建築家×クリエイターの「Tokyo Relax」シリーズ第4弾
ジャンルの異なるもの同士が共同で製作することで、これまでにない発想が生まれることもある。 では、住宅に関するコラボレーションにはどういったものがあるのだろうか。 (株)THINK GREEN PRODUCE(東京都渋谷区、代表取締役:関口正人氏)がプロデュースする賃貸住宅「Tokyo Relax」シリーズ第4弾の「STEPS」を取材した。





コラボレーションでつくる新しい住空間
同社が企画・プロデュースを行なう「Tokyo Relax」では、“シゲキでリラックス”をコンセプトに、建築家とクリエイターのコラボレーションによって、都市の新しい住空間、ライフスタイルのあり方を提案している。
同シリーズ第1弾「Grow(グロウ)」では建築家×ランドスケープデザイナー(アプローチの植栽)×グラフィックデザイナー(壁面のグラフィック)など。第2段「Rize(ライズ)」ではアーティスト(アート)×ペットグッズデザイナー(内見時具グッズ開発)など。第3弾「spread(スプレッド)」では、建築家×グラフィックデザイナー(ロゴデザイン等を担当)×スタイリスト(オープンルームのコーディネートを担当)などとのコラボレーションにより、個性的な物件を完成させた。
シリーズ第4弾「STEPS」の設計監理を担当したのは「山代悟+ビルディングランドスケープ」。建物やプロダクトを手がける設計事務所で、これまでに「グッドデザイン賞2005」の共同受賞など多くの実績を残している。同事務所を主宰する山代 悟氏の設計はモノトーンを貴重としたシンプルな作品が多く、今回取材した「STEPS」でもその手腕を発揮している。
“縁側”をイメージした「STEP」
「STEPS」は鉄筋コンクリート造地上8階地下1階建て。敷地面積455.86平方メートル、延床面積1,836.39平方メートル。敷地が三角形の変形地であり、日影規制などの制約もあるなかで、居室を最大限に広く取るため、エレベーターや避難階段といった共用部分を建物の西側中央に配置。住戸は共用部分を囲む形とした。
住戸は全25タイプ、総戸数は40戸。間取りは仕切りを設けないワンルームが中心となっており、床はフローリング、壁はコンクリート打ち放し。
こうした至極シンプルな空間にあって目を引くのが、まったく無駄のない造りのキッチンだ。このキッチンをデザイン・製作したのは、家具製作会社campの大原 温氏であり、今回の「コラボレーション」のパートナーだ。
同氏の作品は無駄のない簡素なフォルムを特徴としているが、一見すると地味…な印象も受ける。しかし、シンプルな部屋に設置することで素材の存在感を発揮しており、ハコとパーツがお互いの魅力を引き立たせるコラボレーションとなっている。
そして、同物件の最大の特徴といえるのが、すべての住戸に「STEP」と名づけたスキップフロアを設計した点。室内の高低差による視点の変化は、実際の面積よりも部屋を広く感じさせる。上段に配置された窓は床から天井までの大開口となっており、採光性にも優れている。さらに上段部分が部屋の3分の1ほどの面積を占めているため、使用用途の幅も広がるだろう。
「このスペースは“縁側”をイメージして設計したものです。下のフロアにいるときと視点が変わるので、普段とは違ったライフタイムシーンを楽しむことができます。また、窓を大きくとることにより景色が遮られることなく、ゆったりとした時間を過ごすことができます」(同氏)。
アクセスと住環境あわせもつ立地
同物件は東急大井町線「等々力」駅徒歩3分に位置。同駅は「自由が丘」駅や「二子玉川」駅などの沿線上であり、都心へのアクセス比較的容易である。また、目黒通り沿いに位置しているため、車での移動が中心の人にも便利だろう。
一方、等々力駅付近には都内で唯一の渓谷である「等々力渓谷」があり、住戸によっては窓から渓谷の豊かな緑を眺めることができ、同物件のメインターゲットであるシングルやDINKSの“アクティブでありつつ、リラックスした時間を持つ”というライフスタイル適した環境といえるだろう。
現在の平均募集賃料は約1万2,000円/坪。近隣の同タイプの物件と比較すると1割ほど割高だが、デザイナー物件としては割安だ。
また、SOHOとしても利用可能で、山代氏いわく「作業していて煮詰まったら、渓谷に行ってリフレッシュすることもできる」とのこと。
コラボレーションとは、ジャンルの異なるもの同士が共同でものを作り上げる作業であり、組み合わせによりその広がりは無限大だ。
「STEPS」は、現時点では建築家と家具デザイナーのコラボレーションとなっているが、入居する人の個性が加わることで、さらに魅力的な物件となることに期待したい。(中)