記者の目 / その他

2005/3/25

賃貸住宅オーナーの取り組みを探る Part.6
「ハウス」シリーズの場合…

 

 久方ぶりの「賃貸住宅オーナーの取り組みを探る」シリーズ。第6回の今回は、築30年超から築10年未満まで複数の物件を所有し、いずれも満室状態という中原伸介オーナーの取り組みを紹介する。

築約35年でも満室を誇る「ルナ・コーポ」
築約35年でも満室を誇る「ルナ・コーポ」
空室が埋まりづらくなった時に設置したコインシャワー。設置してから再び空室期間が短縮されたとのこと
空室が埋まりづらくなった時に設置したコインシャワー。設置してから再び空室期間が短縮されたとのこと
築10年強のハウス目白。出窓がおしゃれな物件。窓のブラインドは設備として設置してあり、一定期間が経過し汚れるとオーナー負担で交換しているとのこと。
築10年強のハウス目白。出窓がおしゃれな物件。窓のブラインドは設備として設置してあり、一定期間が経過し汚れるとオーナー負担で交換しているとのこと。
自転車置き場も常に整理しておくことで、乱雑に置かれなくという。
自転車置き場も常に整理しておくことで、乱雑に置かれなくという。
「ゴミ置き場を常にきれいにしておくことが、ゴミを散乱させない最大の策」(中原氏)
「ゴミ置き場を常にきれいにしておくことが、ゴミを散乱させない最大の策」(中原氏)
築後年数が経過した他の物件では、外に入居者用物置を設置。スキー等の大きな物をしまえて喜ばれている」とのこと。
築後年数が経過した他の物件では、外に入居者用物置を設置。スキー等の大きな物をしまえて喜ばれている」とのこと。

●築約35年風呂なし満室物件

 豊島区目白。都内有数の住宅地であり文教地区であるこの地でオーナー業を営む中原氏。前職はサラリーマンだったとのことだが、退職後、オーナー業一本に絞り、客付け以外の入居者管理、物件の日常管理・営繕、退去精算に至るまで自らこなしている。
 そんな氏は複数の物件を所有しているが、もっとも古い物件は「ルナ・コーポ」。築約35年、木造2階建ての単身向け物件、風呂はなし。にもかかわらず、現在も満室だという。
 満室の理由を聞いてみると、「それはやはり立地がいいということに他ならないと思っています」(同氏)とのこと。「ルナ・コーポ」を含め氏の所有する物件のほとんどは、JR「目白」駅から徒歩7分ほどに位置している。この地から学習院大学までは徒歩10分弱、立教大学まで10分強、日本女子大が25~30分、早稲田大学もバスか電車を利用すれば30分以内に到着可能と、これらの大学に通う学生にとっては魅力的な立地だ。
 しかし、学生の賃貸物件に対するニーズに関する昨今の調査結果を見ると「フローリング」、「バス・トイレ別」(つまり風呂がついていることは大前提)など、入居者のニーズは年々厳しくなっている。にもかかわらずこの物件が満室なのは…。
 「家賃でしょう」とあっさり。「ルナコーポ」は4万5,000円。目白駅徒歩圏内の物件としては破格値だ。さらに押入もあるため収納も十分確保され、専有面積も20平方メートルをゆうに超える。
 氏曰く、入居者のニーズはさまざま。部屋に一定のレベルを求める入居者層が一番厚いのは言うまでもないが、一方で部屋に求めるニーズがさほど高くない層も少なからずある、という。「自分の研究時間を少しでも捻出するために立地を最優先に決めた」、「趣味にお金をまわしたいので、家賃が安ければ風呂はなくてもいい」、「地方から上京してきたので、この額以上は家賃には回せない」など、この物件を求める入居者層は、きちんと存在していると語る。
 目白界隈では最近投資用の1Rマンションが多数供給されているが、それらによって氏の賃貸経営が影響を受けることはない、と中原氏は言う。「そういった物件の募集賃料を見ると、だいたい10万円超。そういう層も確かにあるが、やはり学生で10万円を出せる層というのはそんなに厚くはない。結果、ユーザーの対象が重ならないので、影響はほとんど受けないだろう」とのこと。

●需要の多い層に向けた設定が奏功

 氏の所有する他の物件、「ハウス目白」、「ハウスアーバン」はそれぞれ平成3~4年に建設されたもの。当時の流行により一部屋の大きさは20平方メートルを切っており、今となってはむしろ狭い。それでも前述「ルナコーポ」同様、満室を誇る。家賃7万円台の設定は、「このあたりに部屋を求める人が求める条件に、そう大きくはずれていないから」に他ならない。
 もっとも時間経過による劣化は避けられないため、リフォームを含め対応はきちんと行なう。「ハウス目白」「ハウスアーバン」はもともと洗濯機・乾燥機が各部屋に設置されており、さらにBS、CS放送受信可能、光ケーブル付設など、ニーズに応じた改良を施してきた。
 前述の「ルナコーポ」でも、周りにあった銭湯が次々と廃業してしまったため、コイン式シャワーを共用施設として設置した。すると、空室が発生して次に入居者が決まるまでの時間が、ほとんどなくなったという。

●日常管理は「即時対応」がトラブル防止の決め手

 東京ルールのスタートもあって、敷金精算はこの業界では大変ホットな話題だが、中原氏曰く「これまで敷金精算を含め、入居者ともめた記憶はない」と語る。
 壁に穴があいた等の、明らかに故意・過失と認められるもの、その修理費用を除いて基本的に敷金は全額返還することにしているのが大きいようだ。「この姿勢は、オーナー業をスタートさせた時からそのままです。自然損耗の分は家賃に入っており、そもそも敷金は『deposit(預かり金)』なのだから返すのが当然、という理由から」(同氏)。
 たばこのヤニによるクロス変色については契約時に説明をした上で入居者に負担してもらっているとのことだが、平方メートルあたり700円程度。20平方メートルで1万4,000~1万5,000円。これでトラブルになったことはないという。
 また日常の管理が、トラブル防止の上では重要と語る。とかく汚れがちの集合ポストやゴミ集積場は、毎日のように巡回して、チラシやゴミはすぐ始末する。「汚しづらい、汚すと悪い」という意識を植え付けることが大切だという。「物件の周辺は比較的大きな住宅が多く、環境を維持することの意識が高い方が多い。そのため、道路にゴミが落ちていることに神経質な方もいらっしゃいます。うちの入居者が捨てたのでなくても、『このゴミはあそこの入居者が落とした』と思われたりもする。そのため、私が周辺の道路もきれいにしておくように心がけています」(同氏)。
 ゴミが散乱していたりしなければ、物件の築年数が経過していてもさほど目立たないのが不思議なところ。中原氏の物件も、築10年を越えてもそれほど古さを感じさせないのは、ゴミなどで汚れていないためだろう。
 音の問題も管理する者を悩ませるトラブルの一つ。「上下左右の部屋の音がうるさい、という苦情は度々寄せられます。苦情が来たらすぐ対応することを心がけています。入居者は学生がほとんどのため、夜中に連絡が来ることも度々。枕元に電話を置いて寝ています(笑)。とにかくすぐに訪問し、『苦情がでていますので、少し抑えていただけませんか…』と穏やかに伝えると、大きな問題になることなく解消されます」とのことだ。

 古くて空室率が高い物件にお悩みのオーナーは少なくない。氏の例から、何かしらのヒントを見つけていただければ幸いである。(NO)

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