記者の目 / 仲介・管理

2005/8/8

自然を取り入れた「ガーデンアパートメント」

―緑あふれる賃貸住宅―

 単身向け賃貸住宅というと…道路に面して規格型住宅の集合住宅が並び、自転車置き場が横に設置され…といったものが一般的にイメージされるものだろう。そんなイメージを覆すアパートが建設され、満室を維持しているという情報を耳にした。どのような物件なのだろう? 早速見学させていただいたので、その時の様子をお伝えする。

「Primiero」エントランス。入口左手はオーナーのご自宅
「Primiero」エントランス。入口左手はオーナーのご自宅
2棟の間には、緑の多い木や多摩に自生する多年草を使った緑豊かな庭が…
2棟の間には、緑の多い木や多摩に自生する多年草を使った緑豊かな庭が…
プロの手により、2階からも庭を楽しめるようデザインされている
プロの手により、2階からも庭を楽しめるようデザインされている
入居者も緑を好む方が多く、ご覧のとおりご自分で鉢植えを育てている方も
入居者も緑を好む方が多く、ご覧のとおりご自分で鉢植えを育てている方も

●その物件はガーデンアパート「Primiero」。豊かな緑を楽しめるアパート

 東京都小平市、西武拝島線「東大和市」駅から徒歩5分、徒歩5分のところにあるバス停からJR中央線「立川」駅まで15分と、非常に便のいい立地に所在するのが今回の物件「Primiero」だ。1棟2階建て、1フロア2戸からなるアパートがA棟・B棟の2棟からなる。駅から徒歩圏という立地にもかかわらず緑豊かなエリアに建つこちらの物件は、敷地内も緑に溢れており、棟の間にも草木が潤沢に植栽されている。

 企画・管理を担当する鹿島開発(株)(東京都小平市)の本多広幸代表取締役に話を聞いたところ、これらはプロの造園デザイナーの手によるもの、とのこと。造園デザインは1階・2階、それぞれの場所から植栽を楽しめるよう設計されているという。
 また、今回植栽された草花は、多摩エリアに自生する多年草を採用。地域のものを植えることでこの地への愛着心を持っていただこうという思いを込めるとともに、生命力の強い多年草は水まき、肥料やりの手間が不要という管理上のメリットをも考慮したという。
 「年に3回ほどのメンテナンスで、緑溢れる庭を維持できている」(本多氏)。取材時は前回のメンテナンス時から3ヵ月ほど経過していた時だったが、ご覧のとおり青々とした庭を維持できている。もちろん、ランニングを圧縮することで、オーナー・入居者双方の負担を軽減することにつながっている。

●建物は、必要な機能のみを強化

 物件は、ミサワホームの商品(木質パネル工法)。A棟は2Kタイプ、B棟は1LDKタイプ。面積はいずれも40.58平方メートルとゆとりある住まいだ。「設備はエアコン、浴室乾燥機、テレビドアホンは採用しましたが、入居者によって要・不要が分かれる設備は採用していません。キッチンもガス台の設置を可能にしてありますが、ガス台自体は入居者が好きなものを入れればいいと言う考えから、備え付けてはいません。温水洗浄便座についても、希望する入居者は自分でつけられるよう、設置はせず、トイレ内にコンセントは完備しました」(本多氏)。その分コストを下げること、ひいては賃料の圧縮につなげている。
 逆に入居者が後でそれを用意するのは困難なものについては手を抜かない。「収納は押入約2間分を確保しました。コンセントの数も通常の物件より多く設置しています。」(本多氏)。その最たるものが環境、つまりは緑溢れる庭ということだ。こればかりは入居者の力では如何ともともしがたい。ここに対し十分に手をかけて、入居者の生活環境を向上させているのだ。

 家賃は1階・2階とも7万5,000円(共益費別、入居時の敷金は2ヵ月分、礼金は1ヵ月分)。入居開始から1年が経過したが、入れ替えもなく、満室を維持している。「この物件は案内した時の歩留まりが非常に高かった。案内したらすぐに『ここに決めます』と即決のお客さまばかりだったんです。案内する不動産会社としては大変客付けが楽な物件でした(笑)」(本多氏)という。満室の今でも他社から「あの物件空きがでた?」という問い合わせが相次ぐという人気物件なのである。

 本多氏は、この単身者向け物件をスタートに、隣接地にファミリー向け物件、そして永住型の定期借地権付き住宅と供給していく夢を抱いている。「賃貸住宅の経営には、50年、そして100年先を見据えた計画が不可欠です。そのためには良いまちでなければ人は寄りつかないし、結果としてまちづくりの視点が重要となります。私は「ガーデンアパートメント」をキーに、緑溢れるまちづくりをしていきたい。それがオーナーの持つ資産の価値を上げることになり、また住まう方にとって最良の環境に住まうことを可能にすることにつながるからです」(本多氏)。

 賃貸住宅、建てれば客がすぐに入る…という時代は終焉を迎え、優良な入居者の奪い合う時代に突入した。良い入居者に長く住んでもらうためには、“良い”物件を提供していかなければ競争に勝つことはできない。まちづくりの視点から賃貸住宅を供給するという同社の試みは、これからの賃貸住宅経営の大きなヒントが隠れているのではないだろうか?(NO)

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