鉄筋コンクリート造地上5・6階地下1階建て、住戸棟は5棟構成。住戸は、2LDK~4LDK、専有面積約31~91平方メートル。両面アウトフレーム工法、二重天井・二重床。リビング天井高2,450mm、バルコニー奥行き2m。ディスポーザ、食洗機、玄関手すり&スツール、メーターモジュール廊下、床暖房、スロップシンクなどが標準。竣工後は共用棟でのイベント、入居者ポータルでの情報共有・交流などを通じコミュニティ形成を図っていく。販売価格は3,098万~9,298万円。坪単価は約290万円。23年7月下旬にモデルルームをオープン。同年9月~24年10月で全戸販売を終了している。既存入居者への還元率は58%。

 竣工にあたり会見した桜台団地マンション建替組合理事長の鈴木 実氏は「最初の建て替え計画の頓挫により組合員が分裂状態だったため、“建て替え・修繕にむけて誘導しない団地再生活動”と、全員で団地の将来を決めることを目指した。組合員それぞれの権利は平等であること、建て替えは自己資金が必要であること、プロ(コンサルタント)の見識を得るのは費用が掛かること等を周知。アンケートでは20%が棄権したが、最終的な建て替え決議の棄権は7人だった」と振り返った。
 横浜市住宅供給公社理事長の小林一美氏は「(コンサルタントとして参画して)15年間にわたり一貫して大事にしてきたことは、居住者の皆さんの桜台団地に対する愛を未来にどう引き継いでいけるかということ。団地建て替えというと新たな姿にばかり目が行きがちだが、この事業は皆様の思いを形にしたプロセスこそが最大の特徴であると思っている。今後の高経年マンションの建て替えだけにとどまらず、マンションの住まい方としても大いに参考になると自負している」などと語った。

「建て替えや修繕という結論ありきへ誘導しない、組合員全員で団地の将来を決めることを目指した」と振り返る桜台団地建替組合理事長の鈴木 実氏

「団地建替えというと新たな姿にばかり目が行きがちだが、この事業は皆さまの思いを形にしたプロセスこそが最大の特徴」と話す横浜市住宅供給公社理事長の小林一美氏

記事のキーワード 一覧

この記事の用語

マンション建替え円滑化法

「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」を参照

続きはR.E.wordsへ

動画でチラ見!

第18回 ジバコー 「原点」を語る

ニュースはこちら

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2026年1月号
地場企業の戦略を探る!
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2025/10/1

「海外トピックス」を更新しました。

vol.433 世界遺産都市マラッカの医療ツーリズム環境【マレーシア】」を更新しました。

医療を目的に渡航する「医療ツーリズム」。マレーシアは近年、その医療ツーリズムの拠点として成長を遂げています。今回は、歴史的街区が有名な国際観光地マラッカの病院を取材。多くの医療ツーリストを受け入れている環境について探りました。…続きは記事をご覧ください☆