フラッグシップブランド「ザ・ライオンズ」1号物件「豊中」をみる
(株)大京が今春から販売しているマンション「ザ・ライオンズ豊中中桜塚」をみた。同社は、今年3月、新たなグループブランド戦略策定に伴い、マンションブランドネームを一新。「ザ・ライオンズ」は、4つの新ブランドネームの頂点にたつトップブランドだ。第一号物件となる「豊中」は、高級住宅街という立地に、同社最高級の仕様と建物プランを組み合わせたものだという。その中身は、いわゆる「億ション」的な「贅」の頂点ではなく、基本性能やプランニングに力を入れた「質」の頂点をめざしたものだった。






オリックス傘下でめざす「ファミリーファースト」
大京グループは昨年2月、オリックス(株)との資本提携によりその傘下に入り、グループ再生に全力をあげてきた。その一方で「再生」の先を見据えた企業ベクトルの作成とブランド戦略の構築に着手。今年3月、同社のアイディンティティーでもある“ファミリー”マンションへのこだわりを表した「Family First」というブランドステイトメントと、新シンボルマーク、そしてこれまで多種に及んでいた「ライオンズブランド」の個別ブランド名称を、4つに分類した。
まず、同社マンションの基本形をなすマンションは「ライオンズ」と呼称。20階以上のタワー型物件で、眺望を売りにしたランドマーク的物件に採用するのが「ライオンズタワー」。総戸数250戸以上の大規模面開発で、環境創造型の物件には「ライオンズガーデン」。そして、新ブランドの頂点に立つ「ザ・ライオンズ」だ。
ザ・ライオンズは、他のライオンズマンションとは一線を画した立地、商品企画、高品質を持つフラッグシップ商品にだけ採用される「特別」な名前。ただし、同社の説明によると、かつての「エルザ」や「リジェ」といった同社の「高額」「億ション」ブランドとは、意味するところが違うらしい。ここは、物件を見て判断したい。
市内屈指の高級住宅街 隣は国の文化財
「ザ・ライオンズ豊中中桜塚」は、大阪府豊中市中桜塚1丁目(阪急宝塚線「曽根」駅徒歩4分)に立地する、地上4・8階建て、総戸数77戸の低層マンション。設計・監理・施工は戸田建設(株)。
「桜塚」は、古墳群でも知られる、古くからの住宅地(少し古すぎるか?)。元企業の社宅跡地である建設地は、第1種低層住居専用地域(一部は第1種住居地域)にあり、周辺は低層戸建て、いわゆる「邸宅」が並び立つ高級住宅街。しかも、敷地南東に面するのは「国の文化財」に指定される「萩の寺東光院」で、驚くほど静か。同寺院面の環境は半永久的に保証されているといってもいいだろう。
この抜群の環境を生かすため、空地率47%を確保。駐車場のほとんどを地下に埋設。寺院面は遊歩道として緑化。エントランス面に設置されるサロン屋上、敷地中央部のパーキングコートも緑化。高さ8mの桜の木を保存するなど、周辺環境との融和に力を入れている。
建物は、3階層の低層棟をコの字に配置し、北側となる幹線道路面に8階建ての高層棟とエントランスを配しており、低層棟の独立性は高い。
「高品質」という「高級」追い求める
住戸は、2LDK~4LDK、専有面積は66~115平方メートル。総戸数の半数以上が、8m以上のワイドスパン。250~325mmを確保したボイド床スラブ、玄関・面格子のない窓への防犯センサー設置、主寝室へのサムターン錠設置、複層ペアガラス、リビングドアへのドアチェック設置、IHクッキングヒータ、省エネ型給湯器、食器洗い洗浄器、ミストサウナ、防災備蓄倉庫、24時間オンライン警備など、基本性能と安全性・快適性に関する投資が適切に行なわれているのが特長。
つまり「ザ・ライオンズ」とは、普通の「ライオンズ」以上に、基本性能の「高級」を求めているということであり、この点で「フラッグシップ」という言葉の意味するところも、これまでのそれとは違っている。つまり「贅沢」ではなく「高品質」という「高級」なのだ。
もちろん、住戸の「しつらえ」も「高級」をめざしている。モデルルームとして用意されていたのは、専有面積104平方メートルの3LDKを1LDK+ユーティリティルームへと変更したプラン。14戸限定となる「エクセレント・カーサ」の1つで、独・ジーマティック社と大京が共同開発した高級キッチン、タンクレストイレ、ビューバスなど住設機器の高級化と、特製のフローリングや建具・扉がおごられる。
メーターモジュールの廊下は、折り上げ天井を採用し、正面に存在感のあるニッチが配される。リビング扉は親子ドア。キッチンは御影石張り。突き板調の建具は重厚感がある。モデルルームにはかなりオプションが採用されているため本来の「ザ・ライオンズ」の姿ではないが、住戸の基本部分は変わらないことを考えれば、「ザ・ライオンズ」で同社がめざすところの、かなりの部分は成功しているといっていいだろう。
新生大京に期待を込めて
同物件の最多価格帯は、4,600万円台(70平方メートル)。平均坪単価にして、190万円台。周辺競合物件より若干高いが、立地だけでも買い得感はある。5月から一般販売を開始し、1期分については契約率8割を超え、順調な販売を続けているという。
これまでの大京は、「販売戸数ナンバー1」という「数」ばかりが先走って、自らのアイディンティティが確立できていなかった。だが同社は、意外なほど「地味」にマンションという住まいのクオリティ向上に努力している。他社がしり込みする「環境共生マンション」を数多く手がけているし、住宅性能評価書を全物件に交付もしている。だが、そうしたマンションを手がける一方、「数」を構成する「その他多く」のマンションは平凡なものも多かったのも、また事実だ。
同社は、今回のブランド一新で、「ライオンズ」から「ザ・ライオンズ」まで、「基本品質」「ユニバーサルデザインとエコロジー」「カスタマイズ性」「継続性」の4つのクオリティを追求していくという。少なくとも、今回取材した「豊中」からは、その意気込みが感じられた。(J)