総合地所他「ハーバーレジデンス」をみる
首都圏分譲マンション激戦区として、にわかに注目が集まっているのが「千葉市」だ。都心・近郊部でのマンション供給が難しくなったディベロッパーは、ここ数年埼玉・千葉での仕入れを強化してきたが、そうした物件が続々供給され始めたのだ。なかでも千葉市は、今年以降2千戸以上のマンションが供給される予定で、「新価格」への抵抗感も強いことから売れ行きも二極化。ディベロッパーは、「価格」か「企画」で他社との差別化を求められている。こうしたなか、好調な売れ行きをみせている総合地所(株)他の「ハーバーレジデンス」(千葉市中央区)を見学した。





供給急増、千葉臨海部での先行物件
総合地所(株)、大東通商(株)、新日本建設(株)、(株)長谷工コーポレーションの4社JVとなる同物件は、JR京葉線「千葉みなと」駅から徒歩12分に立地する、地上15階建て総戸数395戸の分譲マンション。設計・監理は長谷工コーポレーション、施工は新日本建設と長谷工コーポレーション。
建設エリアは、千葉港に隣接したいわゆる「問屋街」であり、かつては人の住むような場所ではなかったが、周囲では千葉みなと駅前の再開発をはじめ、大規模土地区画整理事業「セントラルポートちば」や、蘇我副都心計画「ハーバーシティ蘇我」などが進行。また周辺には、従来から市役所・区役所、中央郵便局、中央警察署などの行政施設が集中しており、商業施設が集中する千葉中心部にも、徒歩15~20分程度でアクセスできる。臨海エリアのアーバンリゾート化もあって、急速にそのポテンシャルを向上させつつある。
こうした有望エリアであったため、ディベロッパーもここ数年土地仕入れを強化していたようで、今年に入ってから分譲マンションの供給が盛んになっている。現在、同物件をはじめ周辺で数物件が販売されており、かつての倉庫街・問屋街のイメージは払拭されつつある。
「普通のファミリーマンション」をどう差別化するか
建物は、ほぼ全ての住戸で海の眺望を楽しめるよう、南面をVの字の頂点にした配棟計画を採用。住戸は、専有面積72~102平方メートルの3LDK・4LDK。プランは、最低スパンは6メートルを確保しているものの、どれも典型的な「田の字」プラン。販売価格をできるだけ抑えなくてはならないエリアであり、これは致し方ないところだが、問題はどうやってメインユーザーであるファミリー層に訴求していくかという点だ。
そこで同物件は、設備・仕様を生活者の視点で再検討。「クリーン」「スマート」「ヘルシー」の3カテゴリーで必要な設備・仕様を選りすぐり、コストのかかる割にニーズの低い設備(たとえば床暖房など)をそぎ落とすことで、より満足度の高い仕様へと近づけている。
まず「クリーン」では、最近採用する物件が減少傾向にあるディスポーザー、洗浄能力が高く節水型の「ぐるピカ便器」、セラミック樹脂加工がされたキッチンシンク、ガラストップコンロなどを採用。「ヘルシー」では、浄水器や浴室のサーモフロア(冬でも床が冷たくならずヒートショックを予防する)など、「スマート」では食器洗い乾燥機、静音・大型シンク、スライド収納(オートクロージャー付き。この機能はまだまだ普及していない)などを採用している。いずれも、ごく普通のファミリーマンションではコストダウンのため採用されないことが多いものばかりだ。また、セキュリティ面でも、まだまだ普及していない「血流認証システム」を採用。京葉線の高架橋からの騒音が発生する低層階住戸には二重サッシュを導入するなど、ここぞという部分への投資は怠っていない。
こうした物件の特長を最大限ユーザーに理解してもらうため、販売センターでのプレゼンテーションも凝っている。ビデオによるプレゼンテーションが終わると、「血流認証システム」を備えたオートロックを通り、「キッチン」「浴室」「トイレ」などカテゴリー別にまとめられた設備機器の展示スペースへと案内する仕組み。こうした設備機器を一まとめにしたプレゼンテーションは(販売代理の)長谷工アーベストでも初めての試みだといい、ユーザーの反響も良いとか。2戸用意されたモデルルームは、1つをオプション仕様を極力抑えたものとし、より現実的な提案を行なっている。
「新価格」物件尻目に売れ行き好調
同物件の中心価格帯は、2,500~3,000万円台。坪単価にして117万円程度だ。プレセールスはゴールデンウィーク明けからスタートしたが、当初客足は鈍かったと、販売担当者は言う。それが、夏場を過ぎてから徐々に反響が伸び始め、地元千葉市内だけでなく、市川市、船橋市、浦安市などや東京都内、川崎市などからの購入者が3割を占めるまでになった。
従来、比較的狭域集客の傾向が強かった千葉市で、こうした広域からの集客が目立ち始めたのは、いわゆるマンション「新価格」時代の到来と無関係ではない。同物件も、分譲開始当初はそれほどの割安感は無かったが、いまや周辺競合物件の価格は、坪120万円超は当たり前。150万円超えも珍しくなくなりつつある。こうした新価格物件のなかでも、特徴のある大規模物件は集客力もあり売れ行き順調だが、特徴の無い小規模物件は苦戦の声も聞こえてくる。こうした厳しい環境のなか「ハーバーレジデンス」は、商品企画の差別化だけでなく「旧価格」の恩恵もうまく活かした形で、すでに半数を販売しつつある。
千葉市はいま、オリックスリアルエステート・ニチモ「千葉セントラルタワー」(千葉市中央区、434戸)、有楽土地など6社JVの「コロンブスシティ」(千葉市幕張区、896戸)などの注目マンションをはじめとして、新規販売・継続販売、新価格・旧価格が入り乱れての大混戦となっている。もともと戸建て志向の強いエリアだけに、販売価格の高騰にはユーザーは神経質になっている。こうしたなかで、新価格物件がどれだけユーザーの支持を得られるかについては、関係者も注視しているようだ(J)。